暦の上では・・・
行楽の秋です。
気候もだいぶ過ごしやすくなりましたし、お休みの日も多いですし、この時季はどこかへ行きたくなります。
学校でもこの時季修学旅行や遠足などあり、あちらこちらで団体さんを見かけるようになりますね。
しかし相変わらず日本人はよくお土産を配ります。
小学生ですら修学旅行から帰ると近所の下級生などになにかしら配ります。たいていしおりとかキーホルダーとかそんなものですが、小さいときはそれが結構うれしかったりします。
それから自分で自分のお土産を買たりします。
私は昔、行った先々でペナントを買い求め、自分の部屋に貼っていました。ご存知ですか?ペナントって。細い三角形の布に「京都」とか「奈良」とか書いてあるやつです。
最初はそいつをおとなしく壁に貼っていたのですが、枚数が増えてきますと貼るスペースがなくなってしまいます。なにしろ日本家屋は壁が少ないですから。
そこで私はペナントを天井に貼ることにしました。
ペナントはすべて二等辺三角形なので、その頂点Aを中心にすえ、順番に貼って行けば、やがて天井にでっかい円が出現するはずです。それって、すごくかっこいいじゃありませんか。
天井にモノを貼る作業はなかなか疲れる作業です。普段まずとらない姿勢をとりますので、腕がすぐに疲れてしまいます。それでも美しい完成予想図を頭に描きながら、ひとりもくもくと作業を続けて行きました。
そんな苦労をしてペナントを貼っていったのですが、出来上がったものはなんだか想像したものとは違いました。そこにはとても「円」とはいえないものが出現していました。
実はペナントにはいろいろな規格(というほどのものでもないですが)があって、長さが全部まちまちなのです。そのためせっかく苦労して貼っても、周りがでこぼこの変な円になってしまいます。しかも天井には「電灯」という避けては通れない障害物があり、さらにそいつは天井のほぼ中央からぶら下がっているものですから、ペナントの頂点Aは電灯のソケットを取り囲むような具合で配置せざるを得ないのです。
そんなわけで出来上がったものは、中心点を無数に持ち、至るところで直径が激しく変化するというもので、どうひいき目に見ても円ではないわけです。
それでも少年だった私はその真下に布団を敷き(4畳半なので他に敷く場所もないのですが)、寝転がりそいつを見上げてはかつて行った土地に思いを馳せていたのであります。
「あー・・・京都のペナント・・・でかすぎ!」
*このメルマガの後半へ続く
〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。
*このメルマガの前半からの続きです。
私の小学校の修学旅行の行き先は栃木県の日光でした。
学生時代そんな話を友だちにしておりましたら、その中の宇都宮出身のやつが
「えっ!おまえ修学旅行でわざわざ日光なんか行ったの?」
と驚いていました。
彼に言わせれば日光なんて遠足で行くところだそうです。
私はひどく感心しました。なにしろ自分にとってはすごく遠かった日光という土地を、そいつはごく普通に語るわけですから。
それではそんな彼は修学旅行でどこに行ったのでしょうか?
私がそんなことを質問してみますと、
「箱根」
という答えが返って来ました。
なぁ~んだ、お互い様じゃないですか。私も箱根なら遠足で行きましたから。
さて、修学旅行というものはあくまでも勉強の一環です。遊びではないのでなにかしら覚えてこなければいけません。
私は日光に行きましたので、東照宮や華厳の滝、中禅寺湖や戦場ヶ原などを見学し、それぞれの場所の歴史や文化、自然や不自然などをつぶさに観察し、たくさ
んのことを学んで来たわけであります。でも、その旅行の中で一番勉強になったのは「カニコロッケ」でした。
それは旅館の朝食の時でした。
配膳の済んだ長テーブルにつき、お皿の上のものを見回しますと、なにやら得体の知れない物体が・・・
そいつはコロモがついており揚げ物のようなのですが、形がタワラ型をしており今まで私が見たこともないものでした。
すると私の前に座っていた物知りのしょうちゃんが、
「これはカニコロッケだよ」
と教えてくれました。
ふーん、コロッケなのか・・・変わった形だな・・・
と思いながらも箸でコロモを割ると、中からコロッケとは思えないクリームが出て来るじゃありませんか。
私は驚いてもう一度しょうちゃんの顔を見ますと、大丈夫、これはこーゆーコロッケなんだからと言いながら自分で食べて見せました。
私も恐る恐るそいつを口に入れてみましたら・・・
うっ、うまい! カニコロッケうまい!
それはもうとろけるおいしさと言いましょうか、とにかくすごくウマイのです。こんなウマイものを家族の中で自分だけが食べてしまってもいいものなのかと申し訳なく思ったくらいです。
でもなぜそれが「カニコロッケ」というのか分かりませんでした。別に中にカニは入っていないのです。でもそんなことはどうでもいいことでした。とにかくこのタワラ型のコロッケは「カニコロッケ」というのだということが分かり、味はこの世のものとは思えないくらいウマイ!ということが分かっただけで充分です。修学旅行に来た甲斐があったというものです。
その朝食後、私は排便中にトイレの戸を開けられてしまうという最悪の事態に見舞われるのですが、そんなことを差し引いても大変有意義な修学旅行だったわけであります。
ただそのまたずっと後になって、しょうちゃんが言っていたのはどうやら「カニクリームコロッケ」のことで、さらにタワラ型をしているものすべてにカニが入っているわけではなく、従ってタワラ型のコロッケを「カニコロッケ」とは呼ばないということが判明致しました。
でもいいんです。私にとってはいまだにタワラ型のコロッケはカニコロッケであり、カニコロッケを見るとあの日のしょうちゃんの誇らしげな笑顔と、突然トイレの戸が開けられてしまった時の驚きを伴って、小学校生活最大のイベント、修学旅行のことが鮮明に脳裏に蘇るのですから。
旅に出るというのは、いろいろ刺激があっていいものです。
違う文化に触れ、違う言葉を聞き、違う食べ物を食べる・・・
みなさんもぜひ旅に出てみて下さい。
きっと新しい出会いがあるはずです。
私にとっての、カニコロッケみたいに・・・
あー、コロッケ食いたくなっちゃったなぁ~
それでは、また来週!