デラドゥーンの空港に無事降り立った私とC君は、迎えの車の後部座席に収まりました。
目指すはリシュケシ、さあ走れ!
車はいきなり舗装もしていない農道のような道をがたがた走り始めました。
もしかしたら本道への近道なのかもしれませんが、その道は空港のほぼ正面から真っ直ぐに伸びている道なのです。もう少し整備した方がいいのではないでしょうか。なんせここはウッタランチャル州の州都であり、その空の玄関口なのですから。
しかし、そんなぼこぼこ道はほんのわずかの区間だけで、すぐに本道とおぼしき道に突き当たり、車は左折して快調にスピードを上げ始めました。
真っ直ぐに伸びる道の脇は幹の白い木の並木になっていて、さらにそのかたわらを見ますれば牛がいたりなんかして、まるで北海道のどこかを走っているような錯覚に陥りそうな、そんな牧歌的な雰囲気です。
北海道で思い出しましたが、以前バスツアーで北海道を回った時に、バスガイドさんから、幹の白い木は白樺だけじゃないという話を聞きました。
白い木を見るとどうしても「白樺」だと思ってしまいますが、なにも白い木は白樺だけの専売特許ではないようです。
ダケカンバなんて木も幹が白いそうで、白木みのるとかも白そうな感じがします。
そんな余計なことを言いながらも、車は並木道をひた走ります。
しばらく走ると、道はゆるい勾配の登りになって来ました。
いよいよここから山道に入るようです。
道は右に左にカーブを続け、次第に高度を上げて行きます。
と、そのとき、一匹のサルが道を横切って行きました。
かなりでかいサルです。ハヌマーンのようでしたが、あんなのに襲われたら、こちらに勝ち目はなさそうなくらいの大きさがありました。くわばえらくわばら。
そんな風に進んで行くと、早くも道は下り勾配に入り、そして間もなく小さな集落に入りました。
あれれ?ぜんぜん山越えじゃないじゃん。
不思議に思っていると、車はその小さな集落を通り過ぎ、今度は本格的な山道に入りました。
勾配もカーブも、先ほどよりかなりきついものになり、その分高度もぐんぐん上がって来ます。
そして気が付くと、右手はるか下に、広い河にへばりつくような感じの街が見えて来ました。
「あっ、あれがリシュケシですよ」
とC君が教えてくれ、私は「おー、あれがリシュケシなのか」と眺めていたのですが、ふと疑問が湧いて来ました。
「あれがリシュケシなのに、なんでこの車、山登りしてんの?」
「あっ、事前に説明してませんでしたっけ? 実は今日止まるホテルというのは、リシュケシの街にあるのではなくて、リシュケシを見下ろす山の上に建ってるんですよ」
あー、なるほどねえ・・・
しかしなぜわざわざそんな不便な場所のホテルを取ったのだろうかと、また新たな疑問が湧いて来る私だったのであります。
はたして、この山道のその先にあるホテルとは、いったいどんなホテルなのでありましょうか。
次回へ続く