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ジャグダルプルよいざさらば:ジャグダルプルからライプールへ

         
  • 公開日:2011年4月11日
  • 最終更新日:2022年6月6日

パテルに(というかホテルに)最後の支払いを済ませ、いよいよ7泊したホテル・レインボーともお別れです。パテルは領収書の他にノートを取り出し、「できればここにコメントを下さい」と言って来ました。
見ればそこには今までパテルが案内してきた観光客によるものと思われる、「とても楽しかったです!」とか「すごく親切でいいガイドさんです」みたいな文章が並んでおり、つまりそのノートはガイドが自分の評価確認並びに次なる観光客への売り込みの際に利用する大切なノートというわけです。

で、パテルは今そんな大切なノートを、観光初日に怒り出してしまったこの私に委ねコメントを求めて来ているわけですが、まさかいくら私だって「知識が少々乏しく、時としてやる気に欠ける」なんてことは書けないわけです。
なので、「パテルは良いガイドです。おそらく近い将来最高のガイドになると思います」と、将来に期待を寄せるコメントをしたためておきました。

パテルはちょっと心配そうな表情で私からノートを受け取ると、なんとも複雑そうな顔をしてしばらくノートに目を落としておりました。

大丈夫だよ!パテル。

もともと気のいい人間なのだから、がんばればきっと今にガイドブックに「ジャグダルプルでのガイドなら、ホテル・レインボーにいるパテル氏が最良のガイドです」と書かれるようになるよ。

私からもこの場をお借りして、

パテルは本気を出せば親身になってくれるいい男ですので、ぜひジャグダルプルに行くことがあったら指名してやって下さい。
でもって心配なら、初日に一発「仕事中は携帯電話すんなよ」とクギを刺しておけば、きっとあなたの見たいものを一生懸命見せてくれることでしょう!

と宣伝しておきます。

だから、がんばれ!パテル!

さて、これからわれわれはチャッティースガル州の州都ライプール目指して約300kmの陸路を行かなければなりません。

私は初めライプールまではバスで行くつもりでおり、バススタンドにも下見に行っていたのですが、昨日パテルが「この車で行くと楽ですよ」と、いつも観光に使っていた小型乗用車インディカを指差して悪魔の誘いを投げかけて来たのです。料金は基本1kmにつき6ルピー(約12円)で、300kmの距離の往復分ということで通常価格3600ルピー(約7200円)のところを、今回は特別価格の3200ルピーでご提供!と、テレビショッピングのようなことを言うのです。
私もだいぶ体に疲れが溜まっていましたので、ゆっくり座って行ける上にバスよりかなり短時間で到着できる専用車で行きたいとは思うのですが、いかんせんもう持ち金があまりないのです。
で、そんな時は私よりかなり裕福なMくんの出番なわけです。なにしろMくんは腰を悪くしているので、もうバスはいやだなあと思っていることを私はよく知っているのです。きっとMくんはこの話に乗って来るのは間違いないのです。
なのでチラッとMくんの方に「どうする?」という視線を投げかけると、Mくんは「それならおれが2000ルピー出すよ」なんて実にありがたいことを言ってくれたわけですよ。

そうと決まればあとは少しでも値切って、自分の出す分をできるだけ少なくするだけです。
そこでちょっと思案顔で、「う~ん・・・3000ルピーだったらいいんだけどなあ~」と言うと、パテルは少し考えてから、「わかりました。3000ルピーでいいです。でも、エアコンのない車になりますがいいですか?」なんてことを言うのです。
そこで私が「いやあ、エアコンは欲しいよなあ」と言うと、「じゃあやっぱり3200ルピーです」ってことで決まってしまったのですが、後からよく考えたら、たぶんこの車以外にホテルが所有する車があるとは思えず、まんまとパテルの策略にやられたと気づいたのでありました。

なかなかやるじゃないかよ、パテル!

とまあずいぶん前置きが長くなりましたが、すっかり慣れ親しんだドライバー氏の運転でわれわれはライプール目指して出発したのであります。

しばらくは見慣れた美しい風景が続きます。なにしろこの先にあるコンダガオンまではすでに二往復しているので、どこに何があるのかもだいたいわかっているのです。約1時間でコンダガオンを抜けました。あと残り220km、ここからは初めて見る風景になります。

やがて車は山道に入りました。

実は私は事前にグーグルマップの空撮映像でジャグダルプルからライプールまでのルートをすべて辿ってみていて、だいたいどのような道を通るのかを把握しており、その一部で山道を通ることも知っていたのですが、実際の山道は想像よりかなり険しく、きついカーブの続く道の脇は断崖に近いものだったりして結構肝を冷やしました。この山は巡礼地になっているのか、時折道の端を歩いてくる白装束の人たちとすれ違います。
見ればみな口元に白い布を垂らしていますので、ジャイナ教徒の人たちなのでしょう。極端に殺生を嫌うジャイナ教徒は、虫が口の中に飛び込んで死んでしまわないようにマスクのような布をつけていることがあるのです。

そんな山道も無事に通り抜け、再び平らな道に出たのでようやくホッと一息、と思ったら、今度はドライバー氏の様子がなんだかおかしいことに気付きました。車が道の脇に寄って行ったり、スピードが落ちたりと運転が定まらないのです。

ヤヤヤ、コレハマズイゾ・・・と思い、ちょっと喉が渇いたからどこかで車を止めてよ、とこちらからお願いし、次に見えた茶店で休憩することにしました。あくまでもドライバー氏のプライドは傷つけてはいけないのです。パテルのはギタギタに傷つけてしまいましたけど。結局この茶店でドライバー氏はトイレに行って長い事帰って来ませんでしたので、彼にとっては「ひと粒で二度おいしい」休憩になったようです。
まあこの日ドライバー氏はひとりで600kmも運転しなければならないので、トイレにも行けるときに行っておかなければならないのです。

私も冷たいコーラでのどを潤し一息入れておりますと、牛がやって来てしきりに私のバッグを舐めるのです。
思えばインドに来てずっとこのバッグを肌身離さず持ち歩いておりますので、おそらく私の汗がカバンにたっぷり染み着いて、なかなかいい塩加減になっているのでしょう。

休憩した場所はまだ道のりの3分の1くらいのところでしたが、休憩後のドライバー氏の運転にはまったく乱れは見られず、その後は実に快調に飛ばして、約5時間でライプールに到着することができました。しかしこの後意外とホテル探しに手間取ってしまい、あっちこっちと車を回してもらったりと、最後の最後までドライバー氏には面倒をかけてしまったのでありました。

いつも嫌な顔一つせず、常に機転を利かせてわれわれを案内してくれたドライバー氏に、あらためてお礼申し上げる次第であります。

本当にありがとうございました。

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真鍮製のアンティーク弁当箱