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2006年2月3日:インド出張レポート・その9

         
  • 公開日:2006年2月3日
  • 最終更新日:2022年8月5日

エア・インディアのチェックインカウンター前には、私と同じ飛行機に乗るとみられる日本人の旅行者が集まりだしておりました。
しかし、当然のことながら308便のチェックインカウンターは開いておらず、みな一様に戸惑いの表情でたたずんでいます。

私も同様にしばらくそのあたりに立っていたのですが、そんなことをしていても進展はなさそうです。飛ばなくなった飛行機が乗客の熱意によって飛ぶようになるとは思えません。だいいち乗る予定だった機体自体がインドに帰って来ていないことだって充分考えられます。そして、エア・インディアは代替の機体を用意するような会社ではないのです。そんなことが可能なら、とっくの昔に読書灯など直しているはずなのです。

とにかく市内に戻ってホテルに泊まるなら、少しでも早い方がいいです。
なにしろ明日は早朝に空港に到着しなければならないのですから。
ただ問題は、お金をどうするかなのです。
空港からのタクシー代とホテル代、そして食事とビールを2、3本・・・

と、そこでようやく、日本円ならいくらか持っているということを思い出しました。

さっそく貴重品入れの底の方から財布を引っ張り出し、中身を確認しました。

やった! 3万円も入ってる!

これは奇跡でした。いつもはそんなに現金を持っていないのです。
なにしろ日本にさえ帰ってしまえば、J**カードが使えるわけですから。

人間お金の問題が解決すると、心に余裕が出てくるものです。
そのときになって私は、飛行機の大幅な遅延によって生じた費用は、旅行保険でまかなえるということを思い出しました。

おおっ、今まで一度も使ったことがなかった保険を、今回は2回も使えるなんて、私は実にラッキーだなあ。

一度の旅行中に、二度も保険を使うようなトラブルに遭遇してしまった身の不運に気付くこともなく、私はさっそく旅行保険の約款を取り出して、保障内容を確認してみました。すると6時間以上の出発遅延の場合は保険金が出るようです。さらにその保険金は、タクシー代やホテル代、そして食事代まで含めて2万円まで出るようなのです。

おおっ!すげえ!

しかし一泊2万円のホテルって、いったいどんなホテルなんだろう?

もしかしたらネクタイとか締めてないと入れないのかなあ。
あー、緊張しちゃうなあ。

そんなことを考えながら、その場で旅行エージェントの男に電話をしました。

「あー、私だが。 いやなに、飛行機の出発が遅れてね。今夜のホテルを手配して欲しいのだが・・・ えっ?夕べと同じところでいいか? あー、そんな安いところは私には不釣合いだな。もっと豪華ないいホテルを手配してくれたまえ。ああ、もちろん金ならあるさ。
えっ?予算? タクシー代まで含めて日本円で2万円くらいね、うん。
ちゃんとお湯の出るホテルにしてくれたまえよ、わっはっは!」

結局予約を入れたホテルは、いつも泊まるカロルバーグという地区の一角にある「経済的ホテル」でした。なので予算は余りまくりです。
どうやら空港から市内に入る直前に林立する豪華ホテルには、その予算では泊まれないそうなのです。なんてこった!

それでも今夜の宿は確保できました。
しかし私にはまだやらねばならないことがあるのです。
それは、エア・インディアから遅延証明書をもらうことです。
それがないと保険がおりないかもしれませんので、もらっておくに越したことはないでしょう。

日本で電車が遅れたときなどには、駅の改札あたりで駅員が遅延証明書を配っていて、その周りに黒山の人だかりができたりしているのですが、まだここではそれらしき人垣が見当たりません。
そこで私は空港内にあるエア・インディアのオフィスに行くことにしました。
きっとオフィスの係員が遅延証明書を手渡してくれるはずです。
もしかしたら証明書といっしょにお詫びの品として、エア・インディア特製ロゴ入りパラシュートなどももらえるかもしれません。

ところがオフィスの係員に遅延証明書の発行を求めると、そういうことはスーパーバイザーに話してくれと言うではありませんか。なんだか遅延証明書もパラシュートも、簡単にもらえるものではないようです。
仕方がないので、教えられた通りにそのスーパーバイザーのいる場所へ進んで行きますと、そこでは恰幅のいいおっさんが数人の男たちに囲まれ、なにやら詰め寄られているではありませんか。
どうやら取り囲んでいる男たちは私と同じ便に乗るはずだった乗客のようで、詰め寄られてるおっさんこそが、目指すスーパーバイザーのようです。
みんな今回の件に関して「どーしてくれんだよお!」と言ってるようです。

そんな男たちに混じって、私も「遅延証明書を出しておくれよお!」と詰め寄ったのですが、スーパーバイザーは「わかったから、とにかく7時にチェックインカウンターに来い」と言うだけで、その場でさらさらっと証明書を発行したり、すみませんでしたと言いながらパラシュートの包みを手渡したりはしてくれませんでした。

仕方がない、明日の朝7時に出直すか・・・

でも出発予定が7時15分で、チェックインカウンターに7時というのは、あまりにも遅すぎないか?

