インドを代表する車アンバサダーについてです。
まず「アンバサダー」とは?
アンバサダーはインドのヒンドゥスタン・モーターズ社が生産している車です。
しかしその元を辿れば、イギリスのモーリス・オックスフォードIIIが原型となったライセンス生産車となります。
しかし1948年から開始されたその生産は、本家が生産をやめた後も綿々と造り続けられ現在に至るという、まさしくインドを代表する車なのです。
アンバサダーは永くインドの政府要人にも愛用され、また広くタクシーにも採用されて来たため(対抗馬がなかったということもありますが)、インド国民の憧れであり、また身近な実用車でもあるのです。
さすがに昨今ではスタイリッシュで高性能な外国車に押され気味で、街を行き交う車の総数から見た比率では激減状態になって来ておりますが、その優美な曲線とどっしりした重量感は、最新デザインの車が華奢に見えてしまうほどの貫禄があります。
特に政府要人御用達の白いアンバサダーが、デリーの大統領官邸周辺の広い道路を走り去るその姿は、実に威風堂々として気品さえ感じてしまい、私などはついその場に立ち尽くし姿が見えなくなるまで見送ってしまいます。
ここからはアンバサダーのいろいろです。
こちらはツーリスト・タクシーと呼ばれる観光用のタクシーです。
白いボディーにブルーの線というデザインで、一般のタクシーとの違いは一目瞭然ですが、それよりこのツーリスト・タクシーの大きな特徴は、州を越えての営業運転ができることです。
ナンバープレートの下部に赤く記された「ALL INDIA PERMIT」がその証で、これ一台でインドの大地をどこまでも旅することができます。
ちなみに私はこの車で1200kmほど移動しましたが、ずいぶん古い車だったらしく、背中が痛くなった上に途中でエンストするなどなかなか大変でした。
こちらはパトカーです。要人の搬送、警護などにも同じ(ような?)デザインの車が使われるようで、こうしたタイプのアンバサダーをVIPカーと呼ぶ人もいます。
これはデリー某所に停まっていたものを写しました。
なんせ相手が相手なものでそうなかなか簡単には写真を撮れないのですが、この時は誰も車に乗っておらず、また近くにいる様子もなかったのでチャンスとばかりに素早く写したというわけです。
正直ちょっとビビりました。
脈々と受け継がれてきたアンバサダーのその優美なフォルムですが、中にはこのようなちょっと変わったものもあります。
これは2004年に発売された「Avigo」というタイプです。
乗り心地はまずまずでしたが、エアコンの効きがイマイチでした。
もっとも5月の酷暑季で、外気温は40度を軽く超えていましたので、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれませんが・・・
黒いアンバサダー(の後姿)と並ぶのは、販売店のおっさんです。オーナーなのか従業員なのかはちょっとわかりませんでしたが、買いもしない私に親切に車を見せてくれました。(もしかしたら買いそうに思ったのかもしれませんが)
この写真は2004年頃のものだったと思いますが、とにかくこうしてアンバサダーの新車が売られているというところをお見せしたかったわけです。
最後にアンバサダーのライバルです。
これはよくアンバサダーと間違えられるのですが、パドミニという車です。ムンバイ辺りで一番幅を利かせている車です。
アンバサダーがイギリス出身ならこちらはイタリア出身です。
フィアット社の「Fiat 1100」を原型に、インドのプレミア・オートモービルス社が永年造り続けて来ました。
こちらもクラッシックなフォルムな上に、黒と黄色のタクシーカラーに塗られているので「アンバサダーだ」と思ってしまうのも無理はありません。
しかし両車を見比べてみれば、堂々としたアンバサダーに対して、パドミニはちょっと小ぶりで精悍なイメージを受けます。
オートリキシャの走っていないムンバイ市内では、どうしてもこのパドミニ・タクシーを利用することになるのですが、どうも私はこの車の面構えが怖くて、できる限り乗らないようにしてしまうのです。
でもアンバサダーがデリーやコルカタの街にしっくり溶け込んでいるように、ムンバイの古い町並みにはこのパドミニがよく似合うのです。
最後にこちら、ケララ州のフォート・コーチンで見かけた自家用のパドミニです。
いかにも大切に乗っているという感じの車でしたが、運転席から降りて来たのが品の良さそうな、それでいて一本筋が通った頑固そうな老人で、着ているものも白のドーティー(腰布)という粋な出で立ちでしたから、私はますます興味を持ってしまいました。
そこでこちらも筋を通して老人にお断りしてから写真を撮ろうと思ったのですが、老人は店の中に入ったきりなかなか出て来ませんでしたので、そっと写させて頂きました。どうもすみません。
以上が私なりのアンバサダーとパドミニの紹介となりますが、またそのうち情報を付け加えるかもしれません。