今日のインドも快晴です。気温も40度に達するでしょう。
(だいぶ前からここまで定型文になりました)
改めましてこんにちは、デリーの隊長です。
昨日パイナップルを買って食べました。
ひとつ25ルピーでした。
一緒に買ったポテトチップスの小袋がひとつ10ルピーでしたので、パイナップルは比較的安いですね。
しかしパイナップルまるごとひとつは、いっぺんに半分しか食べられませんでした。かわいそうね、さっちゃん。
それでは今日も真夏の太陽照りつける、インドの大地に没した地下にある、エアコンのないネットカフェからお送りいたします。
さあ、どうぞ!
【本題開始】
先日のメルマガで、空港の到着ロビー(ロビーといった雰囲気ではないのですが)がかなり静かになったとお伝え致しました。
ところが静かになったのは空港だけではなかったのです。
以前なら観光客の多いコンノートプレースやジャンパットゥという通りを歩くと、それはもうしつこくしつこく物売りが付きまとって来ました。
路上に商品を並べて売る商人たちも物凄い勢いで声をかけて来ましたし、一見普通の一般庶民にしか見えない男も、なんとかお土産屋に連れ込もうとやたらと声をかけて来たものです。
そしてニューデリー駅のすぐそばにあるメインバザールという通りには、外国人目当ての客引きがひしめき合い、おちおちゆっくり歩くこともできなかったのであります。
ところが今は観光客の多い地域を歩いてもほとんど声がかからず、たとえかかってもごく形式的なもので、あまり熱意を感じません。
どうも初めから「ダメだろう」との思い込みがあるようです。
いいのか? そんなことで。
好きなら好きと男らしく告白しなさい。
傷つくのが怖くて告白もできない、それで若者といえるのか?えっ!
とまあ、そんなに興奮して観光客をカモにする連中にハッパをかけることもないのですが、あの光景に慣れてしまった私としては、ちょっとさみしい気もするわけです、はい。
声をかけられるとうるさく思い、時には大きな声で怒鳴ってしまったりするのですが、こうも声がかからなくなるとね・・・
そう感じるひとつの理由には、私自身がインドに溶け込んで来た、あるいはいいカモになりそうもないと見られ始めたことがあると思います。
また、この酷暑期はインドでは観光シーズンではないので、こんな時季にインドにやって来る連中にロクなやつはいないだろう、声をかけるだけソンだから昼寝でもしていた方がマシだねマシ、と思われているのかもしれません。
しかしデリーの街が静かになった最大にして本当の理由は、「クリーンアップ作戦」の徹底実施があるからでしょう。
いろいろな規制によって「秩序ある街づくり」といったものを目指すその内容に関しましては、私はあまり詳しく知らないのですが、知りうる限りで申しますと、違法駐車の徹底取締り、信号無視の徹底取締り、交差点物乞い行為の徹底取締り、路上うんこの徹底取締り・・・・
まあ最後の徹底取締りに関しましては私の推察の域を出ないのですが、デリーの街中にわりときれいな公衆トイレが設置され始めたのは事実です。
つまり行政当局は「いいかお前ら、こんなにいいトイレを作ったんだから、これからは路上でうんこをしてはいけないんだからね。もしまた路上でうんこしちゃったら罰金だよ、バッキン!」と言っているのだと推察しているのです。
さて、そんなサイレントワールド化しつつあるデリーの街を歩いておりましたら、久し振りに突然うしろから呼び止められました。
「ポリース!」
それはアメリカあたりの警察もの映画などのシーンで、犯人のアジトに踏み込んだ警官がバッジをかざしながら、「ポリース!」と叫ぶのによく似た感じでした。
私は一瞬身を硬くし、歩みを止めて振り返りました。
しかしそこに立っていたのは警官ではなく、ひとりの少年だったのです。
見れば少年は肩から箱をぶらさげて、手にはブラシを持っています。
そして私の足元を指差しながらこう言いました。
「ポリッシュ!」
あー、「ポリス」じゃなくて「ポリッシュ」なのね・・・
そうです、それは靴磨きの少年で私の靴を磨かせろと言ってるわけです。
しかし私の履いている靴はキャンバス地のウォーキングシューズで、しかもその両方の甲にかつてうんこを乗せられてしまったものなのです。
さらにそのうんこはこそぎ落としはしたものの、あとは風化に任せ一度も洗ったことがないという、それはもうインド人もびっくりの超ばっちい靴なのです。
悪いが少年よ、そんなわけでこの靴を磨くとそのブラシが穢れてしまうのだよ。私にはそんなことはさせられないんだよ。
と、せっかく声をかけてもらったのに、ご期待に応えられない私でした。
さてさて、それでは本当にデリーは変わったのでしょうか?
