ここではドクラ制作の前半部分(型を作るまで)をご紹介致します。
注:各工程の画像はそれぞれ違う作品のものです。形の変化は無視してご覧下さい。
まず粘土で原形を作ります。
後ほどこの原形は蜜蝋で覆われることになりますが、全体的にごく薄く覆われるだけですので、この時点でしっかり形を作っておかなければなりません。
原形の粘土が乾いたら、その表面をチョロタと呼ばれる草でこすります。
そうすることにより草の汁が粘土の表面に染み、蜜蝋の付きが良くなるのです。
ドクラの技法の特徴のひとつに、蜜蝋を糸状にして使用するというものがあります。
このように糸状の蜜蝋を隙間なく巻き付けたり、板状に並べたりしながら原形を覆って行きます。
また糸状の蜜蝋は細かい装飾に使ったり、ネット状に配して透かしのようにしたりします。
この工房では板状の蜜蝋も使われていました。
横にある渦巻状のものは糸状の蜜蝋で作ったもので、装飾パーツとして使います。
原形を蜜蝋ですっかり覆ったら、今度はそれを粘土で覆って行きます。
この粘土は型の内側、すなわち流入金属と接し作品の表面粗さに影響を与える部分となりますので、比較的キメの細かいものを使います。
ただしガス抜き(後述)の関係から、全体に薄く付けて行かなければなりません。
粘土が乾いたら、さらに土で覆って行きます。
この工程は乾かしてまた土で覆うということを3回ほど繰り返し、鋳込みに耐えられる丈夫なものにして行きます。
ちなみに外側を覆う土は、この地方ではよく見かける蟻塚から拝借した(破壊して盗った?)ものです。
なぜ蟻塚の土を使うのかは聞きそびれてしまいましたが、おそらく土の粒と質が均一だからではないでしょうか。(あくまで想像ですが)
蟻塚の土はそのまま使うのではなく、籾殻を混ぜ込みます。
土に混ぜられた籾殻は熱した時に焼えてなくなり、その跡が無数の小さな孔となってガス抜き効果が上がり、蜜蝋も焼失しやすくなるというわけです。
これが籾殻を混ぜ込んだ土です。
籾殻を混ぜ過ぎると型の強度が落ちるため、これもまた職人の長年の感が必要とされる作業です。
最後に湯道(溶融金属を通すための道)と注入口を付けて型の完成となります。
事前に得ていた知識では、今回訪れた地域のドクラはそれぞれの型ひとつひとつに坩堝(るつぼ)を作り付ける(あらかじめ金属片を封入した部屋を作っておく)ということでしたが、見学した工房では鋳込み作業をまとめて行うため、金属は別の坩堝で溶かして注入するという方法が採られていました。
以上がドクラの前半(型作りまで)の工程となります。