これはもう題名からして本の内容がわかってしまう。
そう、インドの鉄道旅に特化した紀行本である。
著者は数々の鉄道紀行本を世に出されている宮脇俊三氏であるが、そんな日本を代表する鉄道作家が、アジアで最初に鉄道が敷かれた鉄道大国インドに乗り込み、そしてもちろん鉄道にも乗り込みまくる。
もっとも時代は1988年と少々(だいぶ?)古く、スマホで切符が買えてしまう現在とはまさしく隔世(なにしろホントに世紀が違う)の感があるが、経済鎖国もまだ解けぬ古き良き、そして超不便なインド事情にも触れられそれがまた楽しい。
著者は当時すでに62歳(渡印中に誕生日を迎えられている)、周囲から暑い時季は避けるよう進言され渡印を気候の良い11月~12月にし、全工程にガイドが随行するという旅ではあったが、約二週間の日程でニューデリー-カルカッタ(コルカタ)、カルカッタ-ヴァラナスィ、アグラ-ニューデリー、ニューデリー-ボンベイ(ムンバイ)、ボンベイ-バンガロール(ベンガルール)、ジョラペティ-カニャクマリ、トリヴァンドラム-コーチンと列車に乗りまくる。氏の記述によると「車中四泊、乗車距離5700km」だそうである。ああ、こうして書き写しているだけで気持ちが悪くなりそうだ・・・
しかも宮脇氏はこの旅でやり残した「二つのこと」をやり遂げるため、半年後に再びインドを訪れるのである。まったくなんというもの好きであろうか。
もしかしたら乗り物酔いの激しい方は読んでいるだけで酔ってしまうかもしれないが、本書は氏の鉄道ウンチクだけでなく、ガイドとのユーモラスなやり取りなども満載で読み応え充分な鉄道紀行本となっている。
なので特に鉄道好きというわけではない人にもおすすめな一冊である。
さあ、表紙をめくればそこからもうインドの鉄道旅が始まる!