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2003年12月5日:パインズクラブ通信 第57号

         
  • 公開日:2022年8月8日
  • 最終更新日:2022年8月20日

暦の上では・・・

あと今年も残すところ4週間を切ってしまいました。

この時季街を歩けばクリスマス用の赤と緑の飾り付けが目を引きます。今日もそんな飾り付けを見ながら街を歩いておりますと、どこからか「シャンシャンシャンシャンシャン」という鈴の音が聞こえて来るではありませんか。

「おっ、サンタのおじさんがもうやってきたのかな?」

と思っておりますと、その鈴の音はみるみる近づいて来て私の横をすごいスピードで駆け抜けて行きました。
駆け抜けて行ったのは、サンタではなく若い女性でした。見ればジーンズのヒップポケットから鈴がぶら下がっています。その鈴が走る時の振動で音を高らかに上げていたのです。おそらくサイフかなにかにつけている鈴がポケットに収まりきらずに飛び出してしまったのでしょう。その女性はかなり急いでいるようでしたので、自分がまき散らしている鈴の音に気づいていないのかもしれません。

師走の街を寒風を切り裂き疾走する女性の鼻は若干赤くなっており、サンタというよりトナカイといった風情をかもし出しておりました。

さて、そんなわけでクリスマスムードが高まって来ております。私はこの時季のあわただしさが好きで、用もないのに街を歩いてみたり、デパートに入ってみたりします。

デパートではなんと言ってもおもちゃ売場が一番好きです。でも昔と違って今のデパートのおもちゃ売場はだいぶ縮小されてしまい、往時の賑わいが感じられないのがちょっと残念です。

昔はすごかったです。デパートのおもちゃ売場。

私は学生の頃、某デパートのおもちゃ売場でアルバイトをしていました。その頃の各おもちゃメーカーは独自の得意分野で勝負していたように思います。

エポック社は野球盤を始めとしたスポーツ物中心のアクションゲーム界に君臨し、(手で操作して遊ぶゲームをアクションゲームと呼んでいました)タカラはリカちゃん人形と、人生ゲームを代表とする盤ゲームの二本立てで勝負していました。(すごろくのような形式のものを盤ゲームと呼んでいました)バンダイはキャラクター商品が得意でしたし、ポピーは超合金シリーズと呼ばれるロボット物といった具合です。

当時のおもちゃやゲームはカサのでかいものが多く、年末商戦の時季ともなると通常より売場面積を広げ、それらの商品をどぉ~んと積み上げていたものです。ですからお客さんは大きな包みを抱えて帰るというのがごく普通の光景でした。

ところがその年、そんな「大きいことはいいことだ」のおもちゃ業界に、大きな変化が現れました。

*このメルマガの後半へ続く

〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。

*このメルマガの前半からの続きです。

それは任天堂が発売した「ゲーム&ウォッチ」でした。

クレジットカードほどの大きさのボディーに液晶画面をはめ込み、左右に操作ボタンをつけたごく薄いゲームは、いつでもどこでも遊べるというすごく画期的なものでした。これが野球盤や人生ゲームでは、いつでもどこでもというわけにはいきません。まあ、やってやれないことはないでしょうが、揺れる電車の中で野球盤をすると球がどこかへ行ってしまい、本当に消える魔球になってしまいます。そんな訳で当然ゲーム&ウォッチは瞬く間に子供のみならず大人の心もがっちりつかみました。

任天堂以外からも液晶画面を使った小型で薄型のゲームが何種類か発売されていて、私はそういった類のゲームのコーナーを任されました。

私の仕事はそれらのゲームをお客さんに説明したり、お買いになるお客さんに商品を手渡すといったもので、お金の清算は別の場所にあるレジで行いその場では行わないため割と楽な仕事でした。

