暦の上では・・・
今年の夏は多くの地域がちょっと涼し目のようではありますが、それでも夏真っ只中です。海に山に予備校にと、みなさんそれぞれの夏を満喫されていることと思います。
私が高校3年生だった時の夏も冷夏で、やはり雨もよく降りました。
いちおう形だけの受験対策で予備校の夏期講習に通い始めていた私は、ある雨の日駅の改札を出たところで滑ってしまいました。それは何か未来を予見する出来事のように思われたのですが、半年後にそれが的中した時には愕然と致しました。しかも「予見」として滑ったのは一回だけだったのに、半年後のそれは5回もあったのです。
受験生のみなさん、今年の夏は足元にご注意を。
さて、夏になると旅行に行きたくなります。
夏には「夏休み」があり、旅行に行き易い環境だということもありますが、夏という季節が心をわくわくさせることが大きな理由なのではないでしょうか。
それでもやはり夏は暑いですので、できることなら涼しい土地へ行きたいものです。北海道、東北、信州、南半球などなど・・・
そんなわけで夏の旅行は「避暑」という要素を考慮して決めるべきなのですが、たまにその辺をまったく考慮しない、またはその土地の気候に無知であったということから選択ミスをしてしまうこともあります。
私もかつてそのような間違いを犯しました。
その夏はロサンゼルスでオリンピックが開催されていました。
陸上競技ではカール・ルイスがいくつもの金メダルを獲得し、女子マラソンではアンデルセンがふらふらになりながらゴールをしました。柔道では山下が念願の金メダルを取り日本国民を熱くさせた夏でありました。
そんなロス五輪の熱気が日本にも伝わったのか、その夏は猛暑でした。
そしてその夏に、私は超有名な古都に旅行に出かけたのです。
*その土地の人に余計な迷惑をおかけしないよう、地名は分からないように伏せておきます。そんな小さな心遣いが嬉しいじゃありませんか。
その頃の私のその街に対してのイメージと言えば、「しっとりとした古都」というものしか持ち合わせておりませんでした。ですから、まさかあの超有名古都の夏があんなに凶暴的に暑いとは知らなかったのです。
*いちいち「超有名古都」と書くと長いので、以下「超都(ちょうと)」と書きます。
あくまでも私はあのしっとり雰囲気の超都の、さらに古刹名刹のリンとした空気の中に身を置き、心を無にして神仏に祈り、今後の世界平和や私が宝くじが当たりますようにと願い事などしようと思っていたのです。「心頭滅却すれば火もまた涼し」なのです。
そんな私でも超都の冬が寒いのは知っていました。学生時代に旅行に訪れ、その寒さは身を持って体験していたのです。でもその寒さは超都の風景をさらに引き立たせるような気がして、決してイメージを変えてしまうものではありませんでした。
余談ですが、その時学生であまりお金がなかったにも関わらず、そこの名物のとうふ料理を食べようと思い、落ち着いたたたずまいのとうふ料理専門店の庭先まで入り、値段表を見てすごすごと出てきた想い出があります。なにしろ一番安いのが2,500円もしたのです。一人前ですよ、一人前。超都のトーフって高いのね。
まあ話がついわき道にそれてしまいましたが、とにかく私の中の「超都」はいつでも涼しげな街であったのです。ですから夏の旅行にだって何の躊躇もなしに選んだのです。
それなのに・・・それなのに超都は・・・チョートは・・・
*このメルマガの後半へ続く
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*このメルマガの前半からの続きです。
超都は着いたとたんに暑かったです。
新幹線のドアが開くのももどかしく、超都の熱風が押し寄せて来て「おこしやす」なんて言うのです。駅前にある超都タワーも陽炎でゆらめき、ムーミンに出てくるニョロニョロのようです。
それでも初日は予定通り名所を見に行きました。
自分に似ている仏像を探してしまうお堂、こんなところから飛び降りるつもりになんか絶対にならない舞台のあるお寺、朱色のでっかい鳥居のある神社・・・
ずっと歩いて回ったのですが暑くて暑くてしかたありません。
なにしろ真夏の超都の太陽はぎらぎらと頭上に降り注ぎ、そこにアスファルトからの照り返し及び蓄積された熱エネルギーが下からわらわらと湧き上がって来るのです。道端のそこここにセミがばたばた落ちています。とにかくすごい数なので、「あー、あのセミを集めてシロップをかけて食べれば、これがホントの『セミしぐれ』なんじゃないか」などと考えたりしたのですが、さぞかし食べるときに口の中が痛いであろうと想像すると、ますますぐったりしてしまうのでした。
そこで奮発してタクシーで移動することにしました。
タクシーの運転手さんに「超都御所」へ行って下さいとお願いしました。
そしたらどうでしょう、運転手さんは呆れたように「あそこはフツーは入れませんよ。事前に許可証かなにかお取りになりましたか?」と言うのです。
お取りになりましたかって、私を誰だと思っているのでしょう?
私は超都の気候も知らずにのこのこ真夏にカンコーに訪れた男ですよ、超都御所に許可証がいるかなんて知るわけないでしょ。まったくもう。
とにかく超都御所には入れないらしいので、いっそのこと歴史的建造物めぐりはすべてやめて、どこか涼しそうなところへ連れて行ってもらうことにしました。
タクシーが着いたところはアラシ山というところでした。
アラシ山には川をせき止めたような場所があり、手漕ぎのボートがたくさん出ていました。
私もさっそくボートに乗って川の中ほどに出てみましたが、これがなかなか涼しくて気持ちが良いのです。極楽極楽・・・
結局その日はアラシ山で夕方まで過ごし、翌日は超都から出て日本で一番大きな湖まで行き観光船で涼をとったのです。
せっかく超都まで行ったというのにほとんどその名所を見ず、買ったお土産はと言えば、ロス五輪のTシャツに所ジョージの本、そして前から欲しかった手首を鍛えるボールなど、なにも超都で買うことないんじゃない?みたいな代物ばかりだったのです。
超都最後の夜、やはり土地の銘酒とはまったく関係のない生ビールを飲みながら、今回の超都旅行の意義などを自分に問いかけてみたのですが、今回はただ
「超都といえども夏は暑い、というか超都は夏の本場である。さらに言えば超都の熱で日本全体が夏になる」ということが分かっただけで良しとするしかないであろうとの結論に達し、少しあったまってしまったビールをうぐうぐと飲み干したのでありました。
*この話は実話を元にしておりますが、決して舞台になった「超都」を誹謗中傷などしたものではなく、ましてや脂肪注入した事実もありません。
みなさんもぜひ夏の超都観光に挑戦してみて下さい。
きっと新たな発見があるはずです。
最後に「ひょっとしてこの『超都』って、ウチの街のことやろか?」とお思いの方、その通りです。今年も暑いですか?
それでは今回はこの辺で失礼致します。
また来週の木曜日にこのメルマガでお会い致しましょう。
ごきげんよう!