ヴィシャカパトナムからジャグダルプルへ行く列車は、途中のKORAPUT JN駅で対向列車とのすれ違いのためにしばらく停車していました。
私もホームに降り、しばらくは手足を伸ばしたり辺りをきょろきょろ眺め回したりしておりましたが、いつ発車するかもわからない列車からあまり離れることもできず、結局ホーム見物もすぐに飽きて自分の席に戻ってぼんやりとしていました。
同行のMくんは愛煙家のため、車内では吸えないタバコをホームでゆっくり満喫し、遅れて車内に戻って来たのですが、開口一番「まっちゃん(私のことです)、トウモロコシ売ってたぞ」と教えてくれました。
私はそれを聞くと慌ててサンダルをつっかけるやホームへ飛び下り、素早く左右を指さし確認すると、はたして数人の人に囲まれたそれらしきおばちゃんを発見したのでありました。私がそれほど慌てていたのは、すでに30分以上も停まったままの列車がいつ動き出すかわからないということと、肝心のトウモロコシが売り切れてしまわないかという焦りからでした。
しかしおばちゃんの持つ深鍋にはまだ数本のトウモロコシが残っており、私はめでたくトウモロコシを手にすることができたのでありました。実はこの時私はかなりひどい下痢をしていたのです。でもトウモロコシの魅力には勝てませんでした。しかもインドの粉っぽいトウモロコシは、茹でて冷めるとそれはそれは固いものになるのです。そんな誰が見ても胃にいいわけがないトウモロコシを嬉しそうに食べる私を、Mくんは半分呆れて見ていました。ちなみにインドではトウモロコシに塩とレモン汁を付けて食べたりします。正確に言うと、半分に切ったレモンに塩を付け、そいつでトウモロコシの表面をゴシゴシこするのです。
私は初めそれが嫌で、トウモロコシ屋がそれをするのを素早く制し、「そのままでくれ」と言って食べていたのですが、ある時あっと言う間に塗られてしまったものをしぶしぶ食べたところ、これがあーた意外にトウモロコシに合うのです。レモンの酸味と塩味がミックスされ、あたかも醤油のような風味が出るのです。それにもしかしたら暑いインドでは、その組み合わせが暑さから体を守る要素になっているのかもしれません。
とにかく私は冷めて固くなってしまったトウモロコシをゆっくり食べました。
普段日本ではこんなにじっくり食べ物を噛みしめることなどありません。それがよかったのか、それともレモンと塩がよかったのか、はたまた単なる自然の成り行きか、私の下痢はその後快方に向かって行ったのでありました。
めでたし、めでたし。
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