暦の上では・・・
7月も今日で終わるというのに・・・なかなか夏らしくなりません。
東京では雨模様の日が続き、朝晩など肌寒く感じることさえありました。
ようやく今日久しぶりに強い日差しが戻って来て、あらためて「夏」だということを思い出しました。
さて、子ども達の夏休みも7月の部を終え、いよいよ8月の部に突入します。
私の小学生時代には夏休み中に2回の全校登校日があり、その第1回目が8月1日だったと記憶しております。
私にはこの「全校登校日」というものの意義がよく分かりませんでした。
なぜせっかくの長期連休を寸断するのでしょうか?
本来なら40日にも及ぶ「連休」のはずなのに(すみません、私の小学校の日程でお話しさせて頂いております)、それを10日や15日で区切ってしまうのです。
ヤンキースに移籍した松井選手だって、自らの連続試合出場記録をひとつの心の拠り所にしてがんばっているのです。何事も「続ける」ということが大切なのです。「継続は力なり」と言うではありませんか。続けて休ませて欲しいものです。
おそらく先生は生徒を信頼していないのです。きっと「子どもなんてほったらかしておくと、どこまでもだらしなくなる」なんて思っているのです。だから夏休みの間も学校に呼び出して「引き締め」を行うのでしょう。
さすが先生です。ご名答!
最初の3日くらいは張り切ってやっていたラジオ体操も、だんだん夜更かしをするようになるにつれ朝起きれなくなり、ついにやらなくなってしまいます。
「毎朝6時に起きてラジオ体操をやり、涼しいうちにその日の分の宿題をやる」なんて計画は早くも崩れ、起きるのは早くて9時過ぎです。
それだって本当はもっと寝ていたいのに、夏の太陽は朝からやる気満々で容赦なく室温を上げて行き、とても暑くて寝ていられないから起きるのです。
しかたなく起き出して顔も洗わず茶の間へ行きます。ご飯に冷めた味噌汁をぶっかけて、キュウリのキューちゃんもしくはカッパ天国をおかずにして、テレビを見ながらもそもそ食べるのですが、すぐに目は画面に釘付けになってしまいます。
それは毎年夏休みになると始まるすてきなテレビの企画「夏休みまんが祭り」です。
ネーミングは「祭り」と付いていて一見豪華絢爛なフェスティバルのようにも感じますが、内容は過去に放映されたまんが(現・アニメーション)の再放送です。
それでも1度に3本くらい連続してまんがが見られることは、当時の子どもにとってまさしく「祭り」以外のなにものでもありませんでした。
これが始まってしまいますとテレビの前から動けなくなります。もう午前中の計画はそれで決まりです。宿題どころではありません。
テレビ画面に映し出される少年忍者フジ丸に、狼少年ケンに、ぴゅんぴゅん丸に感情移入しながら見ていますと、あっというまにお昼になってしまいます。こうして毎年夏休みを怠惰に過ごしていってしまうのです。
ところでこの「まんが祭り」の番組の終わりには「また見てね!」と書かれたボードが映ります。そこにはたいてい今まで見ていたまんがの主人公と思われる似顔絵らしきものが描かれているのですが、それがおっそろしくヘタなのです。
あれはいったいどんな人が描いていたのでしょうか?
なにしろ本当にヘタなので、せっかく今まで感情移入して見ていた我らのヒーローが侮辱されているような気分になり、すごく心を傷つけられました。それとも著作権を考慮して微妙に違えて描くという高等テクニックだったのでしょうか?
