南インド、ケララ州のリゾート地コヴァラム・ビーチには、シーズンともなると多くの外国人観光客が訪れます。中でもライトハウス・ビーチと呼ばれるエリアは、緩やかに湾曲する白い砂浜に沿って歩道が設けられ、びっしりと小さな店が軒を並べています。そうした店は観光客相手の商売なので、お土産屋の類も多いのですが、海辺ということでシーフードを食べさせるレストランもたくさんあります。ところがそんなビーチリゾートを抱えるケララ州にも、禁酒法の魔の手が忍び寄っているのです。実にけしからんことじゃありませんか。
何度も言わせてもらいますが、酒乱を憎んで酒を憎まず! なのです。
しかしまあ実際問題として、お酒の提供を完全になくしてしまうということは、観光産業に少なからぬ損失をもたらすのではないでしょうか。
そんなこの地の観光産業に携わる人々の生活が気にかかり、私はコヴァラム・ビーチに到着するやいなや実地調査に赴きました。
特にこの日は日曜日で州を挙げてのドライデーです。はたしてどのようなことになるのだろうかと思っていたら、ホテルを出るとすぐに店の呼び込みのあんちゃんが「シーフードのランチはどう?」と声をかけて来ました。
そこで私は「あれがなきゃなあ・・・」と、暗にアルコールの提供を求めてみました。ちなみにこういう時は右手の親指を立て、残りの指を軽く結ぶといういわゆる「グー!」の形を作り、親指の先を口に当てて「何か」を飲むしぐさをするのです。こうすれば「酒が飲みたい」などというはしたない言葉を口にせず、相手にこちらの気持ちを伝えることができるのです。
ただしこの方法だと、遠くから見ただけでもその仕草から「酒が飲みたい」ということがわかってしまうのが難点ではあります。そんな私の指しゃぶりを見て、呼び込みのあんちゃんはこともなげに「大丈夫(ノープロブレム)」と答えました。
あまりにあっけない答えにこちらが戸惑ってしまうほどで、私はもう一度「だって今日はドライデーだろ?」と聞いてみたのですが、あんちゃんは「まあそこはあれだよ、あれ」みたいなことをごにゅごにょと言うのでありました。
とにかく百聞は一見にしかずと店に入ることにしました。
そしたら、出てきましたよ、マグカップに入ってはいるものの、まぎれもないあれが・・・そもそもこういうレストランでもアルコールの販売免許を持っていないところが多く、以前からビールなどはこうしてこっそり提供して来たのでありました。
なので考えようによっては、いまさらドライデーも禁酒法もあまり関係ないのかもしれません。
しかしそれでも「悪法も法なり」です。そこはやはり法に従わなければならないわけで、このマグカップの液体は断じてビールなどではないのです。
ではこれは何かと言えば・・・ポップ・ジュース というものなのです。
ちなみに私が泊まっているホテルのプールサイド・レストランでは、この日酒の提供は一切ありませんでした。
しかし私にはコーチンのタクシードライバーに買っておいてもらったビールがあるので、この日の夕食はルームサービスを取り、そのプールサイドのレストランを眺めながら部屋食、部屋飲みを楽しむことにしました。
ドライデーも禁酒法も各家庭、各客室には手を出せないのです。なお、この情報は2014年11月時点のものです。
あれから禁酒法とその施行・罰則が厳しくなった可能性もないとは言えませんので、この記事を読んで安心してコヴァラム・ビーチで飲酒をし、市中引き回しの上百叩きになっても、私は一切責任を負わないのであります。
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