見学時間があまり充分に取れない場合は、象のタクシーに乗って登城し、鏡の間周辺を見るだけで終わってしまうかもしれませんが、もう少し時間があるならアンベール城の奥深くまで入ってみましょう。
これまで見て来たところはどこもメルヘンチックな雰囲気に包まれておりましたが、奥へ進みますと過度な装飾がなくなり、無骨な山城の一面も見せてくれます。
ほら、ここなんか山間の農家の庭先みたいじゃないですか。ニワトリが駆け回り、軒下には大根や干し柿がぶらさがっていそうです。
そんな場所を見学しておりましたら、ひとりのじいさんが私に近づいて参りまして、「とても眺めのいいところを教えてあげましょう」なんて言うのです。
インドのこうした遺跡ではそこで働いている人が「にわかガイド」に変身し、小遣い銭をせびるというパターンがよくあります。そしてその案内というのはごくごく簡単なもので、「ここから街が見えます」とか、遺跡の修復跡を指差し「ここは新しい」とか、そんな「見りゃわかるよ!」くらいのことを真顔で説明するのであります。
はたしてそのじいさんも警備員の服を着た「にわかガイド」でありましたが、年齢から来るものなのか、なんだか信頼できそうな雰囲気を漂わせておりまして、珍しく私は素直にじいさんの後に続きました。
で、案内されたのがこの場所です。よく窓枠やアーチを額縁に見立てて風景を見る(または写真に撮る)というのがありますが、ここはきっちりきれいに切り取られたものとは違い、デコボコとした廃墟感あふれる縁取りがなんとも良く、すっかり気に入ってしまいました。
ありがとう、じいさん! あんたは名ガイドだよ。
じいさんも無事ガイドを終え、「お茶代」の10ルピーをズボンのポケットに押し込むと、満足そうに自分の本来の持ち場に戻って行ったのでありました。
めでたし、めでたし。
ということで、予定よりずいぶん長いこと続けてしまいました、この「魅惑のゴールデントライアングル」シリーズもこれにておしまいとなりました。
それではアンベール城にもお別れの挨拶をしたいと思います。
さよなら!アンベール城!
また来ることもアンベール!
*すべて2008年3月時点の情報です。
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