これはウォークマンである。
初めはカセットテープから始まり、CD、MDと来て今やデジタル音源をメモリーに入れる方式となったウォークマン(だけじゃなくて他社製品もそうだが)。お蔭で大きさや重量はぐぅ~んとコンパクトになり、電池寿命は延び、膨大な曲数をいとも簡単に持ち運べるようになった。
とまあ現在もどんどん進化している音楽プレーヤーだが、私の愛用するこのタイプはメモリー1GBで液晶画面も小さく、おまけにイヤホンのコードが根元のあたりでむき出しになってしまい、セロファンテープで補修して使ってるという有様なのである。
しかしどんな道具でもそうかもしれないが、ことこれに関しては旅に持って行くかどうかは賛否が分かれるところかもしれない。
なぜ普段聴いている自分の好みの音楽を、わざわざインドに持ち込む必要があるのだ? そんなことよりお前は、インドの大地の息吹を感じ、人々の熱気とエネルギーを全身に受け、そしてなにより自分の心の声に耳を傾けるべきではないのか?
いいの。別にそんなの各自の好き好きで。
ということで、私は列車やバスの移動の時や就寝時に日本から持ち込んだ音楽を聴いている。
たとえば車窓に広がる砂漠を見ながら中森明菜の「SAND BEIGE -砂漠へ-」を聴く。
バザールの喧噪や細い路地を思い出しながら久保田早紀の「異邦人」を聴く。
ラクダの顔を思い浮かべながら八代目三笑亭可楽の「駱駝」を聴く。
いやあ、実にベタな選曲並びに選落語である。
でも実際、寝台列車などで移動する時にこうした音楽プレーヤーがあると、周りの騒音を遮断してくれるのでとても助かるのだ。
なにしろインド人は宵っ張りでなのである。午後9時頃になって夕飯の弁当を食べ始めたりしてなかなか眠らなかったりする。
それから夜行列車は夜中にも駅に停まり、そこで人の乗り降りが行われる。しかも悪いことに自分の席の近くにグループ客などが乗り込んで来たりすると、あたりかまわぬ話し声や大量の荷物を運びこむ音が非常にやかましいのである。
そんな時音楽プレーヤーのイヤホンを耳の穴にきっちり押し込み、自分の好きな音楽(または落語)を聴いていれば、ほとんどストレスを感じることなく、あまつさえ傍若無人に振る舞うインド人たちに微笑みかけることさえできるというものなのだ。
そんな私の愛用のウォークマンも、ついに先日バッテリーがご臨終と相成った。
そこでちょっとだが貯まっていたポイントを使い、通販で新しいウォークマンを買った。
今度のはメモリーが4GB、バッテリーも30時間くらい持つとのことで、これなら長距離移動もなんのそのである。
さらにイヤホンや再生モードも進化していて、外の騒音をより遮断してくれるようになったらしい。
さあ、いつでも何人でもかかって来やがれ!インド人!
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