暦の上では・・・
沖縄と北海道を除いては梅雨真っただ中です。
とは言え、すでにそこここで夏は始まっておりまして、ついこの間まで深緑の水が張られていた近くの公園のプールも、いつの間にやら水が抜かれ掃除が完了しておりました。
実はそのプール、私もかれこれ30年ほど前にアルバイトで監視員をやったことがありまして、その初仕事がプールの掃除でした。
やはりこの季節だったのでしょう、私たちバイトくん(正確には市の臨時職員)はプールサイドに集められました。ええ、これからプールの清掃を始めるわけです。
かたわらに横たわる50mプールは、前年のシーズンが終わってからおよそ9ヶ月の間そのまま水が張られたままになっていて、その間には水鳥が飛来し、各種昆虫が産卵のために訪れまた誤って入水したりなんかしているわけでありまして、その水底にはどんな未知の生物が潜んでいるかわからないのであります。
そんな超危険地域にこれから突入しなければならないというのに、私たちの装備と言えば、市から支給された水泳パンツとTシャツ、そして麦わら帽子といったイデタチで、未知の危険生物から身を守るのに使えそうなものはデッキブラシくらいのものでした。
市は本気でこんな装備で巨大ナマズや高圧電気ウナギに対抗できると思っているのでしょうか。せめて長靴とゴム手袋くらい欲しいものです。
と言ってる間にもプールの水位は下がって来たのですが、それとは裏腹にどんよりとした濁りの密度は増しているように思えてならないのでありました。
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やがてプールの水はほぼ全部抜き取られました。
見たところ心配していた巨大生物は確認できませんでしたが、プールの底にはなんだかキモチの悪いどろどろとしたものが溜まっています。
こんなところにこれからハダシで入らなければならないのです。巨大生物はいなくても、小さな体に猛毒を隠したウミヘビや、昔映画で見た人食いアメーバなどがいるかもしれないのにです。私たちバイトくんは消耗品だとでも思っているのでしょうか、ったくう・・・
まあお金を稼ぐというのはなかなか大変なことなのであります。
それにこういうアルバイトをしっかりやっておけば、将来市役所に採用してもらえるかもしれません。なのでここはいっちょ我慢して、ヌルヌルのヘドロ状態のプールの底に降りて行かなければならないのです。
そんな感じでプールの清掃が始まりました。
バイトくんたちは横一列に整列して、市の正式職員であり将来先輩となるかもしれない人の指示で、デッキブラシをシャッシャッシャッと軽快に動かしながら前進して行きました。
しかし人間というのは不思議なものです。
あれだけ気持ち悪く思えたヘドロが、自分の動かすデッキブラシで次第に除去され、市の正式職員でありもしかしたら将来先輩となり、「どうだ、今夜仕事が終わったらいっぱい飲みに行くか?」などと誘ってくれるかもしれない人の持つホースから出る水で流されて行く様(説明が長いな)を目の当たりにしますと、なんだかとても気持ちがいいのです。
こうして私たちバイトくんたちの手によってプールの清掃は完了致しました。
当初恐れていた未知なる危険生物との遭遇及びデッキブラシを駆使しての戦闘もなく、いくつかのヤゴを捕獲したのみで無事に終了したことは、将来の市職員として誇りに思う次第であります。
清掃の後プールにはきれいな水が張られ、午後からのプール開きで行われた模範演技の古式泳法などを眺めながら、本格的な夏の訪れを実感した若き日のワタクシなのでありました。
ああ、労働は美しきかな。
とまあ、その後私は市の職員になることもなく、今ではプールを利用するだけの側となっておりますが、先日公園できれいになったプールを見て、そんなことを思い出したのです。
それでは今週はこの辺で失礼致します。
また来週お会い致しましょう。
ごきげんよう!