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2007年5月25日:インド出張レポート・その20

         
  • 公開日:2022年8月1日
  • 最終更新日:2022年8月5日

ラクダ隊商の隊長こと松本です。
その後いかがお過ごしでしょうか。

暦の上では・・・

季節とは関係ありませんが、ハンカチ王子の次はハニカミ王子ですか・・・

いいんですか?そんな言葉遊びでニックネームを付けてしまって?

じゃあ、そのまた次を狙うティーンな男子に嬉しいお知らせです。
これから来る「ハ○○○王子」シリーズをここに一挙大公開します。

ハンソデ王子
ハラマキ王子
ハミガキ王子
ハギシリ王子
ハナクソ王子
ハットリ王子(ニンニン!)
ハッタリ王子
ハラキリ王子
ハラハラ王子
ハリボテ王子
ハラボテ王子
ハタフリ王子(運動会とか)
ハキダメ王子
ハキワスレ王子(パンツとか)

さあ、これだけあればどれか当てはまるだろう。

君なら何王子を狙う?

今年の夏は、ハ○○○王子で彼女のハートをがっちりハガイジメ王子!

えーと、なんだか若き男子へのメッセージで幕を開けた今回のメルマガなのですが、たぶんこのメルマガ読者に於けるティーンな男子の割合はひじょーに少ないと思いますので、さっさとインドの話に移りましょう。

まずは前回までのあらすじからです。

【前回までのあらすじ】

砂漠の旅の末、ようやくたどり着いたホテルはなんとも豪華なヘリテージホテル。しかもあてがわれたのがスイートルームとあれば、これはもう市内観光などそっちのけで、マハラジャスタイルでホテルライフを楽しむべきと、持ち込みビールを冷蔵庫にこそこそ仕舞う私たちだったのであります。

【あらすじおしまい】

 

まずは旅の疲れと砂漠のホコリを落とそうと、風呂に入ることにしました。

バスタブは特にキングサイズというわけではありませんが、それでも普段泊まっているホテルのものよりゆったり入れそうな大きさがあります。
そしてなにより、蛇口をひねると勢い良くお湯が出て来るのが嬉しいじゃありませんか。
これがいつも泊まっているホテルなら・・・と、ついつい普段の生活を持ち出してしまうところが庶民でありまして、こりゃマハラジャスタイルでくつろぐなんてことは、到底不可能であろうと、早くも断念してしまう私でした。

さて、風呂に入りサッパリとした私は、先ほど冷凍庫に横たえておいたビールを取り出し、窓際のソファーに座りました。
インドでも比較的気温の高いラジャスタン州の、しかも砂漠の真っ只中ではありますが、今はまだ3月、気候は穏やかで日本の初夏を思わせるような陽気です。
当然エアコンなどつける必要はなく、観音開きになっている木の窓枠を開けば、庭のガジュマルの葉を揺らす湖越しの爽やかな風は、この部屋にも入って来てくれます。
そんな窓から少し傾きかけた太陽に照らされた噴水池やヒンドゥー寺院を眺めながら飲むビールは、なんとも言葉には形容できないおいしさがありました。あんまり冷えてはいませんでしたけど。

と、しばし贅沢なビールタイムを過ごしていると、噴水池の所に一頭のラクダを連れたおっさんがやって来ました。
ラクダはなにやらきれいな飾りを付けられ、おっさんもそれなりの正装をしているようです。
なるほど、これは宮殿ホテルによくあるサービスです。
特にラジャスタンの宮殿ホテルなどに泊まると、居ながらにしてインド情緒が楽しめるように、ホテル内で民族ダンスが行われたり、中庭にヘビ遣いがいて笛をびょろびょろ鳴らしていたりするのです。
もちろんそれらはチップが必要なのです。
まあチップをあげない人もいますが、宮殿ホテルに泊まっていると、ついマハラジャ気分になってしまい、普段より多くチップをあげてしまったりするものなのです。特にいつも安いホテルにしか泊まれない人はなおさらなのです。

