ジュナーガルの人たちは実に人懐っこい。
町を歩いているとあちこちから「ハロー」と声が掛かり、いろんな人に「どこから来たんだ?」と質問される。
いや、それはなにもジュナーガルの人に限ったことではなく、グジャラート州の人全般に言えることかもしれない。
ジュナーガルは「古い城砦」という意味で、その名の通り町の東側には廃墟と化した古い砦があり、今はこの街一番の観光スポットになっている。そんなウパルコート砦に私も行った。
そしてそこで他の観光客から熱烈歓迎を受けたのである。
まあ町中なら声を掛けられるといっても、せいぜい「ハロー」とか「どこから来た」くらいのものなのだが、ウパルコート砦ではみんな旅行に来ているという高揚感からか、握手を求められたり、一緒に写真を撮ろうとか言われるのである。こちらとしたら別に芸能人でもなんでもなくただの日本人旅行者で、ただ単にグジャラートを訪れる外国人が珍しいという理由だけで、そんな扱いを受けるのだということをよく自覚しているから、そのたびになんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
でもあちらはそれで満足してお礼まで言うほどなので、こんな私でよかったらいくらでも握手もするし写真にも納まりましょうということになる。これも小さな日印交流なのである。
それでも広い砦のあちこちを歩き回り、長い石段を上がったり下がったりして疲れて来ると、いちいち握手をしたり写真に納まったりするのがだんだん面倒になって来る。しかも自分のペースで見学したいのに、親切心から案内を買って出る若者グループなどが出現するともう大変である。インド人は結構せっかちなので、説明を終えるとどんどん次のスポットに移動しようとするのである。
こちらとしてはもっとゆっくり見たいと思うし、それに自分の気に入ったアングルからの写真も撮りたいというのに、たいてい案内役の若者グループの誰かが写真に写り込んでしまったりするのである。
なのでついそういうのを避けるようになってしまう。
もう手相が変わるほど握手をし、魂が吸い取られるほど写真に納まると、だいたいどんな人たちがそういう要求をして来るかがわかるようになって来る。
なので前方にそれらしきグループを発見すると、コースを変更してあまり人のいない裏手に回り込んだりするのである。
まったくこれじゃあ見学に来たんだか鬼ごっこをしに来たんだかよくわからないのである。人から注目を浴びるというのはなかなか気持ちのいいものでもあるが、それがずっと続くというのはかなり大変なことだなあと、世の有名人の苦労が少しだけわかった私だったのである。
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