暦の上では・・・
4月も半ばとなり、ここら辺の桜は花がほとんど散ってしまい、すっかり葉桜、または葉のみの木となってしまいました。
しかし、桜はなにも満開の時ばかりが良いのではありません。
兼好法師も徒然草の中で「花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは」なんてことを言っております。そして「雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行え知らぬも、なほ、あはれに情深し」と続き、さらに「咲きぬべきほどの梢、散り萎れたる庭などこそ、見所多けれ」と書いています。
なんでも流行に乗ってちやほやするのではなく、ピークを超えてしまったものたちにも目を向け、しみじみと思いを巡らすというのも風流なのです。
ではここで、実際に「あはれ」の心を感じてみましょう。
私がこれから言う言葉に反応して、ぜひあはれんで見て下さい。
【第一段】
『パイレーツ、だっちゅーの!』
どうです? あはれられましたか?
えっ、ちょっとあはれ足りない・・・
では、
【第二段】
『流氷の天使クリオネ』
どう? あはれった? ねえ? どうよ?
・・・
じゃあ、連続技で、
【第三段】
『君はチョコベーを見たか?』
【第四段】
『よいしょっとぉ、月の家円鏡だぁ!宝くじ20枚!』
【第五段】
『勇猛果敢で知られるダヤク族がおびえた!』
【第六段】
『風船おじさん』
【第七段】
『なんちゃっておじさん』
【第八段】
『エジソン最後の発明、霊界ラジオ』
【第九段】
『ダブルラジカセ倍速ダビング』
【第十段】
『ダイビングクイズとがっちり買いましょうの合わせ技』
とまあ、たまにはこんな感じで過ぎ去ったものたちに思いを馳せ、兼好法師度をチェックするのも、いいのではないでしょうか。
*このメルマガの後半へ続く
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*このメルマガの前半からの続きです。
なんだか「あはれ」を感じるというより、単なる「なつかしもの」オンパレードみたいになってしまいましたが、こうした話題は飲み会などで結構盛り上がりますので、春先の各種歓送迎会などにも使えて便利です。
テレビでも「なつかしの名場面集」なんて番組をよくやっていますが、だいたいが同じような番組の同じようなシーンばかりが流されているようです。
そんな番組を見て、それらのシーンをさも前から知っていた情報のように飲み会などで披露する人がいますが、他にもその番組を見た人が居た場合(たいていいるものですが)、本人ばかりでなくそこに居合わせた人たちまでが、恥ずかしい思いをしてしまいますのでやめましょう。
やはりそこは、できる限り自分の記憶に頼った話題を振りまきたいものです。
しかし、もしやむを得ずテレビ番組からの受け売りをする場合には、きちんと事前にそのことを相手に告げることが賢明です。また、そのようなネタを手帳に書き留めておき、そいつをちらちら見ながら話すのもやめましょう。だいいち手帳を落としてしまい、交番に紛失届けを出しに行くときなどかなり恥ずかしいです。
「えーと、『黒い表紙の手帳』だけではねえ。もっと他にこれといった特徴とかないの? たとえば中にどんなこと書いてあったの? ん?」
「えっ、 ああ・・・そうですねえ・・・えーとですねえ・・・
『うれしいに決まってます。by 鈴木大地』とかですね・・・それから、
『山田くん、みなさんに例のもの配っつくさい。by 円楽』とか・・・
『こんばんや。7時のニュースです。by NHK」とかです」
「ふーん・・・ その手帳、本当に大事なものなの?」
ってなことになってしまいます。
さて、なつかしのテレビ番組の話題と言いましても、誰も知らないマイナーなものですと、返って場がしらけてしまいます。
たとえば「どっこい大作」なんて番組がそうです。
この番組はまず「なつかしの名場面集」といった番組にも取り上げられませんので、私も当時の記憶を頼りにお話させて頂きます。なので多少の記憶違いや思い違いがあるかもしれませんが、だいたい次のような内容でした。
「どっこい大作」は昭和47年頃にやっていたドラマで、主人公は北海道から東京に出てきた田力大作という少年でした。
大作少年の上京の動機や家庭環境などの詳細は忘れてしまいましたが、とにかく大作少年はいろいろな職業にチャレンジし、時には自分に気合を入れるためか、相撲の突っ張りのようなポーズで「どっこい!どっこい!」と言って、手を前方に交互に送り出したりするのです。
大作少年の最初の職場はラーメン屋でした。
ラーメン屋には意地悪な先輩がいて大作少年をいじめるのですが、秘伝のスープの作り方を教えてもらえない大作少年が、夜中にこっそりスープを盗み飲みしてしまうところなどは、明らかに大作少年に非があると思われ、その行為を鑑みれば、両者5:5のイーブンといったところでしょうか。
しかしそのスープを盗むシーンというのがまた印象的で、さすがに店主秘伝の大切なスープだけに、ずんどうの鍋に入れて南京錠を掛けるというところまではよかったのですが、なぜか鍋にはふたがしておらず、代わりに金網がかぶせてあるだけなので、いくら錠を掛けても鍋を傾ければスープが盗り放題というありさまなのです。とてもまぬけなのです。
ラーメン屋修行時代には、ライバルとして「ラーメン太郎」なる人物がいました。これは朝刊太郎を歌った山田太郎が演じていたのですが、見事なまでの太郎つながりの安易なネーミングは、逆に意表をついた斬新なものに思えたものです。
ちなみに現在駄菓子屋などで売られている「ラーメン屋さん太郎」は、このラーメン太郎とはまったく関係がないものと思われます。なにしろ「ラーメン屋さん太郎」はボクシングをしている少年の絵柄で、少なくとも「どっこい!」とは言っておらず、代わりに「とり味」と書いてあります。あえて「チキン味」と書かず、「とり味」とするところが、なんとなく生々しくもおいしそうに感じるから不思議です。
さて、このドラマには大作少年を常に監視するかのように付きまとう、謎の人物「二階堂老人」という人が出て来ます。
実はこの二階堂老人は俳優の志村喬が演じており、これだけ見てもテレビ局のこの作品に賭ける意気込みが分かるというものです。
二階堂老人は事あるごとに現れ、大作少年にダメだしをします。
ふたつめの職場となったお掃除屋では、大作少年が拭き終わったガラス窓のさんを、わざわざ白い手袋の指でなぞり、汚れた指先を見せつけて叱るという陰湿振りなのです。
しかし二階堂老人はあくまでもその正体を明かさず、はたして二階堂老人が大作少年の何なのかは、途中でばからしくなって見るのをやめてしまった私には、未だに謎なのですあります。
このように誰の記憶にも「変なテレビ番組」のひとつやふたつがあるはずで、それを常日頃から大事にしておけば、いざ飲み会のときにきっと役に立つこともないこともない可能性があることも考えられないこともないと思う次第であります。
それでは、今週はこの辺で失礼致します。
みなさまの感想と二階堂老人に関する情報などお待ちしております。
また来週!