インドの列車に乗るときは、同じ座席にどんな人が来るかということが、ちょっと不安であり楽しみでもあります。
列車がホームに入線して来ると、乗客やその荷物を運ぶ赤帽さんたちは我先に車内になだれ込みます。
それはまあ主に席を確保するためなのですが、指定席券を持っているからと言って安心はできません。
なぜならインド人はおそろしいくらい大量の荷物を持っていることが多く、その荷物をどんどん車内に運び込み、がんがん座席の下に押し込んで行くからです。つまりもたもたしていると自分の荷物を置く場所がなくなり、下手をすると自分の寝台に置くしかなくなってしまい、とても寝づらい一夜を過ごすことになってしまうわけです。
コルカタ(カルカッタ)から出発する列車に乗るときも、指定席だというのに私はいち早く自分の乗る車両を見つけ出し、すぐさま座席に着きました。もちろん荷物は自分の座席の下へ突っ込み、床から出ている盗難防止用の鎖と自前の南京錠を利用して固定しました。これで一安心です。
と、一息ついたところに、車内にどやどやと騒がしいインド人の一団が入って来ました。
彼らは自分の席を確認すると、おそらく大量にあるのであろう彼らの荷物を、みんなでリレー式に積み込み始めました。
私のむかいの席もその一団の人たちのようで、布製のスーツケースやカバンがどんどん運び込まれて来るではありませんか。
私はその様子を身構えながら眺め、「まさか足が伸ばせないような状態にはならないだろうなあ・・・」と少々不安になったのであります。
しかしここは二等とは言え、エアコン付きの指定席車両ですので、車内に入る人数は限られているわけで、荷物はそれほどの混乱もなくすべて座席の下に収まりました。
ここまで来ますと本格的に安心してくつろげる段階に入ります。
先ほどまで荷物運びに必死だった隣人も、こちらをちらちら見ています。きっと外国人に興味津々なのでしょう。
そこでまず、本拠地インドの方々に敬意を表してこちらから軽く挨拶をしてみるわけです。
すると彼らは子どものような無邪気さでそれに応じ、それを合図に質問攻めが始まります。それはもう完全にあちらのペースになってしまい、疲れている時などはとても辛いのですが、その代わりいろいろ親切にもしてくれるのです。やれこれを食べろだの、チャイを飲めだの、それはそれは本当に優しいのです。
この写真の人たちにも車内販売のチャイをご馳走になりました。彼らはみな幼馴染で、ラクナウの少し先の町から来たと言い、しきりに地元の自慢話をしていました。
そんな彼らにはもう二度と会うことはないのでしょうが、たまたま同じ列車に乗り合わせ会話を交わした彼らが、今でもラクナウの少し先の町にいるんだなあと思うと、なんだか嬉しくなるのであります。
ちなみに彼らの後ろ側にある青い部分は倒してベッドになります。
この車両は三段ベッドのため、二段目のベッドを倒すとその下に座ることが困難になりますが、二段ベッドの車両の場合は、上段のベッドをたたまなくても、下段に座ることが可能です。
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