ラジャスタン州バルメールの道端でこんな老人を見かけた。
老人は木陰にしゃがみ、その前には足形をしたものやひも状の革が置かれている。
これはもしやサンダル屋ではなかろうか。いやそれ以外に考えられないだろう。こんなインドの西の果ての街で、オーダーメイドのサンダルを作ってもらうのも面白いと思い、さっそくひとつ頼んでみることにした。
しかしいかんせん言葉が通じない。
そこで私は靴と靴下を脱ぎ、自分の足を指差したのちにその指を上に向け「ひとつ」と伝えた。
すると老人はおもむろに足形に切った皮を取り上げた。
そして私が裸足になった足を差し出す間もなく、脱いだ靴の中にそいつをぐいぐい入れ始めたではないか。どうやら老人は靴の中敷き売りだったらしい・・・確かによく見りゃ道具らしきものなんてなにも持っていないのだ。
私はなおも靴底に革を収めようとしている老人を制し、静かに首を横に振った。
すまん、私の履き違えだった。
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