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2010年8月20日:パインズクラブ通信 第389号

         
  • 公開日:2022年8月18日
  • 最終更新日:2022年8月21日

その後いかがお過ごしでしょうか。

お盆休みは終わりましたが、暑さの方はまだまだ終わらないようです。

私は常日頃から「夏が好き」と明言しており、実際本当に好きなのですが、さすがに今年の夏はキツイですねえ・・・ここに来て少々バテ気味です。

考えてみましたら、今年私はインドに行った関係ですでに3月から夏モードに入っていたわけで、そりゃあ夏バテもするってえもんです。

で、ここのところ朝のウォーキングもサボり気味だったのですが、今朝は久々に早起きをして歩きに行きました。
ところが夏バテと不摂生のためか昨日あたりから下痢をしておりまして、出掛けに少しお腹が痛かったのです。でも「そんなの歩き出せば大丈夫」などとまったく根拠のない楽観論で自分をごまかし出発致しました。

ところで私はいつもウォーキングの時に音楽を聴いています。
曲は全部で約1時間になるように編集してありまして、つまりそれに従って歩けば1時間の運動ができるという具合になっているわけなのです。

ちなみに内容はと申しますと、まず家を出てスイッチを入れますとラヴェルの「ボレロ」が始まります。ボレロは初めごくごく小さな音で始まり、単調なリズムを繰り返しながら次第に演奏楽器が増えて行き、同時に音も大きくなって行きますので、寝起きに近い状態から体と脳を本格始動させるのに実にいいのです。

ボレロの演奏は約15分ほど続くのですが、ちょうどそれが終わるころに公園に到着します。

公園内の遊歩道の周回軌道に入ったところでかかるのが「ロッキーのテーマ」です。
ここで一気に「やる気モード」に入れてしまおうという魂胆なのですが、気を付けなければならないのはイヤホンからの音漏れです。
なにしろ公園には私と同じようなウォーキング組やそれより難易度の高いジョギング組などがたくさんいますので、そんな人たちにロッキーのテーマを聞かれてしまうと、「あはは、あいつすっかりその気になってるぞ」などと悟られ、いえ、邪推されるのがいやなのです。

とまあそんな風に周囲の状況と音量に気を配りながら、私設自分応援団の音楽を聞きながら歩き続けるのですが、やがて曲はかつて真田広之が出演するウイスキーのCMソングにもなった、斉藤和義の「歩いて帰ろう」になります。
この曲がかかると私は周回軌道から外れ、その題名の通りに家に歩いて帰るのです。もうそのまんまです。なんのひねりもありません。
でもむしろその単純にして明快なところが実に男らしく思え、それが早朝から厳しいトレーニングに励む自分の姿とも重なって、なんだかまたひとつ昨日の自分より成長したなと実感したりなんかするのです。

注:実感はあくまでも個人的な思いによるもので、根拠などないかなりいい加減なものです。

しかし曲はそれで終わりではありません。

そもそも「ボレロ」の15分で来た道のりを、3分半の「歩いて帰ろう」で帰れるわけがないのです。

ということで次にかかるのは「Tie a yellow ribbon round the old oaktree」という曲です。
これはあの高倉健主演の「幸せの黄色いハンカチ」の元になった歌(歌詞の内容がです)なのですが、これはまあただ単に私が好きだという理由で入れてあります。なにしろ私しか聞かない特別編集歌謡集なのでそれでいいのです。
ただ困るのが、この曲を聴くとついあの映画のラストシーンを思い出してしまい、朝から泣いてしまうことです。しかも歩きながらなので危ないのです。危ないおやじなのです。

でもこの曲が終わってもまだ家には着きません。それだけボレロは偉大だということです。

そこで登場するのが、これまたそこそこ長い曲「We Are The World」です。
これは7分ちょっとありますので「歩いて帰ろう」「Tie a yellow ribbon round the old oak tree」(ともに約3分半)との合わせ技でボレロと互角に戦えるのです。
まあ3曲の合わせ技を使わなくてもボレロに対抗できる曲はあります。
たとえばさだまさしの「親父の一番長い日」などです。
この曲は21分13秒ありますので、充分ボレロと戦え、しかも6分ほど余りますので、家に着いた後もその辺をウロウロしなければならないほどです。
でもこの曲はちょっと歩きながら聞くのには不向きです。
なにしろ出だしからして「おばあちゃんは夕餉の片づけをおえたとき~」なので、朝の風景にしっくり来ないのです。まあその前に曲調が歩くのに向かないので採用されることはまずないのですが。

さて、ここで話は今朝のウォーキングに戻るのですが、とにかくお腹に少々の不安を抱えたまま、いつものようにボレロの音楽に合わせて、ズンダダダダンダン、ズンダダダダンダン、ぴゃ~、ぴゃらりらぴゃっぴゃっぴぴゃ~と歩いていた私なのですが、曲の盛り上がりとともにお腹の方もぴゃ~、ぴゃらりらぴゃっぴゃっぴぴゃ~となって参りまして、それは家から離れれば離れるほどひどくなるのです。
だったら途中で引き返せばいいとお思いでしょうが、現実はそんなに甘くなく、道の反対側の歩道を私とほぼ同じペースで歩く犬の散歩のおやじがいたのです。あちらもこちらのことを認識しているはずですので、途中で引き返すなんてことはできないわけですよ。
だってジャージをはいて首にタオルを巻いて、音楽を聴きながらそこそこのペースで歩いている男が、突然回れ右をしてしかもさっきより早い足取りで元来た道を戻って行くなんていうのは尋常なことではないわけです。
もしかしたら私の進路前方に何事かただならぬ事態が勃発して、緊急かつ迅速な回避行動、つまりは逃げ出したのではないかと思われ、犬の散歩のおやじも私と一緒に進路を変えて逃げだすかもしれないのです。
そうなると道の両側の歩道を二人のおやじが走って行く、という光景になり、これは相当異様なものになると思うのです。

