トイレの話で恐縮なのだが、私はインドで初めてこの形の便器を見た時にはいたく感動したものである。これは原則的には便座に腰掛けて使用する洋式のトイレなのだが、ご覧のように両側にモモンガの飛膜のごとく張り出した部分があり、そこに足を置いてしゃがんで用を足すことができるのである。
さらに足置きにはご丁寧に滑り止めの凹凸がついており、また便座はその足置きを隠す形状になっているところが、実に芸が細かく感心するところなのである。
さて、普段何事もなき平穏な日々に身を置いていると、この便座のありがたみがわかりづらいと思われるが、これがインドのような国で激しい下痢に襲われ、必死に駆け込んだトイレが洋式のものであり、しかしそこには便座というものがついておらず、また便器もかなりの汚れ具合だったときなどには、このしゃがみ方式併用の便器は、まさに神が人類に与えたもうた最高の贈り物ではないかとすら思うのである。
実際私は通常の洋式トイレの細い淵に足を乗せ、不安定極まりない態勢で用を足した経験があるので、この便器の発明者にノーベル賞を与えたいと思うほどなのである。
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