「昔日の栄光は夕日の中で静かにたたずんでいた」
インドの首都デリーは人口約1千3百万人をかかえる大都市です。
ここは政治や経済の中心地というだけでなく、いくつもの王国が興廃を繰り返してきた歴史の集積地でもあります。
市内には歴史的建造物があちこちに残り、そこを訪れればかつての栄華の一端に触れることができるのです。
が、
私はほとんどどこにも見学に行っていなかったんですね、これが。
そこで前回のインド訪問の際、帰国の飛行機(20時50分発)までの時間を利用して、そんな遺跡のひとつであり世界遺産にも登録されている「フマユーン廟(びょう)」に行ってきました。
それでは、みなさまをそんなデリーの世界遺産にご招待致しましょう。
では、行きます。
足元気をつけてね。
【基礎知識】「フマユーンってなんじゃらほい?」
フマユーンというのはムガル帝国第二代皇帝の名前です。
ムガル帝国は16世紀インドに興ったイスラム帝国です。
初代皇帝バーブルはアフガニスタンからインドに侵入して一大帝国を築き上げました。しかし息子のフマユーンはその後の戦いに敗れ、一時ペルシャに逃げていました。
初代がしっかりしていて二代目はダメという構図は、まあ世間によくあることです。でもフマユーンは再びデリーに戻ることができたわけです。勢力争いの相手が死んだ後ですが。
この「フマユーン廟」は、デリー奪還を成し遂げ、その翌年になくなったそんな彼のお墓というわけです。
またフマユーン廟はペルシャ風建築の傑作といわれ、かのタージ・マハルの原型になったともいわれる美しい建造物なのです。
そして1993年には世界遺産にも登録されました。
とにかく美しい遺跡です。
当然訪れる人も多く、
あまりよく、
「いつまでも写真なんか撮ってないで、早く順番かわれよな・・・」
と、フマユーン廟で、不満ゆー、私なのです。
ぷっ! くすくす、くすくす。
えーと・・・
順番も回って来たようですので、さっそく中に入ってみましょう。
訪れたのが夕方でしたので、西向きに作られたこの廟に正面から陽が当たり、美しさが際立って見えるようです。
この建物の特徴は、なんといっても中央のドーム型の屋根と左右対称のイスラム様式です。
周囲の庭もすべてシンメトリーになっています。
大きな基壇の上に廟本体が載っているという構造がおわかりになるでしょうか。
そのアーチ型がたくさん並んでいるもの自体が基壇部ですね。
それでは正面に戻って、階段で基壇に上がりますよ。
階段はかなり勾配がきついですので、一段一段しっかりと踏みしめて参りましょう。
えっ?なんで正面から行かないのかって?
そっちの写真、
撮ってないのね、
忘れたのよ、うん。 ごめんね。
さあ、とにかくここから入りましょう、ここからね。
どうです、立派な入り口じゃありませんか。
日本じゃこんな立派な入り口なんて、どこぞのテーマパークかパチンコ屋くらいしかないですよ。
入ったところで天井を見上げてみましょう。
イスラム様式の建物で天井がドーム型になっているところは、たいていきれいな文様が描かれていたりします。
とにかくそこで立ち止まって天井を見上げ「う~む・・・」などと言ってごらんなさい。
きっと周りの人たちに「むむ、やるな」と思われるはずです。
いえ、ただそれだけのことなんですけどね・・・ええ。
はい、そしてこれが棺です。
かつての栄華も遠い過去へ消え去り、今は静かに夕陽を浴びて横たわるふたつの棺・・・ロマンチックですね。
えっ? 今度はなんですか?
大きな廟のわりには、窓際に棺が置かれているのはおかしいじゃないかって?普通は中央に安置しないかって?
だってこれ、フマユーンの棺じゃないですもん。
知らないですよ、私だってこれが誰の棺なのかなんて。
ただなんかかっこよかったから撮ったんですから。
あれ、怒っちゃいました?
・・・・・
西日がさ、透かし彫りの窓から差し込んじゃってさ。
あっ、ほらほら、
外に黄色いパンジャビ着た人が歩いてるんですよ。
なんかいいじゃないですかあ、ねえ。
棺おけなんか見るよりいいでしょ、ねっ、でしょ?
私はこっちのがいいと思うなあ~
機嫌直してくださいよお~、ねえってばあ~
では、再び廟の外に出ましょう。
そんないつまでもブツブツ言ってないの、ねっ。
また来ればいいじゃないですか、フマユーンどっか行っちゃうわけじゃないんだから、ねっ。
なにしろ「世界遺産」ですから。
「世界遺産」というのは、世界中の人類共通の宝です。
だから私のでもあるわけです。
おい、そこのインド人。
しっかり直しなさいよ。
私の宝でもあるんだからね。
ややっ!
わ、私の宝にあんなものが・・・
蜂が巣作ってんじゃないのよ。
あ~あ、天井べたべたで色変わっちゃってるよ・・・
あれはハチミツだろうか?
だとしたら食べてもいいんだな。
なにしろ私の宝にくっついてるもんだからな。
さて、廟の裏手に回ってきますと、地面にくっきり建物の影が刻まれています。
ただの四角いビルなどと違い、特徴的な形をしているので影を見ていても面白いですね。
では、写真など撮ってしまいましょう。
ついでに自分の影も・・・
さあ、すっかり陽も傾いてしまいました。
しっかり観光ができ、大変有意義なツアーでした。
そろそろ飛行場に向かわなければなりませんので、行きますか。
えっ?
フマユーンの棺、見たかったなあって?
もうさっきからフマユーンフマユーンって・・・
なに?フマユーンがなんぼのもんよ?
そんなにフマユーンがいいなら、