そんな疑問から再度スーパーバイザーに時間を確認すると、なんと、チェックインカウンターはこのあとすぐに開くというではありませんか。搭乗手続きと機内預けの荷物の引渡しは今日のうちにやるとのことなのです。
つまり「7時」というのは、今度は午後7時のことだったのであります。

あっぶねーなー、ついこのまま帰ろうとしちゃったじゃないかあ。

特に他にやることもないので、すぐにチェックインカウンターに並ぶことにしました。おかげさまで一番目です。

やがて7時になり係員がカウンターの所定の位置につき、さらに30分ほど経過した頃、ようやくチェックインが始まりました。
出発遅延の上に手続きの開始まで遅れ、私は少しイライラしていましたが、カウンターの若い係員に対してはつとめて明るく、しかも笑顔までおまけしながら航空券を差し出しました。飛行機の遅延は決してこの若い係員のせいではないのです。八つ当たりなんてしたらいけません。ここはあくまでも紳士的かつ冷静に対処したいものです。

係員は私の航空券を見ながらコンピューターの画面に向かい、てこてこキイを打っていきます。
やがてその指の動きが止まり、画面をじぃーと注視し、そしてまたいくつかキイを押し、再度何かを確認すると意を決したように私に向き直り、こう言いました。

「お客様のお名前は名簿上に見当たりません」

えっええええええええええ~!

そんなわけないだろ! もう一回見ろよ、もっかい!

てこてこてこ・・・

「ございません・・・」

ふざけんなよ、なろー!

エア・インディアはいまだにリコンファーム(ちゃんと予約の便に乗るという再確認ですね)が必要なのですが、私は毎回そのためだけにエア・インディアのオフィスに出向き、長時間待った挙句にオフィスを出たところで靴にうんこを乗せられてしまい、靴磨きの少年から「ヘイ!マスター!靴が汚れてますぜ!きれいにしてあげましょう!」とか言って付け回されたりしているのです。
今回だって、うんここそ乗せられませんでしたが、たっぷり1時間は待たされ、ようやくリコンファームを済ませてきているのです。
リコンファームは電話でもできるのですが、私はいまいち信用していないのです、私の英語力を。

とにかく、私は今回もコンノートプレイスのエア・インディアオフィスで、そこの係員に目の前でリコンファームの手続きをしてもらい、その証拠に航空券にスタンプも押してもらっているのです。ほら、これだよ、これ。このムラサキ色のスタンプだよ。よく見れ!ほれほれほれほれ!

若い係員は私の剣幕に押され、スーパーバイザーに聞いて来ますから、ちょっと待って下さいと言い残し、奥へ消えて行きました。

まったくう、またスーパーバイザーかよ。

どうでもいいけど、早くしてくんないかな。
後ろから殺気が漂ってんだよね。
なんかさあ、事情を知らない私の後ろの人たちがさあ、私が何か難癖つけてるみたいに思ってるようなんだよね。

しばらくして戻ってきた係員は、少しホッとした顔でこう言いました。

「ノープロブレムです」

そしてまたキイをてこてこ打ち、めでたく私の搭乗券は発券され、私の荷物はベルトコンベアーで運ばれて行きました。

しかしまだ遅延証明書をもらっていませんでしたのでそれを要求しますと、若い係員は再びスーパーバイザー目指して走り去ってしまい、私はまたまた背中に非難めいた冷たい視線を背負ったまま、そこで待ち続けなければならないのでした。

結局遅延証明書は翌朝発行されることになり、ようやくのことでホテルに向かうことができる私でありました。

まさかこんなに時間がかかるとは思ってもいなかったので、エージェントの男には車の手配を頼まず、タクシーで市内に行くことにしておりました。
タクシー乗り場は一階の到着ロビーを出たところなのですが、どこを探してもこの出発ロビーから階下へ続く階段やエスカレーターなどが見当たりません。
そこでその辺にいた空港関係者らしき人に、タクシー乗り場への行き方を尋ねますと、一度このロビーから外に出なくてはいけないとのことでした。

ところがです、

出入り口にいる小銃を持った警備員が、私を外に出してくれないのです。

なんでも警備上の理由で、出発ロビーには一度入ったら二度と出ることができないそうなのです。つまり、中に爆発物を持ち込み、それを放置して出て行ってしまう者を規制するためらしいのです。出るには、それなりの手続きが必要だと言うのです。

おいおいおいおい、マジっすかあ?

ここは秘密結社みたいな空港なんですかあ?

簡単には足抜けできないってえわけなんですかあ?

そんな感じで、私のインド滞在はまだまだ終われないのであった。

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