インド人の辞書に「不可能」という文字はありません。
これはナポレオンの言ったとされる「予の辞書に不可能という文字はない」をお借りした表現なのですが、あのナポレオンだって実際には「不可能」はあったでしょう。たとえば「不可能」という文字をナポレオンの辞書で探すこととかです。
ところがインド人は「不可能」なんて存在しないかのごとく、なんでも解決してしまいます。
キーワードは「ノープロブレム」です。
インド人の「ノープロブレム」はとても有名なので、インドに行ったことがなくても知っているという人は多いのではないでしょうか。
また、インドに関するいろんな書物にも、「ノープロブレム」の話はよく出てきます。
実際インドに行くと、本当によくこの言葉を耳にします。
この言葉はその意味の通り「問題ない」という使い方もされます。
また、「心配するな」「大丈夫だ」といった、励ましの言葉としても使われます。
さらには、「おれにとっては問題ない」というすごく自分勝手な使い方をされることもあります。
この最後の使われ方をされたときは、こちらはたまったものではありません。
ですからインド人と何か交渉するときに、この「ノープロブレム」が出てきたら、その言葉に惑わされず、「主語」と「目的語」などをはっきりさせておく必要があります。
たとえば仕入の交渉で、
「その荷は今年中に日本に着くように出荷して下さい」
「ノープロブレムだ」
と来ると、日本人の感覚からすると「大丈夫だ、必ず今年中に日本に着くように出荷する」という意味になります。
はたしてそうなのでしょうか?
ちょっとしつこく確認を取ってみましょう。
「その荷は今年中に日本に着くように出荷して下さい」
「ノープロブレムだ」
「誰が『ノープロブレム』なんですか?」
「え?・・・おれがだ」
「あなたがどう『ノープロブレム』なんですか?」
「え~と・・・出荷のことだ」
「出荷がどう『ノープロブレム』なんですか?」
「そのぉ~・・・少しくらい出荷が遅れても『ノープロブレム』なんだ」
「なぜ出荷が遅れても『ノープロブレム』なんですか?」
「だからぁ~、今年中に日本に到着しなくてもさあ、おれは『ノープロブレム』なの。なんだよそんな小さいことで目くじら立てちゃってさ。とにかく『ノープロブレム』なの、『ノープロブレム』!」
まあ、ここまでひどいインド人はいないとは思いますが、実際に出荷時期を問い合わせるたびに「もうすぐだ、もうすぐ、『ノープロブレム』だ」と言い続けて1年以上が過ぎた業者もいるのです。
今回は自分に都合のいい使い方の『ノープロブレム』のお話を、ごく簡単にさせて頂きましたが、次回は本当に『ノープロブレム』で問題を解決していってしまうお話を致します。