ここでは「町工場的」なドクラ制作の現場をご紹介致します。
その工房は車一台がようやく通れるほどの狭い道沿いにありました。
ガイド氏の案内で中に入ると、ただ屋根があるだけの作業場で4人ほどの人が黙々と作業をしていました。
このときここで作られていたのは、このようなカメの置物でした。
実はここでは、同じデザインのもの(このときはカメですが)を大量に作っているのです。
作業方法は大量生産に適した「分業制」です。
たとえばこの男性は、
そんな風に分業で作られたパーツを合わせて、ひとつの作品に仕上げて行きます。
しかしこれもやはり「ドクラ」ですから、蜜蝋で形作られたものはこうして粘土で覆われ、最終的にはひとつひとつ鋳込まれて行くのです。
このように同じものを分業で大量に作ってはいても、その制作にはやはり時間と手間がかかり、そしてもちろん経験と技術も要求されるのです。
そもそもドクラとは、村から村へ渡り歩いては、金属加工のできない村人に代わって作品を作って来た人たちなのです。
ところが独立後の政府の定住化政策によりそれができなくなってしまい、今ではこうして置物などを作って生活をしているのです。
確かにこうした作り方では、作り手の個性はあまり作品に表れて来ないかもしれません。
しかしすべての工程は手作業で行われており、根本的な「ドクラの技術」はしっかり継承されているのです。
そんな町工場的な工房でしたが、作業場にはこんなに大きな馬(たぶん)の型が乾燥のために立てられていて、鋳込みの時を待っていました。
またかたわらに目をやれば、いろいろな形をした型たちが、その胎内に命を吹き込まれる日を静かに待っております。
そんな風に独自の作品(もちろん依頼を受けての制作でしょうが)を手掛けるかたわら、その技術を存分に利用して、せっせと量産にも励んでいる現場をご紹介させて頂きました。