象のプージャ(祝福)を受け、気を良くしたところで先に進みます。もしかしたらこちらからミナークシ女神の神殿に回り込めるのではないかという期待もあったのですが、そこにあったのはこの寺院での名を「スンダレーシュワラ(美しい神)」という、ミナークシ女神の夫君であらせられるシヴァ神の神殿でした。
先に「ミナークシ女神はヒンドゥー教に取り込まれる際にシヴァ神と結婚させられた」と書きましたが、ヒンドゥー教の側からすれば、ミナークシ女神はシヴァ神の妃であるパールヴァティーその人(神?)であり、従ってシヴァ神とは婚姻関係にあるということになるようです。
まあお家事情はよくわかりませんが、いずれにしても本来の夫であったアリャハルの意見は尊重されないという事実には変わりなく、なんだかちょっとアリャハルに同情してしまうのであります。
大きなホールのような部屋に入ると、そこにはたくさんの信者の祈る姿がありました。シヴァ神殿の本体はさらにこの奥にあるようでしたが、さすがはヒンドゥー教の三大神の中でも絶大な人気を誇るシヴァ神です。神殿前の柵のところでさえシヴァ神に祈りを捧げる人たちが後を絶ちません。
中には五体投地で祈る信者もいました。彼らは神殿に向かうと実に慣れた動作でひざまずき、額を床に押し当てるようにしたかと思うと、さっと体を延ばして地にひれ伏します。
そんな礼拝を見ているとあらためて宗教の持つ力の偉大さがわかるというものです。
それに比べてこの私は、なにかというとすぐに「遊んで暮らせますように」なんてことを祈ってしまい、まったく罰当たりな人間なのであります。
そんな敬虔な信者たちの祈りを邪魔しないようにそっとその場を離れ、左の方向に真っ直ぐ行くと、突き当たりで二人のおっさんがなにやら作っている光景に出くわしました。私は初めその色形からチョコクッキーかなにかを作っているのだと思ったのですが、近くで良く見たらそれは燈明用のロウソクでした。
つまり一人が素焼きの容器に灯芯を置き、もう一人がそこに蝋を流し込んでいたのです。
そんな風にロウソクはおっさんたちの手でどんどん量産されて行くのですが、それも需要あればこその供給というわけで、作られたロウソクは信者たちによってどんどん買われて行っては火を灯され、こうして祭壇に捧げられるのであります。あゝ、まさしく灯々無尽、信仰の心は脈々と後世に伝えられて行くのです。
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