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私の記憶に間違いはないのだ、たぶん:コーチン

         
  • 公開日:2010年9月10日
  • 最終更新日:2022年6月3日

私は今、フォート・コーチン行きの船に揺られています。

料金は2ルピー50パイサ(約5円)、ほんの15分ほどの乗船です。しかしまあ天気はいいし、海風はさわやかだし、船の揺れは心地よいしで、実にいい気分です。

あっ、今あそこにイルカらしきヒレが見えました。

あー、写真間に合わなかったぁ~

船は左にウィリンドン島を見ながら進みます。コーチンは古代ローマとも交易があったというほど、大昔から貿易港として栄えて来た街なのですが、現在でもその歴史をしっかりと継承しており、この人工島であるウィリンドン島にも広いコンテナヤードが造られ、荷揚げ用のガントリー・クレーンがいくつも並び、そこに大きなコンテナ船が常に出入りしているというインド有数の国際貿易港として発展を続けているのであります。

さて、そうしている間にも船は着実に進んで行き、ひとつめの桟橋に近づいて参りました。この舟は私の目指すフォート・コーチンだけでなく、マッタンチェリーにも寄る船なのですが、はたしてここはどちらなのでしょうか・・・どれどれ

あー、ここは違うな、フォート・コーチンじゃあないな。

なにしろ私は9年前はエルナクラム地区に滞在していたので、フォート・コーチンへ行くために何度もこの船に乗ったのでよく知っているのです。

桟橋に船が横付けされると、欧米人を含む多くの乗客がここで降りて行きました。
マッタンチェリーはその昔ユダヤ人が多く住んでいて、今もその名残を残すちょっと変わった雰囲気のある場所ですので、欧米人観光客はこの辺で宿を探すのでしょう。

船がここからの乗客を乗せ、ゆっくりと桟橋を離れると、車掌(船掌?)のおっさんが切符の確認で私のところにも回って来ました。
求めに応じて私が切符を手渡すと、車掌は切符を見て怪訝な顔になり「お前はいったいどこに行きたいんだ?」と聞くのです。
私は当然「フォート・コーチン」と答えたわけですが、それを聞くと車掌はものすごく驚き、「ここがフォート・コーチンだ!」と、今まさに離れつつある桟橋を指差して叫んだのであります。車掌があまりにもすごい驚き方をしたので、私はどちらかと言えばそちらの方に驚いてしまったのですが、考えてみたらこれは大変なことです。そして振り向いて見たら(写真は本当にその時思わず写したものなのですが)桟橋はまだすぐそこでしたので、私は思い切って飛び移ってしまいたいくらいの衝動に駆られたのであります。

まあ今になって冷静に考えれば、その船は次に同じ半島部にあるマッタンチェリーに寄るはずなので、そこで降りて陸路で移動すれば大したことはなく、また実際そうしたのですが、その時の私は少々錯乱してしまい、「イッタイワタシハコレカラドコヘツレテイカレテシマウノダロウ・・・」と安寿と厨子王的な不安でいっぱいになってしまったのです。ほーやれほー。

そんな風に私が必要以上にうろたえてしまったのは、それだけ自分の記憶に自信があったからなのです。
私の脳裏には、9年前に見た「船から視点のフォート・コーチンの桟橋が近づいて来る映像」がしっかりと刻まれていて、その映像と今回の桟橋が私の脳の中ではまったくの別物と鑑識されたにもかかわらず、それを「フォート・コーチン」だと言われりゃあ、そりゃああーた、混乱もするってえもんじゃあございやせんか。

とまあ、船を降りそこなったということよりも、自分の記憶が間違いだったという事実(私はまだ半信半疑ですが)を突き付けられたことによって、私はかなりのショックを受けしばし呆然としていたのですが、そんな私を慰めるように、車掌のおっさんは「次のマッタンチェリーで降りればいいんだから」と言い、追加分の切符代として2ルピー(約4円)を要求したのでありました。とほほ・・・

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インド先住民族の工芸品ドクラ