本当に泣く子が黙るかどうかは別にして、さすがルポライターの本領発揮といったところで、内容も濃く話も面白く読んでいてぐいぐい引っ張って行かれる。
この本の影響でバックパッカーになった人も少なくないだろう。
ここではインド関連の本を紹介するということで、三部構成の二冊目(文庫本では3冊目)を取り上げるのだが、もちろん初めて読む人は第一巻(本では「第一便」となっている)から読むべきである。正直なところを言えば、私が全編を通して一番引き込まれたのは、香港滞在中の博打のシーンであった。
さて、この本のインドに関するところをかいつまんで・・・と思ったが、すでに著者が不必要なものを切り捨てまくって書いたものと思われ、かいつまめない。気になる人はとにかく本書をお読みいただきたい。
でもそれだけじゃ紹介にもなんにもならないので、私なりにこの本のインドの項から学んだことをふたつご紹介させていただこう。
まず一つ目は、著者が排便後に左手で始末ができるようになったときに「またひとつ自分が自由になれたような気がした」というセリフである。
正直これを初めて読んだ20代の私は驚いた。そんなことは絶対にできない、エンガチョ!だと思った。
しかしあれからウン十年、私もその件では自由になれた。
もう一つは著者が病気になり、インド人から「インドの病気は、インドの薬でなければ治らない」と言われたことである。
これも初めて読んだときは、インドの薬なんて恐ろしくて飲めないと思った。
しかしそれからウン十年、インドで激しい頭痛に見舞われ、日本から持参した薬をいくら飲んでもちっとも効かず、ベッドの上でのたうちまわっていたとき、ふとこのセリフを思い出し、這うようにして薬局に行き手に入れた薬が本当によく効いた。
今ではインドに行くとき、日本から持っていくのは整腸薬と風邪薬くらいである。あとは必要に応じて現地調達する。水虫が悪化した時など、薬局のカウンターに足を乗せて患部を見せ薬を購入した。
ということで、私はこの本を読んでもバックパッカーにはならなかった(なれなかった)が、ちょこっとインドに行く程度でも、この本は役に立つんだぞ!ということを力を込めて言いたいのである。