ということで、このラクダもあまりジロジロ見ておりますと、おっさんがこの窓辺にまでラクダを連れて来てしまう可能性もあります。そうすると小心者の小市民で一夜のマハラジャ気分に浸ろうとするようなやつは、チップを渡すはめになってしまうのです。
そこで私は窓の扉をほんの少しの隙間だけ残して閉めてしまいました。
そしてその隙間からラクダを盗み見て、持ち込みのビールをチビチビ飲むことにしたのです。

ひっひっひっ、これなら向こうからはこちらの姿が見えまい。
おっ、あのラクダ、なかなかいいケツしてるじゃねえか、ひっひっひっ・・・

もうこうなるとマハラジャどころか単なる覗きのおっさんです。

 

*このメルマガの後半に続きます。

〔 中略 〕

*前半からの続きです。

 

さて、チップは惜しいがラクダは見たいというジレンマを抱きつつ、尚もビールを飲んでおりますと、今度はなにやら笛と太鼓の音が聞こえて来ました。

おや?何だろう?

と、大いに好奇心をかき立てられたのですが、ここでうっかり窓を大きく開け放ってしまうと、たちまち外の連中に見つかってしまい、ラクダを中心に笛太鼓も加わった大集団がこの窓辺に一気呵成に押し寄せ、チップを渡すまでみんなで窓を取り囲み、あまつさえドアまで押さえつけ雪隠詰めにされないとも限りません。くわばらくわばら・・・

そこでやっぱり窓の隙間から外を伺い見てみましたら、

おや?

なにやら外の噴水池あたりに人がたくさん集まって来たではありませんか。
しかも全員がきれいな民族衣装やスーツに身を包んでいます。
そして笛や太鼓の楽隊が彼らを取り巻くように演奏しながらついて来ております。

いったいなんでしょう?

さすがの私もその時点になって、これはなにか特別な行事なのだということに気付き、決して私からのチップを狙った犯行ではないと確信したのです。

私はそう確信すると同時に、窓を大きく開きました。
部屋の中には再び爽やかな風が吹き込んで来ました。そしてその風によって、いかに今まで私が蒸し暑い部屋にこもっていたかがわかりました。私はそんな部屋でビールをちびちび飲み、覗き行為などという愚行に及んでいたのです。死んでもマハラジャにはなれない男です。たはっ・・・

まあ私の王位継承問題は置いときまして、とにかくこの大きく開け放たれた窓の外では今まさに何かが始まろうとしているのです。

視界も良好となり、そこに集まっている人たちを今一度よーく観察してみましたら、どうやらみな一様に一人の人物に注目しているのが分かりました。
その人物は背の高い若い男性で、ブルーのクルタを着て、頭には派手なターバンを巻いています。

あっ、結婚式だ・・・

そのブルーのクルタを来た若者のターバンは、布の一部が上に突き出した形をしている結婚式用のもののようで、さらにはみんなの写真撮影の対象になっていて、これはもう間違いなく本日の準主役の花婿であろうことが一目瞭然でした。
先ほどから噴水池の横にたたずんでいる飾り付けられたラクダも、当然のことながらこの結婚式用に仕立てられたもので、なにもこそこそと盗み見しなくてもよかったのです。

やがて一団はヒンドゥー寺院の中に入って行きました。
残念ながら私の部屋の窓からは大きなガジュマルの木が邪魔をして、その全貌を見ることはできなかったのですが、小さな祠の中からはノリトのような声がしばらく聞こえていました。

陽はもうだいぶ傾き、噴水池の庭はオレンジ色に染まって来ましたが、砂漠地帯の気温はまだ充分暖かく、開け放たれた窓から吹き込む爽やかな風に吹かれながら聞くノリトは、意味はわからずとも敬虔な気持ちにさせるのでありました。

まあ、

ビールを飲みながらなのではありますが・・・

つづく

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