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ガンディーゆかりの時計は私をしあわせにしてくれるのであった:2013年グジャラートの旅:エピソード編・第4回

         
  • 公開日:2014年1月14日
  • 最終更新日:2022年6月15日

私はガンディーが好きである。もちろんガンディーとは非暴力でイギリスの支配に立ち向かったあのガンディーである。

どれくらい好きかというと、インドの偉人で一番好きである。そして世界の偉人の中でもおそらく一番であろう。
じゃあガンディーが世界中で一番好きかといえばそうでもなく、家族や親戚、友人、知人など入れるとその順位は下がり、70年代女性アイドルを含めるとさらにぐっと下がる。

しかし序列はどうあれ好きということに変わりはなく、アーマダバードに行くと必ずガンディーの活動拠点であったアシュラムに行っているのである。もっともアーマダバードに行ったのは過去2回だけだが、一応ここまでパーフェクト訪問なのだ。

ということで今回もサーヴァルマティー・アシュラム、通称ガンディー・アシュラムに行った。アシュラムを訪れるのは朝がいい。
施設内は朝の清掃がされ、石敷きの通路などには水が撒かれ実にすがすがしい。
もうそれだけで今までの罪がきれいさっぱり洗い流される気がする。と言ってもここは別に過去の過ちを懺悔して神に許しを請うというような場所ではなく、ガンディーの足跡を紹介する展示コーナーを見て、実際のアシュラムのたたずまいを眺め、そこにガンディーの面影を探してみたりする、といったようなことをするのが正しい見学方法なのである。

そんなアシュラム内には売店があり、そこではガンディー関連の書物やお土産などが売られている。これはもうガンディー好きなら要チェックであろう。私がここを初めて訪れた2001年当時から比べると、売店の品ぞろえもだいぶよくなって来た。
バラ売りの絵ハガキの種類も増えたし、キーホルダーやボールペンなどもある。
そんな人々の購買意欲をかき立てるガンディーグッズの存在は、質素を旨として生きたガンディーの意思にはあまりそぐわないかもしれないが、ガンディーを慕う人々がそうしたグッズを買って帰り、そのお姿を常に身近に置くことで、ガンディーの教えを忘れず、そして自らの心の支えとすることは決して悪いことではないだろう。それになによりアシュラムにもお金が入るわけで、それが運営資金になれば一石二鳥ではないか。なので私もアシュラム運営の一助になればと絵ハガキを4枚選んでレジに持って行った。
するとレジのおっさんは「5枚買えば30ルピーになるからもう一枚どう?」と言う。私は素直におっさんの勧めに従い、再び絵ハガキコーナーに戻って一枚を加えた。
確かに総額は30ルピーだったが、そもそも一枚6ルピーなので別に得したわけでもなんでもない。ただ単にお釣りの小銭がなかっただけなのだろう。ガンディー・アシュラムの売店とはいえ、おっさんなかなか商売上手である。

さて、絵ハガキも買ったので外に出ようと出口に向かって歩いて行くと、ふとその横のショーウインドウに陳列してある小さな商品が目についた。

それは懐中時計であった。
懐中時計といえばガンディーの数少ない愛用品にも含まれるものである。しかも懐中時計は丸眼鏡、杖と並びガンディーを象徴する三種の神器的重要アイテムなのである。犬神家の斧、琴、菊のようなものなのだ。

私はいつもこのアシュラムの売店に来るたび、なにかひとつ記念になるものを買いたいと思っていたのだが、毎回アーマダバードは旅の初めの頃に行ってしまうため、その後の長い旅を考えると、持って歩く手間と途中で壊れてしまうリスクから、どうしても何も買えずにいたのである。
でも懐中時計なら小さいくてたいして重くもなく、しかも頑丈そうなので壊れる心配もあまりないと思うので、買ってしまってもいいかもしれない。
だけど質素を旨としたガンディーのお膝元で、そんな贅沢をしてしまっていいものだろうか。そんな風にちょっと逡巡した私だったが、とりあえず値段だけでも聞いてみようとレジのおっさんに確認すると、「600ルピーです」という答えが返って来た。なんとまあ、日本円で1000円ほどなのである。

まあこの値段ならガンディーもお許し下さるだろう。それに考えてみたら、私は時計を買うのが20年ぶりなのであった。これで許してもらえないとしたら、ガンディーはよほどの鬼である。

私が時計を買うと言うと、レジのおっさんは先ほどの絵ハガキの時とは比べ物にならないくらいの笑顔を浮かべ、鍵の掛かったロッカーから時計の入った小箱を出して来てくれた。

私は売店を出るとすぐにその小箱を開けてみた。
懐中時計は電池式のもので、時計のフタの部分が回転円盤式の50年間カレンダーになっていた。刻印を見ると2052年まで対応しているらしい。私には充分な年月である。

インド、ガンディー記念懐中時計そんな懐中時計はガンディー愛用のものとは似ても似つかない無骨なデザインであった。
しかもなまじ凝った文字盤は非常に見づらく、時計の外周を覆うジッパー付の人工皮革は時計を開くのに邪魔になり、やはり人工皮革で作られた吊り下げ用ループはどうにも強度が信用できないという、ハッキリ言ってちょっと実用向きではない代物だった。

しかし長年にわたってのガンディー愛好者(なんか変質者みたいだが)である私にとって、そんな実用的でない600ルピーの懐中時計であっても、ガンディーゆかりのアシュラムで買ったというだけでこの上ない記念品となり、末永くお幸せに手元に置かれることになるのである。

そして帰国した今、あらためてその時計を手に取って見ると、心の底からしみじみとしあわせな気持ちが湧き上がって来て、なんだか2052年まで生きていられそうな気にもなって来るのである。

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インド先住民族の工芸品ドクラ