ここはマドライのとあるジュース屋さんです。私はいつものお決まりのオレンジジュース(30ルピー=約60円)を注文しました。で、ジュースを飲みながらこの小さなお店に所狭しと並ぶおいしそうなフルーツを眺めておりましたところ、ふとカウンターの上に積まれたフルーツ(もしかしたら野菜かも)に目が留まりました。
それはプチトマトほどの大きさで、少し透明感のある薄緑色をしており、暑い気候の中にあってそこだけがなんとも涼しげに見えたのです。まあその日はそれで終わってしまったのですが、夜寝る時もそれのことが気になって、翌日また同じジュース屋さんに行って聞いてみました。
ジュース屋のおっさんは、「それは『アムラ』というものだ」と答えるや、そのひとつをさっと取り上げてナイフで少し果肉を削ぎ、私に手渡しました。
私はそいつを口に入れ、奥歯で噛み砕いてみましたところ・・・うっ、渋っ!
それは柿の渋味とまではいかないものの、口の中全体が少し突っ張る感じがして、とても食べられたものではないのです。
私はちょっと「うえっ」という顔をしながら、おっさんの顔をチラッと窺い見たのですが、おっさんは真剣な表情でこちらを凝視しています。
まあ食べ慣れぬ物に挑戦する外国人の表情に注目するというのはよくあることですが、こういうケース(渋いとか辛いとかそういうものを食べさせた時など)では、外国人が「うえっ」という表情をするとみな一様に笑うものなのです。
そしたらこちらも「コレハダメダ・・・」などという表情を作り、口の中のものを地面に吐き出してしまえるのですが、このジュース屋のおっさんは、あくまでも「どうだ?ん?どうなんだ?」と真面目にその結果を知りたそうにしているので、こちらもそう簡単にギブアップできない雰囲気だったのです。
そこで仕方なくそのまま我慢してもぐもぐしておりましたら・・・
ん? これは意外にいけるかも。
ということで、思い切ってアムラのジュースを飲んでみることにしました。(これも30ルピー=約60円でした)当然ジュースにしても独特の渋味が効いていて口の中が突っ張り、ついでに体も緊張して突っ張ってしまうのですが、飲み進めるうちにそれにも慣れ、むしろ他のジュースのような甘みがないために飲了感(そんな言葉あるのか?)が実に爽やかなのです。
そう考えるとこのアムラは、その見た目の清涼感がそのまま味になったようなフルーツ(野菜かも)で、暑い暑いインドの夏には持って来いの食材なのかもしれません。
でもその後インドを北上して行くと、ジュース屋の店先にアムラの姿を見かけなくなりましたので、もしかしたら南インド(の一部)だけの限定商品なのでしょうか。
これを書いていたらまたアムラのジュースが飲みたくなってしまいました。
あの渋味は結構くせになります。
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