はたして本当に良い子が住んでる良い街になったのでしょうか?
私には信じられません。インド人の性格からして絶対にそんなことはないはずです。
それならどこに行けば、あのあざといインド人が本性むき出しでかかって来るのでしょうか?
私はあれこれ考えた末、ひとつの場所を思い出しました。
それは駅です。
ニューデリー・ステーションです。
私はかつてあのニューデリー駅で列車の切符1枚買うのに、インド人の繰り出す必殺技で毎回それをはばまれ、なんと切符入手までに1週間をかけ、ついにはその栄光を手に入れた不屈の精神を持つ男なのです。
そうだ! あそこだよ、あそこ。
ニューデリー駅にこそ真の姿があるはずだ!
さっそく私はニューデリー駅へと向かいました。
考えてみたらなにもわざわざいやな目に会いにいくこともないのですが、何度もインドに行ってるうちに体質が変わったというか、そういう仕打ちを受けることに快感を覚えるようになったというか、孤独を紛らすにはあのインド人との壮絶な怒鳴り合いが気分転換になっていいというか、まあはっきり言えばもの好きなんですね。
それではここからは「実録・ニューデリー駅におけるインド人の攻撃方法及びその対処と心構え」です。
これはかなりいい情報ですので、某旅行ガイドなどに投稿すれば、名前入りで掲載されインドの旅の先輩づらができ、さらには掲載された本がもらえること請け合いです。
それでは魔窟ニューデリー駅において、われわれが目指すゴールである外国人専用オフィスへ向かう形で、順を追ってご説明させて頂きます。
メインバザール、またはコンノートプレース方面からニューデリー駅に到着すると駅の表側に出ます。
駅は赤茶色の四角い大きな建物です。
駅の前にはタクシーやオートリキシャがたくさん停まっていますので、駅自体が分からないということはないでしょう。
サダルバザール方面から来ない限り、たいていの人は駅舎の右手からアプローチすることになります。
まず右手にかなりむき出しの公衆トイレを見ながら駅舎に近づきます。
正面には駅舎の右端にあたる、線路をまたぐ陸橋への階段が見えます。
そこが第一関門です。
その階段の下には男が立っていて「フォーリンオフィスはこの上だ」と言います。
もちろんその手に乗ってはいけません。
もしあなたがその階段を上って行くと、上には別の男が待ち構えていて、親切にもあなたを「フォーリン・ツーリスト・オフィス」なる旅行社へといざない、気が付いたときにはカシミールのボートハウスでのんびりとした休日を過ごしている幸運に恵まれます。もちろん料金は何百ドル、または千ドル以上もかかると思いますが。
さて、残念ながらカシミール観光コースに進まなかったみなさんは、その階段の前で左折し駅舎に沿って少し歩きます。
すると右手に切符売り場らしきものが見えてきます。
実はそこはインド人用の切符売り場(というか、普通の切符売り場)なのです。
そしてその切符売り場の入り口にも男が立っていてこう言います。
「ここは違う。ここはインド人専用なので外国人は別の窓口だ」
この言葉自体にはウソはないのですが、こう声をかけることによって、不慣れゆえに不安を抱える旅行者の心をキャッチします。
なにしろ本当のことを言っていますので、もしあなたがその男の言葉を疑ってその切符売り場に入り確かめたとしても大丈夫なのです。
だからといってそこでその男を信用して「じゃあ、外国人専用オフィスはどこですか?」などと聞いてはいけません。
そんなことを聞くとその男は「着いて来い」と言って歩き始め、あなたを「フォーリン・ツーリスト・オフィス」なる旅行社にいざないます。
そして以下同文です。もっとも今度の行き先はゴアだったかもしれませんが・・・
残念ながらゴア満喫コースにも進めなかったみなさんは、いよいよ駅の中央部のホールへと足を踏み入れます。
しかし実際にはそこはにはたくさんの人が座り込み、または寝転がり、もしくはお弁当を広げて食事を取り、といった具合にごった返していて、一瞬足を踏み入れるのがはばかられます。
そしてあなたがその時見せる一瞬の躊躇をやつらは見逃しません。
ほぉ~ら、来ました・・・
「フォーリン・オフィスは二階だ。この階段を上がれ」
たしかに旅行書などにも、ニューデリー駅の外国人専用オフィスは駅舎の二階にあると書いてあります。
それではその男の言う通りその階段を上がってみましょうか?
