この本は小説ではありますが、通常ではなかなか知ることのできないインド社会の「闇」の部分を垣間見ることができるという一面があります。
お話は、テレビのクイズ番組で史上最高額の賞金を手にした少年ラム・ムハンマド・トーマスが、「不正回答」の理由で逮捕されるところから始まります。そしてこの逮捕劇は、賞金支払を渋るスポンサーの仕業だったのです。
警察でのひどい拷問から救い出してくれたのは、若い女性弁護士でした。
弁護士は少年に、いかにして13問の難題に回答できたかを尋ねます。
なにしろその少年は、まともに学校にも通ったことのない孤児だったからです。
ここからは、そのクイズ番組での出題に副って話が進んで行きます。
少年がひとつひとつの問題に対し、いかなる経験上の知識から回答したかを説明して行くわけです。
少年の辿って来た道のりは平坦でなく悲惨とも言えるものなのですが、お話は決して暗くならず、むしろ少年が機転と叡智で生き延びる様は爽快感さえ覚えます。
そして、そんな「謎解き」を通して最終的に見えて来るものは、決してクイズ番組での正答の理由などではなく、インドがその懐深く秘めた社会の現実なのではないかと感じました。
*この本は小説ですので、書かれていることはあくまでも「フィクション」です。
*また闇社会の存在は、決してインド固有のものではないことを認識した上で、
この感想を書かせて頂きました。
なにはともあれ、インドに興味のある方には面白く読める本なのではないかと思います。
尚、本の著者紹介によれば、映画化も決定しているとのことです。
【参考】
邦題:「ぼくと1ルピーの神様」
英題:”Q and A”
著者:Vikas Swarup
訳者:子安亜弥
出版社:ランダムハウス講談社(1900円)
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