とにかく私はあの顔のまがった狼少年ケンらしき絵を見るたびに悲しくなり、さらには、画面に映った顔のまがった狼少年ケンらしき絵を指差して「ほら、この絵とうちゃんが描いたんだぞ」と自分の子どもに自慢している作者のおやじを想像するともっともっと深い悲しみに沈んでいくのでした。
そういった悲しみというのはわりと身近にもころがっているもので、たとえば「ドラえもん」に良く似てはいるけど全然違う絵の付いた湯飲みとかがあります。
この話は事実なので実名は勘弁してあげますが、私の甥っ子が使っていた湯飲みがそうだったのです。
彼は茶どころ静岡県に住んでいましたので、3歳くらいでもお茶を良く飲んでいました。
私が遊びに言ったときにもお気に入りの湯飲みでお茶を飲んでおりました。
私はその湯飲みを何気なく見たのですが、そこには頭に「双葉」を生やした何人かの人が空を飛んでいるという奇妙な絵が描かれていました。
「なんだろう?」と良く見ると、先頭に飛んでいるのは人ではなさそうです。頭の丸いダルマのような生物です。ちょっと顔が不気味です。その後を飛んでいるのは眼鏡をかけた少年で、さらにその後に女の子が続いています。
甥っ子がお気に入りにしている湯飲みなので、おそらく何かテレビでやっている番組の登場人物なのだろうと見当をつけて聞いてみました。
「ねえ、これなあに?」
「だぁーもん!」
私は耳を疑いました。
だって甥っ子の言う「だぁーもん」とは「ドラえもん」のことだったからです。
私は神に誓って言います。「あれは絶対ドラえもんじゃありません!」
類似品は当然著作権や商標権の侵害になりますのでいけないことなのですが、中には笑ってしまうものもあります。
「だぁーもん」の湯飲みなんかはそのいい例で、たしかに「ドラえもん」を元に描かれたのだと思うのですが、出来上がりはまったく異質な世界をかもし出していて、本物を良く知っていればまず間違えないようなものでした。
言ってみれば「ドラえもん」と「ドフえもん」の違いというレベルではなく、「ドラえもん」と「モールでできた不気味なサンタ」くらい違うのです。
それくらい違えばあまり罪深くないのではないでしょうか。
*このメルマガの後半へ続く
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*このメルマガの前半からの続きです。
さて、夏休みのお楽しみはなにも「まんが祭り」だけではありません。
せっかくの夏なんですから家の中でテレビばかり見ていないで、外に飛び出すべきなのです。
そんなわけで外出して映画を見に行くことにしました。
外に飛び出したままでは暑いので、冷房の効いた映画館に入ろうというのです。
いえ、今の話ではありません。これは中学3年の夏休みの話です。
私が中学3年の時の映画の話題といったらオカルト映画がでした。
なにしろその前年くらいからノストラダムスの大予言とかユリ・ゲラーが流行り出し、世はまさにオカルトブームだったのです。
そしてその夏、ついにあの「エクソシスト」が日本に上陸したのです。
なんだかこうして「上陸」なんて書くと、いかにも恐ろしい感じがします。主演のリンダ・ブレアがざぶざぶと波を蹴立てて東京湾に上陸する光景を想像してしまいます。
ついでなのですが、この「上陸」という言葉は、四面を海に囲まれた島国日本ならではの表現なのでしょうか?
陸続きの国の場合はなんて言うのでしょうか?
カナダなどでは「ついにあのエクソシストが越境しました!」などと言うのでしょうか?
メキシコなどでは「あのエクソシストがリオ・グランデを渡ってやって来た!」などと言うのでしょうか?
さて話をエクソシストに戻しましょう。
その年の5月くらいだったでしょうか、友達の間でエクソシストの話題が出て来ました。
その当時エクソシストの情報はあまり多く流れておらず、みんなは乏しい情報を持ち寄っては話をするのですが、情報の量の問題以前にみんな「エクソシスト」というタイトルを覚えられないのです。そこで子どもが思いつきそうな「え~、クソ、しすと!」と、細かいパートに分けて覚えることにしました。この方法は「サルモネラ菌」を「猿も、寝らあ~」と覚えるのと同じです。
エクソシストの配給会社は故意に情報を少なめに流しているようで、特に映画の画像に関しては門外不出で雑誌などにも発表していませんでした。
みんなの乏しい情報を総合すると、主役のリーガンは口から緑色の液体を吐き出し、首がふくろうのように1回転してしまい、ベッドの上ですさまじいスピードで腹筋運動をしてしまうようです。なんでもアメリカでは失神者が続出し、上映禁止にする映画館すら出てきているということでした。まったくアメリカ人はいつでも大げさです。
私たちは夏休みの初日にエクソシストを見に行きました。
前日には全員がウチに泊まり始発電車で行くという力の入りようでした。
そのお陰で私たちは、自由にどの位置の座席でも確保できるくらいの好ポジションに並ぶことができたのです。
ところがです、友人の一人が「スクリーンに対して右寄りの席を確保しよう」と言い出しました。
当然みんなからは反発の声が上がりましたが、そいつは訳知り顔でこんなことを言うのです。
「字幕はスクリーン右端に出るから、右寄りの席から見たほうが字幕と画面が同時に見えていいんだ」
う~ん、たしかにそうかもしれません。そんな気がして来ました。
開場とと同時に場内になだれ込んだ私たちは、他の観客が中央の席を確保するのをばかにした目で見ながら「通は右寄りの席なんだよね」と、ゆうゆうと全員の席を確保したのです。
会場が暗くなり、いよいよエクソシストの上映開始です。
映画は砂漠の発掘場面から始まりました。
そして砂嵐のシーンで全体的に黄色いスクリーンに字幕が出ました。
でもそれは画面右側ではなく、画面の下だったのです。
読みづらくってしかたありません。
そんな逆境にもかかわらず映画は期待通り怖く、それからしばらくの間は夜トイレに行くのが怖くなってしまい、おしっこを我慢することが多くなりました。
それが原因だったのかその後すぐにひどい膀胱炎の症状に陥った私は、治療のために中学3年の夏休みを半分つぶしてしまったのです。
まったくたたりとは恐ろしいものです。
みなさんも気をつけて下さい。
それでは今週はこの辺で失礼致します。
また来週の木曜日、このメルマガでお会いしましょう!