〔当時のメモより〕 *金額に関しては当時Rs.1が約2.7円、3倍にして1割引けば簡単に計算できます。 食堂を出るとシューマッハがいた。 田んぼの写真が撮りたいとシューマッハに言ったところ、この近くにはなく、アレッピまで行かねばならないとのことだった。 |
【以下の解説は2009年12月17日のものです】
青年と食事をして外に出ると、そこにはあのシューマッハがニコニコしながら立っていました。
いやあ、すごい偶然じゃないかあ・・・って、おそらくシューマッハは私たちがここに入るのを見ていて、出てくるのをじっと待っていたのでしょう。
私は青年とそこで別れ、その日一日シューマッハのマシンを借り切ることにしました。
まずは「観光用の景色じゃなくて、ごく普通の人の生活風景が見たい」とリクエストをして、そこらあたりの路地を流してもらったのですが、実際に行ってみると、部屋の中まで見通せてしまいそうな小さな家々の軒先をかすめ、その生活ぶりを眺めるなどということは、実に失礼な行為であるということに遅まきながら気付き、早々にそこを退散することにしました。そこで私は、コーチンにつく前に列車の車窓から見たような田園風景を見てみたいと思い、それをシューマッハに告げました。
しかしシューマッハは、そういう風景はこの近くにないと言います。そしてマシンの後部座席に置いてあったガイドブックを取り出してページを開き、そこを指し示しながら「ここまで行けばそういう風景がある」と言いました。
それはアレッピという場所で、バックウォーターと呼ばれる美しい水郷地帯で有名なところです。確かに水郷地帯なら田んぼもあるでしょう。
しかしアレッピはここから60km以上離れており、シューマッハのオンボロマシンじゃ何時間かかるかわかりません。それに今は雨が降ってはいないものの、またいつ雨が降り出すかわからないのです。なにしろ雨季の真っただ中なのです。
でも、行けるところまで行ってみるのもいいんじゃないかな。
それに他に見たいところややりたいことがあるわけでもないんだしねえ・・・
私は意を決してシューマッハに、「アレッピ目指して出発だ!」と、高らかに宣言したのでありました。
つづく
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