それはそれはすごく順調な売れ行きでした。親子連れや子供同士のグループなどが次々に訪れゲームを買って行きます。見る見る間にその在庫は減っていき、私はこの売れ行きは商品の魅力のみならず自分の販売センスによるものであるだろうと分析し、気分を良くしていました。なにしろ人気のあるゲームはすぐに売り切れてしまうので、それを目当てに来たお客さんにいかに別のもので納得して頂くかが重要なポイントだったのです。ゲーム&ウォッチをご存知の方は分かるかもしれませんが「ファイア」という火事のゲームはよく売れるのですが、モグラのやつはあんまり売れないのです。それをそのゲームがいかに面白いかを説明してお買い上げ頂くわけです。これはひとつの「技」と言ってもいいでしょう、うん。とにかく小さなゲームの山は、日に日に低くなっていったのです。

私のそんな大活躍が始まって何日かした頃、売場主任が私のところにやって来ました。
主任は私の前まで来るとゲームの山を見ながらこう聞きました。

「どう、売れてる?」

ほ~ら、来ました。売れてるかどうかなんて一目瞭然じゃないですか。これは私を褒めにきたに違いありません。ひょっとしたら特別ボーナスだってもらえるかもしれません。

私は元気良く答えました。

「はい、すごく売れてます!」

すると売場主任はなぜか暗い顔でこう言うのです。

「あんまりレジ通ってないんだよね・・・」

「えっ!」

レジを通っていないって・・・どういう意味でしょう?

どうやら売場主任はガラスケースの中の在庫数と、レジで登録されたこの部門の売上額があまりにも違うことに気が付き、それを確認に来たようでした。つまりはかなりの数のゲームが万引きされてしまったと言うことです。

すっかり褒められるものだとばかり思っていた私はすごくショックでした。

そんな私に追い討ちをかけるように、売場主任はメガネの奥のするどく光る目で、

「お前がぼけぼけしてるからあんなにたくさん万引きされちゃったんだぞ!」

と理不尽にも私を責めるのでありました。

なるほど、そう言われて見ればガラスケースの上に積み上げてあったゲームも、売った覚えがないというのにいつの間にか極端に数が減っています。するとやはり私は相当のボケ野郎ということなのでしょうか。そうなんですか、先生!私は死ななきゃ治らないボケクソ野郎なんですか!

うう、くやしい・・・

なあ~に、やつは戻って来るさ。必ず戻って来る!なにしろやつは一度(かどうかは分からないけど)万引きに成功していい思いをしているんだから、その味が忘れられないはずだ。そして完全に「あの売場の店員(私)は相当のボケクソアホ野郎だぜ」とか思っているはずだから・・・うう、くやしい・・・私の真の恐ろしさを見せてやる!

私は万引き犯へ復讐するために策を講じました。それはゲームの空箱に「残念でした!ばぁ~か!」と書いた紙を入れ、今度はそいつを万引きさせるという手でした。
そうすればそれを万引きした犯人はすごく悔しがるはずです。なにしろあんなボケクソアホ野郎・・・いえ、人のよさそうに見えた店員にそんなことをされちゃったんですから、これは一生の不覚のはずです。悔しくて悔しくて悶死してしまうかもしれません。悶死はしなくても歯軋りくらいはするでしょう。

私はそのダミーの箱を、積み上げられたゲームの一番上に置きました。

ふふふ、これであとはやつを待つばかりだ。

しかしその後は売場の警備を強化したこともあり、万引きはほとんどなくなり、私がせっかく用意したダミーの箱もいつまでも同じ場所から動きませんでした。

やがて年が明け、私はアルバイトをやめてしまいました。
やめるときにもその箱はそのままにしておきましたので、もしかしたらその箱は売場主任の手によって開けられたかもしれません。

まあ、それならそれでもいいかな、とも思います。
私を侮った罰だと思えば・・・

しかしまあ、あんまり小さくて軽いというのも考え物ですね。いつでもどこでも万引きされちゃいますから。せめてパッケージだけでも野球盤並にしておくべきだと思います。

それでは、また来週!

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