早朝の街角、二人の男が大鍋をかき混ぜています。
「さあさあ、おかゆの炊き出しだよ!ありがたい仏様からのご慈悲だよ!」
それにしてはやけに赤い色をしています・・・なんてね、実はこれはおかゆの炊き出しじゃあないのです。これは布を染めているところなのです。
場所はニューデリーの大きな商店街。まだ早朝で辺りはひっそりとしているとはいえ、昼間はすごい人でごった返す場所です。
そんなところで布を染めているなんてねえ・・・
と言うのも、インド人はなかなかおしゃれでありまして、サリーの下に着るブラウスやペチコート、パンジャビに合わせるドゥパッタ(スカーフ)などのカラーコーディネートにはうるさく、従ってそうした布を扱うお店にはすごい数の色布がそろっているのです。「赤」だけとっても濃淡や色味の違うものがずらぁ~と棚に並んでいて、その中からお好みの色を選んで服を作ってもらうわけですよ。
なのでこうして自前で布を必要な色に染めてしまう必要もあるわけです。「あなた色に染めていいのよ、うっふん」ってなわけです。
で、彼らの作業を見ていますと、それはもうまさしく職人技なのです。
鍋の傍らにはたくさんの色粉が置いてあるのですが、そいつを目分量で鍋の中にひょいひょいっと放り込み、布を煮込んでは取り出して色見本と比べ、足りない分の色粉をひょいひょいっと鍋に追加してはまた煮るといった方法で、やがて見本通りの色に染め上げてしまうのであります。
そんな作業を行っている彼らの手もまた色粉で染まってしまっているのですが、悪いことに「手を染めている」のとは違い、そいつは立派な職人の証なのであります。
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