インド滞在ではいつものことではあるのだが、今回はまた特にしつこい下痢に悩まされていた。
そんなある日、滞在していたホテル前の小さな店でこんなものを見つけた。
商品名は「Jeeru」、たぶん「ジール」と読むのだろう。
もしかしたら日本語の「汁」から来たのかもしれない。
で、こいつが何かというと、ジーラという植物の種子(果実)を使った清涼飲料水なのである。ラベルにも「ジーラ・マサラ」と書いてある。なので日本語の「汁」語源説はちょっと遠のいた。
ジーラという名前に聞き覚えがなくても、クミンといえばおわかりになる方もあるだろう。
クミンはセリ科の植物で、カレーの材料にも使われる。ちょっと苦みがあり薬臭いが、胃の働きを助ける薬効もあると言われている。
ということで、もしかしたらこれを飲めばこのしつこい下痢も治まるかも、と思ったわけである。溺れる者は藁をもつかむ、下痢する者はわらわでありんす、なのだ。
でもちゃんとした薬ではないので味も重要である、なにしろ薬として飲むには量が多すぎる。それに本当はのどが渇いているのでコーラを買おうと思っていたのだ。
そこで店のあんちゃんに味を確認すると、「すごくうまい!」と太鼓判を押された。
値段も10ルピー(約16円)とお手頃だったので買うことにして、さっそく部屋に戻って飲んだ。
う~ん・・・不味い。
なんだか醤油を水で薄く割って胃散を振りかけたような味がする。
彼は本当にこれがうまいと思っているのだろうか・・・
しかし味覚は人さまざま、食事はその国、地域の文化であるので、よそ者がどうこういうものではない。インド人は毎日カレーを食べているので、こういう味には慣れているのだろう。
そもそもカレーは薬膳料理であり、各種スパイスは味を調えるだけでなく体の調子も整えてくれるといわれている。
ところがインドでも近年の経済発展により、その伝統的食生活が崩れて来ており、糖尿病患者なども急増しているそうである。
なのでこのジーラ・マサラ飲料は、そうした現代人が「う~ん、本当はコーラが飲みたいんだけど、体のことを考えるとジーラ・マサラにしておこうかな」という心理的作用を狙った商品なのだろう。そして私は、まんまとその作戦に乗っかったというわけである。
なかなかやるな、インド商人!
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