そんなわけで私はひたすら歩き続けました。
イヤホンからは相変わらず単調なボレロが流れて来ているのですが、今回に限ってはその正確に刻まれるリズムが、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発化させているようにしか聞こえず、私は必死でなにか別のことを考えようと努力したのですが、考えるのは無事に便座に座った時の安堵感ばかりで、ますます気持ちはそちら方面に集中して行くのでありました。

ことここに至って、さすがに私も「うう、これは少々まずい事態になってしまったかもしれない」と思い始めました。
なにしろすでに私は公園のすぐ近くにまで歩いて来てしまっていたのです。
まあ公園に行けばトイレはあるのですが、私はポケットティッシュを持っていませんでした。もしかしたら犬の散歩のおやじなら、犬の糞を処理するためにそうした紙類を持っているかもしれず、それをなんとか今度だけは人のために使わせてもらえないかと、脂汗を流しながらお願いすればなんとかなるかもしれませんが、残念ながら犬とそのおやじとは先ほどの交差点で別れてしまってもうここにはいません。

そこで私は今更ながらコース変更をして家に向かうことにしました。

まず公園に着く直前の道を右折しました。
しかし曲がってからいよいよ「家に帰るんだ」という実感が湧いて来たのか、お腹はますます痛くなって来ました。
もうボレロは最後の盛り上がりに入ろうかというところでしたが、そんなのをそのまま聴いていたら、最後のちゃちゃちゃちゃぁ~ちゃ、ちゃちゃちゃちゃぁ~ちゃ、ちゃちゃちゃちゃぁ~ちゃ、ちゃらりろろお~お、じゃじゃっかじゃん!でこちらもフィニッシュを迎えてしまいそうでしたので、すかさず曲飛ばしのボタンを押しました。

二曲目の「ロッキーのテーマ」がかかりました。
でもこの曲はロッキーが朝のトレーニング前に生タマゴを飲むシーンを思い出してしまい、いかにもお腹がごろごろしそうでいけません。

再び曲飛ばしです。

三曲目は・・・あ~「Lavin’ La Vida Loca」だ!
あの郷ひろみが「アッチイチイ~」と歌ったやつの原曲です。
こんなの聴いたら肛門が熱くなりそうです!

飛ばせ飛ばせ!

と何回か連続して曲飛ばしボタンを押すと、「エル・クンバンチェロ」がかかりました。
これは高校野球の応援でおなじみの曲なのですが、実に勢いのある曲で、押せ押せムードの時などこの曲がかかると、チームの勢いは益々良くなり、相手は恐怖のどん底に落とされるほど威力のある曲なのです。

私は走り出しました。エル・クンバンチェロを聴きながら走りました。
いつもなら100mも走れないのに、今日は200mも300mも走りました。
走る苦しさからお腹の痛みが消え、一度は走るのをやめましたが、再びあの痛みが襲って来てまた走りました。
曲が終わると一曲戻しボタンでまたエル・クンバンチェロをかけ、そして私もまた走りました。
頭の中で何度も「信頼と実績、信頼と実績」と唱えながら走りました。
過去に私は何度もこのような修羅場を経験し、その都度最悪の事態だけは免れてきたのです。
そうした長年培ってきた「信頼と実績」を信じ、今回も頑張るのです。

いよいよ最後の交差点が見えて来ました。

ああ、あれを渡り切ることができれば私は助かる!

しかしあそこは交差する道路が優先道路なので、赤でつかまるとしばらく待たされてしまいます。それにこちら側の青信号の時間は短いのです。

頼む!いいタイミングで青になってくれ!

ところが無情にもまだ交差点まで100mはあろうかという地点で信号が青になってしまいました。

いかん!間に合わんかもしれん!

一瞬脳裏に最悪の事態が浮かび、でももう家にも近いし、そうなったらそれはそれでしかたないかもな・・・幸い朝で人通りも少ないし・・・などという弱気になりかけた私でしたが、いや最後まであきらめてはいかんと思い直し、最後の力を振り絞って走りました。

私は「エル・クンバンチェロ」と「信頼と実績」に背中を押されるようにして走り、歩行者用信号が点滅を始めたその瞬間、横断歩道の最初の白い横棒に右足を乗せることができたのです。

やったぞ!
これで私はまた自分史の中の「信頼と実績」をひとつ積み上げたのだ!


ということで、私は「エル・クンバンチェロ」のお陰で今回も事なきを得たのでありますが、しかしまあ普段はろくに走れない人間がここまで走れてしまうなんて、人間に秘められた能力というのは実にすごいものなんだなあと感じた出来事だったのでありました。

すごいぞ!エル・クンバンチェロ!

そして切羽詰まった時のくそ力!

ありがとう!本当にありがとう!

 

*このメルマガの後半へ続く

〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。

*このメルマガの前半からの続きです。

 

といったところで今回のメルマガはこれでおしまいです。

当店は来週いっぱいお休みを頂いてしまいますので、次のメルマガは2週間後になるかと思います。

それでは次回まで少々お時間がございますが、

ごきげんよう!

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