ここではドクラの新しい取り組みをご紹介致します。
伝統工芸が盛んなバスタルでは、伝統技術の伝承と雇用機会の創出を目的とした団体が活動しています。
私もそんな中から、ドクラのワークショップを見学して参りましたので、ご紹介させて頂きます。
作業の内容と致しましては、ここでも他の工房と同じ手順、同じ技法で行われていますので割愛致しますが、このようにたくさんの人たちが同じ作業場で指導を受けながら、互いに切磋琢磨し、それぞれの創作活動に励んでおります。
ここでは特に「現代の生活シーンで使えるもの」ということに着目して、創作活動をしているということでした。
たとえばこのおじさんが作っているのはボウルです。
でももちろん単にボウルを作るのではなく、伝統的なドクラの意匠を施したデザインで作ります。
ちなみにこのボウルは粘土で作った原形(中子)ではなく、お椀状のものを利用してボウルの形にしています。(お椀は乾燥後外すのでしょう)
またボウルの本体以外のパーツは、すべて蜜蝋だけで形を作っています。
これはボウルの胴体にゾウの顔を付けているところですが、焼きゴテで蜜蝋を溶かして接着しています。
最後に脚を付けて(蜜蝋でのデザイニングは)完成ですが、何度も全体のバランスを確認しては、脚の長さや付け方を調整していました。
なお、ゾウの鼻の先端と額を結ぶ線は、鋳込みの時に溶融金属が通る「湯道」です。
これは完成後に切り落とされ、表面もきれいに磨かれます。
それでは他にどんな作品があるのか見て行きましょう。(残念ながら完成作品ではなく、乾燥中の型でですが)
まずこれは馬の形のドアハンドルです。
それからこれは壁に取り付けるように作られた馬の頭です。
これは鋳抜いた後に馬の口元に大きなリングを付けて、タオル掛けにするそうです。
ぜひ完成品が見たいものです。
これはロウソク立てです。
そもそもロウソクに使われていた蜜蝋でロウソク立てを作るなんて、なかなか面白いですね。
こちらはペン立てとのことでしたが、大きさと深さから見てカード入れにもいいかと思います。
まっ、完成品を見たわけではないのであまり無責任なことは言えませんけど。
そしてこちらは、なんと携帯電話ホルダーだそうです。
いやあ、5000年の歴史があると言われるドクラの技法が、こんな形になるとは時代も変わったものです。
とまあ簡単にご紹介して参りましたが、かつての移動生活ができない現代においては、ただ伝統的なやり方を守るだけでは、その大切な技術もそして彼ら自身も生き残って行けないと、ドクラも新しい道を模索しているのであります。