〔当時のメモより〕 *金額に関しては当時Rs.1が約2.7円、3倍にして1割引けば簡単に計算できます。 6/8(金) バンガロール 快晴 気温26℃ 7時頃起きる。昨夜は2回もおしっこに起きた。 パンにチョコピーナッツを塗って食べた。 ルームクリンにオレンジをあげようとしたら、断わられた。「You eat」 11:30 いつものレストラン ネットカフェ Rs.30 Rs.40 スーパー(水、パン、ミルク、ジャム、セッケン) Rs.60 ロングライフミルクを飲んだ。 〔6/8の支出記録より〕 昼食 Rs.45 合計 Rs.475 |
【以下の解説は2009年12月2日のものです】
バンガロールの日々は穏やかに過ぎて行く・・・
とにかく気温も良好、人との関係も良好、お腹の具合も良好ということで、ここではずいぶんのんびりとしてしまいます。
インドではどこの街に行ってもたいてい誰かが近づいて来て、それが元でトラブルに見舞われたりと煩わしいことが多いのですが、ここでは本当にそういうのがほとんどありません。
そんな快適バンガロール生活の中でも、ちょっとおもしろい気になる人というのがいるもので、たとえば毎日部屋を覗き込んでは「ルームクリン!」と呼びかける清掃係の青年(以下、私が勝手に通称とする「ルームクリン」と表記)などがそうなのです。
ルームクリンは歳の頃なら17、8といったところでしょうか。ひょろっとした体形と、あまり変えない表情が飄々としていて、私などはその風貌にからめ取られてしまい、簡単に手玉にされてしまうのです。
今朝もいつも通りにルームクリンがやって来たので、先日スーパーで買ったあまりおいしくないオレンジを(じゃまなので)あげようとしたところ、ルームクリンはたった一言「お前が食べろ」と相手にもしてくれませんでした。なんとまあつれないこと・・・
また隣の部屋の住人(おそらく長期にわたって滞在しているようなのです)も変わっていて、歳の頃なら40はとうに過ぎたという西洋人で、これまた細くてひょろっとしており、髪は伸ばし放題の長髪という風貌なのですが、この人はいつもラジオをぶら下げているのです。で、そのラジオもまた一昔前の代物のようで、「トランジスタラジオ」といういかめしくも懐かしい呼び名がしっくり来そうなものなのです。そしてラジオおやじ(これも私が勝手に付けた呼び名です)は、常にそのラジオから小さく音を流していて、外出するときもそのままそいつを肩にぶら下げてふらふら歩いて行くのです。
ラジオおやじはいつも無表情のまま通り過ぎて行ってしまうので、私は挨拶も交わしたことがないのですが、まあラジオのボリュームはごく小さいものですし、特に人に危害を加える様子もなく人畜無害に見えます。
でも私は、このラジオおやじはただ者ではないと睨んでおります。この風采の上がらない一見世捨て人に見える風貌は世をしのぶ仮の姿で、その実態は英国の諜報部員であり、毎日ラジオから流れて来る暗号をチェックしているのだと思うのです。そうでなければあんなに四六時中ラジオにかじりついているわけがないのです。
おそらく再びインドをその掌中に収め、かつての大英帝国の栄光を取り戻さんと、その好機をじっと窺っているのだろうと推察する次第なのであります。
今日もまたラジオおやじは、ラジオから流れる暗号のチェックに余念がありません。
それから、中央郵便局で会った老人もちょっと変わっていました。
その老人はネルー時代の生き残りのように、スタンドカラーの丈の長い服にネルー帽(またはガンディー帽)といったいわゆる「正装」をしていて、その風貌もまた貫禄があり、本当に「もしかしたら建国当時の国民会議派のヒトですか?」といった感じなのです。
そんな老人が私に近づいて来て、いきなり表情も変えずに「1ルピーあるか?」と聞くのです。
そりゃあ1ルピーくらい持ってますので、ポケットから1ルピーコインを出して老人に渡すと、それを持ったまま礼も言わずに立ち去って行ったのです。
う~ん・・・あれは何だったのでしょう?
どう見ても乞食には見えませんでしたので、よほど1ルピーが必要な事態に巻き込まれていたのでしょうか。たとえばどうしてもあの時、自動体重計で体重を量りたかったとか・・・
実はその老人にはその後、中央郵便局とはかなりはなれた場所でばったり再会しました。
まあ「再会」といっても道ですれ違っただけなのですが、私が道を歩いていると向こうからその老人がゆったりとした足取りで歩いて来て、すれ違いざまに私と目が合うと小さくうなづき、そのまま歩き去って行ったのです。
今度は「1ルピーあるか?」とは聞かれませんでしたので、その時は特に体重を量りたい気分ではなかったのでしょう。
さて、今日もまたまたいつものレストランに行ったのですが、私が食事をしていると後から入って来た東洋人風のおっさんがいそいそと私のテーブルにやって来て、「ここに座ってもいいか?」と英語で聞きました。まあ4人掛けのテーブルに私一人だけなので断る理由もなく、「どうぞ」と答えると、おっさんは実に嬉しそうな顔をして私の前に座りました。
おっさんは店員にオーダーするのももどかしく、あらためて私の方に向き直るやいなや、「どこから来た?」と聞くのです。私は当然「日本です」と答えたわけですが、その答えを聞いたおっさんの顔からは、あきらかに失望の色が見て取れました。おそらく自分が期待していた答えとは違ったのでしょう。そこで私も「あなたはどこから?」と聞くと、おっさんは「シンガポール」と答え、「いやあ、中国人だと思って話しかけてしまいました」と・・・それからはもうほとんど会話がありませんでした。
確かに私は香港に行ってもシンガポールに行っても、現地の人に何度も中国人と間違われるほど、どこか中国人っぽい雰囲気をしているようなので、ここで間違えられても特に不思議はなく、また間違えられても別に不愉快にも思わず、逆に面白がってしまうのでいいのですが、急に会話がなくなってしまうほど失望されてもねえ・・・そりゃまあ、そのおっさんからしたら「久しぶりに同じ民族の人と話ができる!」とぬか喜びしたのでしょうけど、私のせいではないですしねえ・・・
それでもなんだか自分が悪いことをしてしまったような気になってしまい、その後はもう食事も食べた気がしませんでした。
とまあ、穏やかながらもそれなりに、面白いことは毎日起こっているのであります。
つづく
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