インドの郵便のお話第二弾です。
前回のお話の最後に、「インドの郵便局のそばには門前業種のひとたちがいて・・・」と書きましたが、今回はそんな門前業種の中でも、ひときわ職人的かつ必要不可欠なるおっさん(時にはおばさん)のお話です。
ということで、まずはこの写真をご覧下さい。さて、このおっさん、いったいなにをやっているのでしょうか。
実はこれ、荷物の梱包作業なのです。
インドの郵便局からハガキや手紙以外のものを出すときには、必ず布で梱包しなければならないことになっています。なので郵便局には、この「縫い師」と呼ばれる職業の人が必要になって来るわけですね。
もちろん自分でやっても良いのですが、やはり「餅は餅屋」というコトワザがあるように、プロに頼むのが手っ取り早いです。特に私たちのような旅行者にはとても便利です。
そんな縫い師の道具と言えば、針に糸、梱包用布地(サラシみたいな布です)と封蝋、そしてマジックペンといったところでしょうか。あとは自分の腕で仕事をこなして行きます。
写真では四角い普通の段ボール箱を梱包しておりますが、他にも筒状のものや変則的な立方体のものなど、まあうまいこと縫い合わせて行きます。
たまに途中で布地が足らなくなることもありますが、そんなことはまったく気にせず、足りない部分は別の布をつなぎ合わせたりして、ツギハギ状態でもとにかく荷物は最終的にすべて布に包まれることになります。
布梱包が済んだ荷物は、その継ぎ目に封蝋を施されます。
要所要所に赤茶色の蝋を溶かして布に垂らし、封印を押して行きます。
そして最後は宛名書きです。
これはマジックペンなどで布に直接書き込んで行くのですが、中にはものすごく字の上手な人なんてのもおりまして、それはもう芸術的といえるレベルなのです。
しかし総じて彼らの持っているマジックペンはインクの出が悪く、というか、インクがほどんど無い状態ですので、目の粗い布地に書き込まれる字が薄いことが多く、ちゃんと届くか心配になることもあります。
チェンナイにいたある縫い師などは、いよいよインクが出なくなると、ペン先のフェルトにインクを染みこませて再生させて使っていました。そしてそんな再生作業をじっと見守る私に向かって、「イッツァ、インディアン、テクノロジー!」などと自慢し、屈託のない笑顔を見せるのでした。
毎日布を縫い続けていても、その行いはまったく天衣無縫なインド人なのであります。
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