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熱風を切り裂いてバスは走り出した:ライプールからアラハバードへ

         
  • 公開日:2011年4月18日
  • 最終更新日:2022年6月3日

いよいよアラハバードまでの600km、19時間のバスの旅が始まりました。太陽はすでに西に大きく傾いてはいるものの、ライプールの気温は軽く40度を超えているようで、開け放たれた窓から吹き込む風は熱風そのものです。
しかしもうすっかり覚悟を決めてしまった私には、この熱風はむしろ闘争心を掻き立ててくれる心地良い風に感じました。

覚悟と言うのはこれから迎える夜のことです。
先日乗ったボルボのバスはセミスリーパーという名前が付いており、確かにシートも良ければサスペンションも良く、さらには走る道もとてもよく整備されたものでしたので、寝るには申し分のない環境でした。

ところが私はほとんど眠れなかったのです。

まあ腹具合が不安定だった事もありましたが、それがなくてもどうしても座った状態で寝るということができなかったのです。
実はこれは2001年にインドを旅した時に、ゴア(パナジ)からバンガロールまで乗ったバスでもそうだったのです。
つまり私はリクライニングシートではほとんど寝ることができず、それがために今回の旅でも夜行バスの利用をできるだけ避けて来たというわけなのです。

ということで、今回ははなから寝ようなんてことは考えておりません。
今夜はウォークマンに入れてきた大好きな70年代昭和歌謡を、年代順にたっぷりとお聴き頂き、このインドの旅最後の難所をご一緒に楽しんで参りたいと思う次第なのであります。パチパチパチパチ!

バスでは眠れないというそんな軟弱な私ですが、その代り昼間の移動で眠りこけたりもしません。
今回の旅でも明るい時間に移動しているときには、この目でしっかり通り過ぎる風景を眺めて来ました。
もちろん今回も日のあるうちは歌謡ショーはご遠慮頂き、しっかり風景を眺めるのです。夕日を浴びたバスは自らの影を沿道に長く伸ばして北上します。
幸い私の席は右側でしたので、西日をまともに受けずに済み、景色も良く見えます。

二時間ほど走ったところで最初の休憩となりました。私は腹を決めたからかそれとも節制のお蔭か体調がすこぶる良く、ここで思い切ってコーラ(600ml)を飲むことにしました。
なんたって熱風を全身に浴びているため非常に喉が渇き、用意していたミネラルウォーター(1000ml)など早くも空になってしまっており、しかも汗はかいた先から瞬時に渇いてしまうのでトイレにも行きたくならないという状態なのです。

なのでいっちょ、コーラで水分と糖分を補給しておくのであります。

やがて日は完全に西の地平線に沈みました。
しかし窓から入って来る風は相変わらずの熱風です。さて、だんだん暗くなって来て外の風景もよく見えなくなって参りましたので、そろそろ始めると致しましょうか。

それでは、「輝け!70年代昭和歌謡オールナイトでヒットパレード!」の開幕です!

私は頭の中でこしらえた高橋敬三の声で高らかに開幕を宣言すると、おもむろにウォークマンのスイッチを入れ、トップバッターの歌声に耳を澄ませました。

あら?

なんでよりによって最初が「黒猫のタンゴ」なの?

もっと実力派の歌で華々しくスタートしたかったのにい!

私は「今のはあくまでも前座ね、ぜんざ」と自分に言い聞かせ、すばやくその曲を飛ばし・・・

ちっ、

ついでに二曲目の「ドリフのズンドコ節」も飛ばし、

三曲目にしてようやく出て来た「圭子の夢は夜ひらく」を聴きながら、いよいよこれからひらいていく長い長い夜を迎え撃つべく、こぶしをぎゅっと握りしめたのでありました。

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インドの南京錠