実はその階段は本来われわれの目指す「外国人専用オフィス」の正面に出る階段ではないのです。
階段の上には別の男が待ち構え・・・以下同文。ただし行き先はバラナシあたりかもしれません。
バラナシ巡礼コースからも漏れてしまった不幸な方々は、とにかくしつこく付きまとう「違う!そっちじゃない!」の声を無視し、床に居並ぶインド人旅行者を踏まないように注意しながらも、ひらりひらりと軽いステップで先へと進みます。
そしてようやく目指す「本当の階段」が見えて来ました。
それは先ほどの男が指差した階段とは反対側、ホームに向かって左手にある階段です。
さあ、ゴールはもう目の前です。
勝利への階段を上り始めましょう!
がっ!
実はここから書くことが今回私が初めて体験したことなのです。
今までの話しのほとんどは以前からのオーソドックスな方法で、それはただそいつらを無視さえしていれば済んだことなのです。
それは昨日でした、今までご説明してきたコースを辿り、声をかけてくるやからを無視し、軽い足取りでその階段まで差し掛かった時でした。
いきなり私の二の腕が強い力でつかまれたのです。
かなり強い力でしたので、心の準備がないと一瞬ひるむほどです。
そしてやはり強い口調で「そっちじゃない!」という声が聞こえて来ました。
振り向くとまたしても別の男が立っており、もう一度私の二の腕を強く握りました。
その強行手段はかなりの精神的圧迫を与えます。
特に不慣れな旅行者にはかなりのダメージを与え、戦闘意欲を削ぐほどに感じられました。
そして旅行者が呆然としたところをすばやく「フォーリン・ツーリスト・・・以下同文です。(行き先はお望みのまま)
実は私は最近そういうやり方があるらしいというのを事前に聞いていたので、階段に差し掛かるときにかなり心の準備をしていたのです。
しかしそれでもその行為は私をエキサイトさせるには充分でした。
私はつい激昂しそいつを睨み付けると、「さわるんじゃねえ!」と叫ぶとそいつの手を振りほどきました。
その男が一瞬身を固めた隙に私はふたたび階段を上り始めました。
そして踊り場の手前で立ち止まり振り向きますと、先に私に付きまとっていた男と一緒にホールへと帰っていく男のうしろ姿が見えました。
やはりみんなグルになって役割分担をしているようです。
二階にはちゃんと「外国人専用オフィス」がありました。
かなりくたびれた感のオフィスですが、そこが紛れもなく本物のゴールである切符売り場です。
その証拠には、オフィスの前には「どうぞこちらです。ようこそようこそ」とやたらに愛想のいい男などおらず、用のある人は勝手に入れば的なインド特有の雰囲気があるからです。
さあ、これであなたもニューデリー駅で列車の切符が買えます。
あとは階段を上るときに腕をつかまれてもいいように、腕に油か納豆を塗っておくことをお奨め致します。
慣れるとインドは結構いいところです。
やっぱり悪い奴の方が少ないんですから。
ただし旅行者の前に現れる人間には、残念ながら悪い奴も多いということです。
それでは楽しい列車の旅を!
*駅にたむろするやつらはグループですので、わざわざ試しに行ったり、彼らを挑発するような行為は慎みましょう。
それから在デリー日本大使館は、こういう情報こそ広く伝えるべきであると思います。
【本題終了】
今このネットカフェは停電になっております。
パソコンの電源は別系統らしく使えるのですが、電灯とともに唯一の涼をとる装置である天井の扇風機が止まってしまい、顔から汗が噴出して来ました。
あっ、今ようやく復旧しました。あー、涼しい、涼しい。
そんなネットカフェからのメルマガも、あともう1回か2回です。
毎日毎日で読む方も大変だったと思います。
申し訳ありませんがもう少々のお付き合いをお願い致します。