私が小学生の頃、某学習雑誌のある号に「バスにはいくつ鏡が付いているでしょうか?」というような見出しの記事が載っていました。
それによりますと、普段なにげなく利用している路線バスには、よく見ればたくさんの鏡がついているというのです。
たとえばサイドミラー、ルームミラー(バックミラー)、前方に突き出た凸面鏡、中央昇降口の上にある四角い鏡、後方に突き出た凸面鏡などなど・・・
おおっ!そうだったのか!
私はその記事を読んで初めて知った「バスに於ける鏡の利用数の多さ」に驚き、まだ子どもだったとは言え、そんなことも知らずにバスに乗り降りしたことを恥じ、また、たまに大人の後にくっついて無賃乗車をしたことなどを悔いたものです。
そんな風に自動車界に於ける鏡の存在というものは、安全確認を担当するという重要な地位を占め、近年その一部ポストをカメラ&モニターに奪われたとはいえ、まだまだなくてはならない存在なのであります。
ところがですよ、インドのオートリキシャ界ではその辺の事情というのがちと違いまして、なんだか鏡があまり重要なポストにはないようなのです。
インドのオートリキシャにも、基本的には3個の後方確認用ミラーというものがあります。
ひとつはフロントガラス中央上部にあるルームミラー、そして左右後方安全確認を担当するサイドミラーがそれぞれひとつずつということです。
ところがオートリキシャの後部窓は、たいていの場合(例外もありますが)幌屋根に縫い付けられた「透明」ビニール製であり、さらにそのほとんどのものは経年変化で黄色く変色しており、または無数のキズにより光が拡散してクモリガラス状になっており、もしくは塵芥などの付着によって幌と区別がつかいないくらい保護色化しておるという状態で、まあ早い話がルームミラーなんぞ、後方確認作業のなんの役にも立たないわけなのです。
こうなると残すところは両サイドのミラーとなるわけですが、これがなんと、車内に取り付けられているのです。
サイドミラーと言えばあーた、ふつー車体の外側に出っぱらかすわけでしょー、ねっ。 でなけりゃ、車体の側面並びに後方は視認できんということじゃないですかあ。
なのにオートリキシャのミラーは、車体の内側に付いとるわけですよ。まあ理由として考えられるのは、車幅ギリギリで雑踏に突っ込む時に、外にはみ出したミラーはジャマ!ということなのでしょう。
きっと昔は外側に付いてたんですよ、インドでも。 それが永年の進化の過程で、内側になっていったんでしょうね。
そんなわけで今では、オートリキシャのサイドミラーは車内にあり、もっぱらそれはドライバー氏が客の顔を見るときに使うのであります。
ほら、写真のドライバー氏も、「この辺でいいのか?」と聞きながら、こちらを見ているじゃあないですか。
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