まずは前回の記事の訂正をさせて頂きます。
前回泊まったゲストハウスのことを「4階建て」と書いたのですが、そのあと当時のメモを見てみましたら5階建てだったということが判明致しましたのでここに訂正させて頂きます。
えっ?そんなのどうだっていい?
いえいえ、そうはいかないのです。
なにしろそのゲストハウスにはエレベーターというものが付いておりませんでしたので、自分の部屋に上がるには毎回階段を昇らなきゃいけないのです。つまり部屋が暑いだけでなく、階段の昇り降りで体もかなり熱くなってしまうということをお伝えし、いかにその滞在が大変なものであったかということをみなさんに知って頂き、ひいては同情などして頂き、それが無理ならせめて嘲笑くらいして頂こうかということなのでございます。
さて、ゲストハウスの部屋がとにかく暑くとても寝られたものではなかったというお話を前回したわけですが、実際にはウダイプールには夜行列車で朝到着し、そのままゲストハウスに入ってしまいましたので、今の時間は午前10時頃。つまり夜の話は先走ってしまっただけで、本当はまだ一日たっぷりあるのです。
そこでまずはもう少し近くでレイク・パレスを見てやろうじゃないのと、さっそく街へと繰り出したのでありました。
ウダイプールの街の地図を見てみますと、まず目に入って来るのはレイク・パレスがあるピチョーラー湖です。しかしレイク・パレスのまん前には、かつてのマハラジャの居城であるシティ・パレスが立ちはだかっているようです。シティ・パレスは今では博物館のようになっていて一般公開されていますので、その中に入れば当然レイク・パレスも正面から見ることができるはずなのですが、なんせ夜行列車の旅で少々疲れておりまして、そんな体調でシティ・パレスに入ったとしても突然睡魔が襲ってきてろくに見学せずにその辺のベンチで寝てしまうなんてことも充分考えられるわけです。しかも入場料はカメラ持ち込み料も含めて250ルピー(約500円)もかかるのです。なので、まあまだ明日も一日あるのだからと、今日はシティ・パレスを避けた場所からこっそりレイク・パレスを覗き見てしまおうと思ったのであります。
まず向かったのはシティ・パレスそのものでした。
しかし事前に地図で確認したように、シティ・パレスはその高い塀でもって行く手を阻み、なんとしてもレイク・パレスの正面には回り込ませないようです。
そんなわけでシティ・パレスの塀を避けるようにして、いくつかの路地を折れ曲がりながら歩いて行くと、ようやく道は湖に突き当たりました。どうやらその場所がシティ・パレスの右端(湖に向かって)のようで、左側には高い塀がそびえています。
そしてその塀の角にある見張り台にはガードマンが立っていて、なんぴとたりとも城への侵入は許さん、入りたければ正面に回って250ルピー払って入るがよい、というような感じでこちらを睨んでいます。
まったくう、入場料を払いたくないからここに来たというのに、これ以上はレイク・パレスに近づけないのかあ。しかもレイク・パレスはガードマンの背後辺りにあり、これじゃあ宿からの方がよっぽどよく見えるじゃあないですかあ。
まっ、見えないものはしかたありません。それじゃあ今度はシティ・パレスの左側に行ってみましょうかねえ。
そんなわけで私は元来た道を引き返し、さらにシティ・パレスを迂回するような形でぐるっと歩いてみることにしました。
しかしシティ・パレスは想像以上に大きく、さらにう回路はシティ・パレスの外周よりさらに大きく遠く、日中の強い日差しを受けて何十分も歩くのはなかなか大変でした。
それでもやがて道が右に大きくカーブし、おっ、これでようやくシティ・パレスの左側に回り込んだなと思ったのですが、なんだか道は上り坂になってしまい、観光客はおろか一般市民の姿すら見かけなくなってしまいました。
いやあ、これは道を間違えてしまったのかもしれないぞ。
だいたい湖に向かっているなら道は下りになるはずだしなあ・・・
ここに至ってだいぶ体力を消耗し喉も渇いていた私は、急に弱気になり引き返すことにしました。
しかしこれでレイク・パレスを間近から見るということをあきらめたわけではありません。左側がダメならもう一度右側から攻めてやろう、ということでまたしても来た道をせっせと戻り、途中で水分補給と腹ごしらえもして、ついにはピチョーラー湖の右端に架かる橋を渡ってレイク・パレスの右腹正面(?)に回り込むことに成功したのであります。
この時期は長い乾季の終わりに近い頃であり、湖の水はかなり少なめでした。
そして私がたどり着いた湖岸からは、むき出しになった湖底が細い土手の道のようにレイク・パレスの船着場にまで達しており、♪海が割れるのよぉ~、道ができるのよぉ~、みたいな感じでボートになんか乗らなくても歩いて行けるようでした。
ああ、苦労してここまで来てよかった。
海の神様、カムサハムニ~ダァ~なのだ。
さっそくレイク・パレスをもっと間近で見ようと、その湖底街道に降りようとしたのですが、なんとその途中にはレイク・パレス側が雇ったのであろうガードマンがちゃんと配置されておりまして、私の動きを見透かしたようにすっくと立ち上がり、こちらに向かって牽制のポーズを取るのです。
ちぇっ、なんだよ。そりゃあレイク・パレスはお前んとこのものかもしれないけど、この海の街道は神様がわれわれ人間に等しく分け与えたもうたものなのだぞ。カムサハムニダ!
それをその途中にみすぼらしい柵なんか作りやがって・・・向こうの湖底に塀ができたってねえ、へえ~、じゃねーよ。
しかしよーく考えてみたら、レイク・パレスの建つこのピチョーラー湖もマハラジャが造らせた人造湖なわけで、マハラジャ側が「入っちゃいかん」と言うなら、こちらは文句を言えないのかもしれません。
結局私はそれ以上レイク・パレスに近づくことはできませんでした。
そしてこのあくまでも貧乏人を寄せ付けない頑ななまでにタカビーな姿勢に反感を抱き、一生おまえんとこなんか泊まってやるものか! 泊まれるものなら泊まってみろ! いや、それは向こうのセリフだ、泊まらせられるものなら招待してみろ!なろー! とイキドオリ、その場を後にしたのでありました。
つづく