空港からフォート・コーチンまでの道のりは想像以上に遠かった・・・
フォート・コーチンという地区は半島の先っぽにあるのですが、その半島は陸から海に向かって突き出ているというものではなく、陸地とほぼ平行に横たわっていて、ちょうど十手(時代劇で岡っ引きの持ってるあれですね)のようなカギの手の形でもって南の端が陸地とつながっているというものです。しかし陸地側の中心地であるエルナクラム地区は、ちょうどその半島の先っぽと同じくらいの位置にあり、通常人の行き来は小さなフェリーで行われ、車の行き来はエルナクラムの南端あたりにある橋で行われているのです。(陸地のつながりは橋よりさらに南に下ったところです)
で、空港の位置はと言えばエルナクラムの北東にあり、従ってそこからタクシーでフォート・コーチンに向かうには、エルナクラムを通り抜けた先にある橋を渡り、半島に入ってから北上するということになるのかと思ったのですが・・・
空港を出たタクシーはしばらく幹線道路を進みます。
道路のすぐ横ではメトロ(インドでは地下鉄というより高架を走ることが多いです)の橋脚の工事が行われていました。おそらく近い将来空港と市中心部との往来が容易になることでしょう。
タクシーはそのまま幹線道路をエルナクラムに向かって進むのだろうと思っていたら、なんだかちょっと様子がおかしい・・・右に曲がった・・・おや、これは海の方に向かっているなと思ったら、やがてタクシーは橋を渡り始めました。
私の記憶では、フォート・コーチンにつながる橋は前述のエルナクラムの南にあるものしかないはずなのですが、新しい橋でもできたのでしょうか・・・いや、この橋はそんなに新しくなさそうだぞ・・・おかしい・・・
まあ外国人観光客が「フォート・コーチン」と言ったら、チャイニーズ・フィッシングネットのあるあのフォート・コーチンしかないはずで、まさか他の場所と勘違いしているわけでもなかろうとは思ったのですが、それでもちょっと心配になりかけたところ、いきなり車が止まりました。時計を見るとちょうど空港を出て一時間経っていました。
なんでこんなところで止めるのだろう?と不思議に思い傍らを見ると、そこにはたくさんの人が集まりなにやらお祭りが始まるような雰囲気です。ドライバーに「何?これ?」と聞くと、ドライバーは「ATMの新規開店だ」とぶっきらぼうに言いました。
なるほど、きっとこのドライバーは開店祝いで配られるお菓子かなにかを目当てにして、ここに車を止めてそれが始まるのを待とうというのだな。実際そこにいるじいさんなどは、すでになにかもらったようです。しかしドライバーは一向に車から降りようとはせず、それでいて車を走らせようともしません。
そんな不思議な状態で待つこと5分、ようやくドライバーは車を少し前進させました。
するとこのタクシーの前にも何台か車が止まっているのが見えました。道がカーブしていたことと、前の車との間隔が空いていたこと、そしてなによりまさかこんなところで渋滞があるわけがないという先入観から今まで気づかなかったのですが、どうやらこれは何らかの原因で渋滞が起こっているようです。(そりゃそうか)
お菓子を欲しがってるのだろうなどと勝手に勘ぐってしまいすまなかった、ドライバーさん。
タクシーが止まった理由が渋滞とわかったので、私は外に出て渋滞の原因を探りに行きました。すると、なんと渋滞の先は道がなかった・・・と言うか、そこはフェリー乗り場だったのです。
なるほど、ここはフォートコーチンのすぐ先に浮かぶ島、ヴァイピーン島なのです。
つまりタクシーはフォート・コーチンまで陸路で行こうとせず、まずフォート・コーチンの向かいにあるこのヴァイピーン島に橋で渡り、ここからフェリーで向こう岸に渡ろうってえ寸法なのです。
しかしこれには私、興奮しましたね。
なにしろ私は、フォート・コーチンにはぜひ海から上がりたいと思っていたのです。
実はフォート・コーチンに行くのはこれで3度目なのですが、初めてフェリーでフォート・コーチンに行った時の感動が忘れられないのです。
その時の私はたいした予備知識もなくフェリーから降り、前を行く人についてなんとなく歩いて行ったら、いきなり目の前に巨大なチャイニーズ・フィッシングネットがいくつも並ぶ風景が広がったのでした。しかし二度目の時はフェリーを降り損ね、次のマッタンチェリーというところまで行ってしまい、そこからオートリキシャでフォート・コーチンまで引き返すという失態を演じてしまったのでした。
しかもフォート・コーチンのフェリー乗り場が移動したのか、それともフェリーの航路が変わってしまったのか、とにかくエルナクラム側からのフェリーは、初めて降り立った桟橋には来なくなっていたのです。
それがあーた、このヴァイピーン島からのフェリーなら、あの思い出の桟橋に行くはずなのです。これが興奮せずにいられますかってんでい!
フェリーはフォート・コーチンとの間を頻繁に行き来してはいるのですが、いかんせん小さな船ゆえ一度にあまり車を乗せられません。何隻かフェリーをやり過ごし、結局30分ほど待たされようやく乗ることができました。タクシーは乗客を乗せたままフェリーに乗り込み、そしてそのままの状態で海を渡って行きます。いえ、このタクシーだけではなく、オートリキシャもそうですしバイクのあんちゃんもバイクにまたがったままなのです。日本では考えられないことですが、まあ大した距離でもないし、それにこの方が楽ちんではあります。
なお、フェリー賃としてタクシー代とは別にドライバーから50ルピー要求されました。
チケットはドライバーが持ったままだったのでよくわからなかったのですが、もしかしたら往復分の料金なのかもしれません。タクシーに乗ったままの航海はものの5分で終わり、こうしてタクシーとその乗客は無事フォート・コーチンに上陸することができたのでありました。
ちなみにこの写真はいち早く岸壁に飛び移った私が素早く激写した、なんてことはなく、別日に撮ったものです。
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