子どもの頃読んだ童話に「おじいさんの箱車」というのがありました。
お話の内容は、おじいさんが引っ張る箱車に子どもたちが乗るというだけのお話なのですが、おじいさんと子どもたちの交流が温かく描かれている作品でした。
そして、それを読んだ幼き日の私は、そんな箱車に乗ってみたいと、長い間思い続けていたのです。
しかし、待てど暮らせど私の家の近くには、ついぞおじいさんの箱車は現れず、いつしか私は箱車には乗れそうもない大きさに成長してしまったのであります。
さらに時は流れ、私はインドに通うようになりました。
そしてそこで、ついに「おじいさんの箱車」を発見したのです。
箱車は、幼き日の私が夢想していたままの形で、私の目の前に現れました。
ただ、この箱車はおじいさんが引っ張っているのではなく、おっさんのこぐ自転車に引っ張られていました。
どうやらこの箱車は、サイクルリキシャの改造版で、子どもたちの学校の送り迎えをしている「スクール・サイクルリキシャ」のようでした。
箱車の窓から中を覗くと、そこには10名ほどの小さな子どもが乗っていました。
「なんてうらやましいんだ!インドの子ども!」
しかし、箱車の後部ドアが外側のカンヌキで閉じらているのを見たとき、夢にまで見た箱車と、囚人護送車のイメージがかぶってしまい、ちょっと複雑な思いで見送る私だったのであります。
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