暦の上では・・・
2週間ですよ、いよいよ今年も。
よく「泣いても笑っても」なんて言い方をしますが、泣きゃしませんよね、実際そんなことじゃ。
さて、日ごと寒さがつのる今日この頃ですが、もう来週は冬至を迎えます。
冬至というのは1年のうちで昼間が一番短い日なわけですから、その日を境にだんだん日の出が早くなり日没が遅くなるわけです。つまり、もう夏に向かって一歩ずつ歩み始めるということです。また来るんですね、あの暑い夏が!
冬至といえばお風呂にユズを入れる「ユズ湯」です。
寒い冬に暖かいお風呂に入るというのは、もうそれだけで極楽気分を味わえるのですが、さらにそこにユズが入っておりますと、お風呂の中にほんのりユズの香りが広がって、まるでお吸い物の具になったような贅沢な気分になれます。
しかしなぜ冬至にはユズ湯なのでしょうか?
そんな疑問にセルフサービスで答えてみることにしました。難しいコトバで「自問自答」と言います。
ゆったり肩まで湯船につかり、はぁ~、極楽極楽・・・なんて深い吐息なんぞをもらしておりますと、目の前にユズがぷかりぷかりと浮いております。
目の前にそんなものが浮いていると、ついそいつを握ってみたくなるのが人情というもの、むんずとつかんでまずは直球の握り方なんぞをしてみます。
ユズを握って手首をクイックイッと動かしてみたりなんぞ致しまして、お次はフォークボールの握りに変えて、また手首をクイックイッとしてみます。
で、やはりそれだけじゃ物足りなくなくなって、お湯の中で軽く投げて見るんですが、空気中と違ってお湯の中のユズの動きはとてもゆるく、手首のひねりで加えた回転に従い、ユズはゆるゆると回りながら逆放物線を描きながら浮上して行きます。
ユズが意外と早い地点から浮上してしまったことに不満を覚え、こんどはもう少し力を入れて投げて見るのですが、想像以上に水圧は強く、ユズは手から離れた瞬間、その動きを上方への浮上行為に移行してしまいます。
そこで今度は、より遠くへユズが前進するように、回転に工夫をしてみます。前回転、後ろ回転、右回転、左回転・・・
そんなふうに新魔球の考案にいそしんでおりますと、知らず知らずのうちに時間が流れ、そして体が芯まで温まるという寸法なのです。
昔の人の知恵というのは、ホントにすごいものだと思います。
*このメルマガの後半へ続く
〔本題〕実際のメルマガではここに新着情報などが載ります。
*このメルマガの前半からの続きです。
と言うわけで冬至はユズ湯なわけですが、一説ではユズは皮膚を強くするということもあるようです。それが医学的にどこまで信用できる話か分かりませんが、私の体験からするとそれもうなずけると思うのです。
私の体験というのは、ユズ湯のユズをお湯の中で握りつぶしたというものです。
どうしてそんなことをしたかと申しますと、ユズを丸ごとお湯に入れただけであれだけいい香りがするなら、中の果汁をお湯に搾ればもっといい香りがするだろうと思ったからです。
その日私は家族の中で一番最後にユズ湯に入ったのですが、湯船にはユズが3~4個浮いており、風呂場中にその芳香を放っていました。
湯船につかった私は、ひとしきりユズを使っての投球練習などをせっせとしていたのですが、ふと、こんな使い方じゃユズがもったいないんじゃないかなあ?と思ったのです。
通常柑橘系のくだものは、そのみずみずしい果汁が喜ばれるわけです。外皮をむき、中の房に包まれた実を口の中に入れ、ギュッと噛めば芳しい香りとともに甘酸っぱい果汁が口中に広がるのです。また、ジュースなどにしてしまってもおいしいですよね。
ユズもそんな柑橘系くだものの仲間であるというのに、ただおとなしくお風呂に浮かべられるだけなんて、あまりといえばあまりの仕打ちじゃないですか。せめてグラグラと沸き立つ熱湯に長時間つけるのであれば、ユズもその持ち前の柑橘系の能力を充分に発揮できるのでしょうが、せいぜい43度くらいのお湯じゃあねえ・・・
そんなユズを不憫に思う私の気持ちが、湯船の中でのユズ搾りを実践させました。
まずひとつ、外皮をむき、中の実を握りつぶしました。ユズを少しもムダにしないように、それはもう丁寧に両手を使ってぐにゅぐにゅと潰しました。そして同じようにふたつめも・・・
その作業はまるで泥んこ遊びをしているようで楽しく、私を夢中にさせました。
そうしてすべてのユズを潰し終わり、ようやくわれに返ってあたりを観察してみますと、風呂場にはユズの香りが強烈に立ちこめ、お湯の表面にはユズの薄皮や種などが浮き、湯船は少し白濁しているようでした。
それでも私は大きな仕事を成し終えた達成感と、天然果汁入りの「本物のユズ湯」につかる喜びでとても満足でした。
しばらくの間、そんな満足感と天然果汁入りユズ湯に浸っていた私なのですが、なんだか皮膚がピリピリしているような気がしてきました。
よーく神経を痛点に集中してみますと、どうもそれは気のせいではなく、本当にピリピリしているようでした。
そして私の冷静な分析の結果、そのピリピリ感とユズの天然果汁には、なんらかの因果関係にあるのではないか?という結論に達したのであります。
そうです、ユズの果汁は人間の肌には刺激が強すぎるようなのです。特に皮膚の弱い箇所、つまり尻の穴の周りなんかはいけないようです。
私は慌てて湯船から上がり、念入りにシャワーでユズ果汁を流したのですが、しばらくは体がヒリヒリしていたことを覚えております。
それは私が、まだなんにも知らない23歳の冬至の夜の出来事でした。
そんなことですので、ユズは果汁さえ出さなければ、適度に皮膚に刺激を与え、丈夫にしてくれることと思います。
みなさんはユズ湯に入られても、ユズを潰すようなマネはしないで下さい。そんなことをすると、ユズ湯ではなくユーツ湯になってしまいますから。
それでは、また来週!