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2010年6月18日:メルマガ版「2010年インドの旅」第2回

         
  • 公開日:2022年8月19日
  • 最終更新日:2022年8月19日

列車にしろバスにしろ、インドで公共交通機関を使って旅をする際、いかに快適に過ごせるかどうかは車両の設備の優劣より、周りの乗客がどんな人でどのような付き合いができるかが大きいと思います。

たとえば話し好きの人だったりその逆に完全無視の人だったり、やたらに携帯電話を掛けまくる人(これがインドにはヒジョーに多いのです)だったり食べ物をどんどんくれる人だったり・・・

とにかくどんなパターンの人でも、その人がこちらをどう思っているかということが重要になろうかと思います。たとえ一言も言葉を交わさない人でも、少なくともこちらに対して敵意だけは持っていないなということが確信できれば、もうそれだけで安心してシートやベッドにゆったりと身を任せられるというわけです。
そしてそれは、インド人の側からしても同じことだと思うのです。この外国人はいったいどんなやつなんだろうかと、もしかしたらこちらよりもっと警戒しているかもしれないのです。

なので列車やバスに乗ったら、まずこちらから周りの人たちににこやかに挨拶するのがいいのです。なにしろこちらはよその国にお邪魔しているわけですから、そこはやはり地元の人たちに可愛がられなければいけないと思うわけです。

というわけで、私もご近所さんににこやかに挨拶しておこうと思い、辺りをざっと見回してみましたら、なぜか若い女性が多いのです。
もちろん若い女性ばかりではなくおっさんおばちゃんもいるのですが、おそらくその人たちはみな若い女性の家族(あくまでも「若い女性」というのを中心に見ていますが)であろうと思われるわけです。
こういう時は注意が必要です。なにしろそんな若い女性とその同行家族に異国人男性の私がにこやかに「ハロー」とか「ナマステ!」とか言ったら、「こいつうちの娘に色目を遣いやがって。お前に『おとうさん』などと呼ばれる筋合いはない!」と怒られてしまうかもしれません。

なので私はトマトスープを飲み終わったら、さっさと自分のベッドの用意をしてカーテンを閉めてしまいました。あとはカーテンのスキマから若い女性を盗み見ればいいのです。いっひっひ・・・

さて、長い夜行列車での過ごし方なのですが、これはもう持参した品で各自楽しむしかありません。かといってウイスキーなどは匂いがカーテンの隙間から漏れ出てしまい、その匂いでそこの若い女性が気づいて盗み見がバレてしまうかもしれませんので要注意です。
そこで今回私はウォークマンを持って来ました。いえ、カセットのじゃないですよ。それだとカセットを何本も持って行かなきゃならないじゃありませんか。そうじゃなくて最新式の小さいやつに昭和歌謡や落語を入れて持って来たのです。まっ、中身はカセットの時代と変わらないわけですけどね。

で、ですよ、これが実によかったのですよ。
なにがよかったって、こうしたヘッドフォンステレオは暇つぶしだけでなく、周りの騒音も遮断してくれますので、これでこの先何度となく助けられることになるのです。
なにしろインド人は宵っ張りが多いのか、結構遅い時間まで大きな声で話をしていたりしますし、また夜中に途中駅から乗り込んで来る人が、大きな音をたてながら荷物を引っ張って来たり座席の下に押し込んだりとうるさいのです。
そんな時ヘッドフォン(実際はイヤホン型のやつですが)で耳をふさいでいればあまり気になりませんし、それどころかブルーライトヨコハマがやさしく眠りに誘ってくれたりするのであります。

♪まちのあかりが、とてもきれいねヨ・コ・ハ・マ・・・

と、気がつけばもう朝のようでした。

私は上段ベッドだったので窓から外を確認することができません。そこでトイレに行ったついでに乗降用のドアを開け放ち、体を少し外に突き出してラジャスタンの風を全身に浴びました。あっ、インドの列車のドアは、簡単なかんぬきさえ外せばいつでも誰でも開けることができるとても便利で恐ろしいものなのです。

列車は定刻より30分遅れでウダイプール・シティ駅に到着しました。

ホームに降りて他の乗客の姿などを見てみますと、観光客らしき人たちが目に付きます。

さて、駅に着いてまずやることといったら体重測定です。
あの電飾きらびやかな体重計をさがしてホームを歩き、ようやく改札を出たところにその雄姿を発見致しました。
さっそく計測台に乗り、1ルピーコインを投入したのですが・・・

あれれ?動かないぞ。

そこで私はもう一度コインを投入しました。しかも今度は2ルピーコインを投入ました。なにしろこの自動体重計には「1ルピーもしくは2ルピーコインを投入」と書いてあるのです。つまりどちらでもいいということなのです。
ところが通常の2倍、いえ、さっきの1ルピーも合わせれば3倍ものお金を払ったというのに体重計はピクリとも動こうとはせず、ただこけおどしの電飾だけが私の顔のすぐ前でビカビカ光っているだけでした。

ああ!いまいましい!

私は腹いせに体重計のミゾオチと思われる辺りをコブシで叩き、オートリキシャ乗り場へと向かったのであります。

さあ、これから今夜の宿を探さなければなりません。
まずはオートリキシャで街の中心(と思われる)ジャグディシュ・テンプルまで行きました。
ここでまず、事前に知人から情報を得ていたゲストハウスへと行ってみたのですが、あいにく部屋はいっぱいでした。
そこで適当に見当をつけて歩き出し、狭い路地を入ったところで見つけたゲストハウスに落ち着くことになりました。

そのゲストハウスは4階建てのなかなか立派な建物で、部屋は最上階でインド風出窓まで付いており、さらにウダイプール最大の名所である湖の中に建つレイクパレス・ホテルの壮麗な姿も、廊下の窓からではありますがギリギリ見えるという好立地にもかかわらず、一泊400ルピー(約800円)とお安かったのです。

しかし、お安いのにはそれなりのわけがありまして・・・

いくら砂漠の広がるラジャスタンとはいえ、まだ3月も中盤から終盤に差し掛かったばかりの時期に、エアコンはないけど大きな出窓を開け放ち、天井の扇風機をぶんぶん回しているにもかかわらず、夜中でも室温が34℃以下には絶対に下がらないのです。加えてベッドのマットがおそろしく温まっていて、同じ姿勢で寝ていると、マットにくっついている部分から汗が吹き出し、それがマットにじわっと滲みて行くようでとってもいや~な気分になるのです。

それでもエアコンなどなかった子ども時代の夏休みのことや、さらには八甲田山で寒さに震える北大路欣也などを思い浮かべ、必死に暑さに耐えていたのですが、ついに耐えきれなくなり、水シャワーを浴びるとともに、バケツ一杯の水を大理石の床に敷いてあるカーペットにぶちまけ、気化熱でもってこの熱気をなんとかしようと試みたのでありますが、事態は一向に改善する兆しはなく、それでもこの奮闘で少し体が疲れて、やがてささやかな眠りに落ちて行ったのでありました。

つづく

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