インドの地図をご覧になればおわかりのように、インドはほぼ逆三角形になっており、「最南端」という場所もとてもわかりやすく特定できるようになっているわけです。
これがもし普通の三角形の地形で、しかも底辺が緯線に沿ってきっちり真っ直ぐだったとしたら、いくつもの村やまちが「最南端」を名乗り、土産物屋が競って「元祖最南端まんじゅう」や「本家最南端もなか」や「家元最南端だんご」などを売り出し、ご当地出身歌手が「最南端音頭」やら「最南端ブギ」やら「あゝ最南端の夜はふけて」などという曲を出したりして大変なことになっていたでしょう。
しかしまあ幸いなことに、インド亜大陸はうまいこと逆三角形で先端がひとつでしたので、そんな争いも起こらずに済んでいるのです。
インド亜大陸最南端の街はカニャークマリといいます。
またはコモリン岬(ケープ・コモリン)とも言いますが、日本ではこちらの方が通りがいいかもしれません。
カニャークマリは、アラビア海、インド洋、ベンガル湾という三つの海の交わるところで、しかも太陽が海から上がりまた海に沈むという場所でもあり、ヒンドゥー教では聖地として崇められ、たくさんの信者がここを巡礼で訪れるのです。
この写真は、そんな最南端に向かって延びるメインストリートです。道は海に向かってなだらかな下り坂になっていて、海に近づくにつれその沿道には土産物屋が増えて行きます。
売っているものはやはり海が近いということから貝殻細工が多く、中にはタカラ貝の表面に文字を彫刻してくれるお店などもあります。そんな観光地のお店をひやかしながら歩くというのも、また楽しいものです。
陽は高く、空は青く、海は輝き、そして爽やかな風が吹き抜ける通りをだらだらと下って行く時、遠く過ぎ去ってしまった少年時代の夏休みを思い出し、ほのかなしあわせを感じた私なのでありました。
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