無事にナルシン・メヘタ詣でを終え、次にジュナーガルで一番の見どころであるウパルコート砦へと向かうことにした。
ウパルコート砦に行くのは今回で二度目であるが、ナルシン・メヘタを経由したため頭の中の位置関係がすっかり狂い、だいぶ遠回りをしてしまった。
ようやくウパルコート砦に続く坂道に出たが、なぜか三年前とは違って観光客の姿が少ないような気がする。
そもそも以前は、観光客を満載したバイク型三輪が何台も追い抜いて行ったというのに、今回は一台も見ない。
この砦はなんと紀元前319年に、マウリヤ朝初代王チャンドラグプタによって築かれたとのことである。
やがて遷都によってこの地の重要性がなくなったことから、7世紀から10世紀まで完全に忘れ去られ、すっかり森に埋もれてしまっていたのであった。
その後発見されたこの砦は、時の支配者によって再び砦として使われるようになったとのことで、残っている建造物はそれ以降のものが多いのだろう。
しかし門を入って最初に通るこの通路は、あたかも紀元前の昔に戻るタイムトンネルのように思える。
ところが、ふと後ろを振り返ると一台の乗用車が入って来るではないか。確かここは車では入れないはずである。なにしろ入り口からしばらくは狭い通路が続くのである。
初め私はそれがこの砦の関係者の車か、または重要人物の乗った特別な車なのだろうと思った。インドでは政治家などの「実力者」が、日本では考えられないくらいの特別扱いを受けることがあるからである。
ところが入って来る車は一台ではなかった。
なんと驚いたことに、この三年の間にここは車入場OKとなったようで、砦内の通路の至る所に車が停まっている。
なるほど、車で中まで入って来る人が増え、その分歩いて来る人の姿が少なかったのかな。
ここまで来るとジュナーガルの街が一望できる。
それにしてもすごい人の数である。
しかしこの中のどれくらいの人が、ここまで自分の足で上がって来たのだろう。
自分の力で上がって来てこそ、この眺望がより一層素晴らしく思えるのだぞ、と少しひがんでそう思う。
たくさんの観光客を目当てにした馬がいた。
いや、別に馬が自分で観光客目当てに来たというのではなく、客を馬の背に乗せたり一緒に写真を撮らせたりしてお金を取るという商売人が連れて来た馬である。
また記念撮影をする写真屋も出ていた。
携帯電話やスマホを含め、すっかりカメラの普及した時代に写真屋なんていう商売が成り立つのだろうかと思ってしまうが、ちゃんと撮影用の小道具を用意してお客様のお越しをお待ちしているのだ。
ほら、この人まんまとライフル構えちゃったよ。
私もあんまり近くで撮ると写真屋からお金を請求されそうなので、ちょっと離れたところからこっそり撮った。
砦の東側からは遠くにギルナール山を望むことができる。
あの山はグジャラート州の最高峰である。もっとも標高は1000mちょっとではあるが。
またギルナール山はヒンドゥー教の聖地でもあり、たくさんの寺院が建てられている。
なのでたくさんの信者、そして観光客がギルナール山を訪れるのだが、私は頂上まで9999段もの石段があるということに恐れをなして、近づくことさえしないのである。
ウパルコート砦はとても広く、内部には階段井戸や洞窟、モスクなどの見どころもたくさんあるのだが、私は再訪ということで、今回はのんびり景色だけを眺めるという、なんとも贅沢な時間を過ごした。
*ウパルコート砦に関しては「インド・グジャラートの旅:実録編・第21回:ジュナーガル」にてもう少し詳しく紹介しております。
私が帰る時には同じように帰る車もたくさんいて、入り口(出口?)の狭い通路は渋滞ができるほどだった。なにしろここは車がすれ違えない狭さなので、係員による交互通行が行われているのだ。
でもきっと、今にこの砦の維持保存を真剣に考えるようになったら、車は再び入場禁止になるのではなかろうかと、そう思うのである。
*情報はすべて2016年11月時点のものです。
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