子どもの頃に読んだ雑誌のクイズコーナーに、写真(実際は写真に見立てた絵だが)の中の不自然なところを探すというものがあった。
写真(のような絵ね)には自然の中にいる動物が何匹か写っているのだが(だから本当は描いてあるのね)、そこにはライオンとトラがいて、答えは「ライオンはアフリカにはいてインドにはおらず、トラはインドにいるがアフリカにはいないのでそこが不自然である」というようなものだった。
ところがインドにはトラもライオンもいるのである。
もっとも「インド」という同じ国に両者がいるということで、その生息地が重なっているということではない。
とにかくインドにはライオンが生息し、それがグジャラート州なのである。
そのためグジャラート州観光局のマークは、ライオンの横顔を図案化したものになっている。ではどこにインドライオンがいるのかといえば、それはササン・ギル国立公園であり、そこは今私のいるジュナーガルから距離にして約70km、車なら2時間半ほどのところなのである。
ササン・ギル国立公園には野生のライオンが300頭ほどいるとのことなのだが、実際にライオンに遭遇するのはなかなか難しく、ライオン目当てに訪れる人はみな三日ほどの滞在を前提に行くのだと、アーマダバードに向かう列車の中で、裕福そうなご夫婦からそう教えてもらった。ちなみに彼らは滞在二日目で早くもライオンを見ることができ、とてもラッキーだったと言っていた。
私はライオンを見るために3日も使うわけにはいかないが、でもぜひこの目でインドライオンを見てみたい。じゃあどうしたらいいのかといえば、それはズバリ、動物園に行けばいいのである。
実はジュナーガルにはインドで三番目の古さを誇る動物園があり、そこにインドライオンがいるのである。動物園はなかなかの人出だった。
初めは他のインド人たちに付き従い、順路にそってひとつずつ動物の檻を見て行ったが、最初のコーナーは鳥ばかりなのですぐに飽き、列を抜け出して猛獣コーナー目指してショートカットすることにした。なにしろ私の目的は、インドライオンただひとつなのである。
と、あちらの檻の中でなにか大きな動物が行ったり来たりしているのが見えた。
あっ!白いトラだ!
私はすぐさま檻に駆け寄り、人垣の隙間に体をねじ込んで前に出ると、白いトラをじっと見つめた。私にとって白いトラは、大阪万博で初めて見るはずのものだった。
ところがようやくたどり着いたインド館では、けしからんことに暑さのために白いトラの公開を一時的に中止してしまっていた。子ども心にも、暑さの本場インドから来たトラのくせにだらしないな、と思ったものである。それとも大阪の暑さはインド以上なのだろうか。
とにかくそれ以来私にとって白いトラは「見られる時にじろじろ見ておく」というものになり、これまでデリーを始めコルカタやハイダラバードの動物園などでじろじろ見た。
なのでここでもじろじろ見ておくのである。じろじろ、じろじろ。
おっと、白いトラもいいが、私はここにインドライオンを見に来たのであった。
餅は餅屋、猛獣は猛獣コーナーであるから、インドライオンの檻はトラのすぐそばにあった。
それではここからは余計な能書きなど言わず、その雄姿をとくとご覧頂こう。
さあ、これが貴重なインドライオンの姿だ!この動物園にはインドライオンが四頭飼育されていたが、どいつもこいつもごろごろ寝てばかりで、見ていてちっとも面白くなかった。
しかも写真でトリミングして見れば、まあなんとか「これがインドライオンなのか」と思えるかもしれないが、実際はこんな↓感じなのである。ライオンのやる気のなさがこちらにも伝染したのか、その後は他の動物を見る気もすっかり失せてしまい、たった30分で動物園を後にしたのであった。
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