デリーの郊外には大きなショッピングモールがいくつかあります。
その中から今回は「アンサール・プラザ」というシャレたお店をご紹介致しましょう。
アンサール・プラザはデリーの南に位置しておりまして、4階建ての建物の中はエアコンが効いて涼しく、マクドナルドなど日本でもおなじみのファーストフード店や高級衣料品店、大規模CDショップなどが入っています。
そんなショッピングモールを闊歩するのは、こぎれいな格好をした若者や本格的にきれいな格好をした富裕層のインド人たちです。
まあ実際はさほど服装や髪型に力を入れなくとも入店はできますが、私はきたないTシャツに無精ひげを生やして出かけてしまいましたので、完全にその場の雰囲気から浮いてしまい、ちょっと恥ずかしかったです。
こういったショッピングモールのいいところは、やはり「涼しい!」ということです。
やはりインドで「涼」というのは贅沢なことです。
あの外の暑さから一歩中に入ればそれは天国のような快適さです。
こんな贅沢なことはありません。
さらに嬉しいことは「トイレがある!」ということです。
まあ昔からのバザールなどにも公衆トイレがあることはあるのですが、やはり少し・・・というかかなり汚かったりします。(あっ、全部が全部とは言いませんが・・・その一部・・・おおよそ・・・ほとんど・・・です)
私も先日のインド2週間の旅で、お腹の調子が悪い日が一度だけありまして、そのときたまたまアンサール・プラザにいたため、それほどばっちいトイレに入らずにすみました。
とはいえ、インドではケツを水で洗いますので、その比較的きれいなトイレの個室の床も水でびしゃびしゃです。
ですからインドでトイレに入るときは、ズボンのすそをまくり上げ、つま先立ちでそろりそろりと入って行くというのが基本姿勢なのです。
その際、手ぬぐいでほっかむりするくらいのユーモアを繰り出す余裕があれば、もうあなたはインドの達人と言えるでしょう。
それからトイレで困るのは荷物置き場です。
日本の公衆トイレですと、ドアのところに荷物を掛けるフックがあったり、便器の後方に荷物棚があったりしますが、インドではそんなトイレにお目にかかったことはありません。
かといって水でびちゃびちゃの床に荷物を置くだけの勇気も悟りも持ち合わせていませんので、荷物を持ったまま用を足すことになります。
そんなときに便利なのはやはりリュックサックです。
リュックは背負ってしまえば両手が使えますので、用便後にケツを洗うのも簡単です。
ただしリュックも洋式便器の場合には背負えません。
背負ってしまいますと、リュックが便器のフタにあたって汚いですし、また深く座ろうとするとかなりの前傾姿勢となり苦しいです。
私はいつもリュックを持ち歩いていますので、用便のときにはそいつを体の前に回して抱え、わが子をいとおしむ母親のポーズになって用を足します。
アンサール・プラザでもそうしました。
あっ、アンサール・プラザの話をしてたんですよね。
なんでトイレの話になったんだろう???
私はオシャレなポイントとしてアンサール・プラザの話をしていただけなのに・・・
そんなオシャレなショッピングモールのもうひとつのいいところは、比較的自由に商品を見て回れることです。
インドの商店はたいていが小さい店で、所狭しと商品が並べられたり積まれたり、はたまたぶら下げられたりしていて、もう何がなんだかわかりません。
そしてそんな消費者のナビゲーター役を、その店の店主や従業員が行うのですが、特に欲しい商品が決まっておらず、ただなんとなく見ているだけの人にとっては、そのナビゲートがすごくわずらわしいものとなります。
そこへいくと大規模店舗はわりと自由に商品を見ることができます。
特にこのアンサール・プラザに入っている大規模CDショップは、商品選びには持って来いの店です。
映画音楽やインディアンポップス、民俗音楽などのCDを始めとして、DVDやVCDもたくさん並べられていて、それらを手にとって存分に選べます。
みなさんもインドに行ってCDやDVDを買われるのであれば、こういった大手CDショップが買いやすいと思います。
さてさて、このアンサール・プラザには他にも輸入食品の店が入っていたり、書店やファンシーショップが入っていたりと、涼を取りながらの時間つぶしにはいいところです。(それほど広くはないので、食事をしなければせいぜい2時間くらいしか時間をつぶせませんが)
私もあっちへうろうろこっちへふらふらと歩き回り、挙句の果てには商業エリアではない場所へも入り込み、とても不審がられたりもしましたが、あるお店の前でふと足が止まりました。
そこには1台のプリクラの機械が置いてありました。
そしてお店のウィンドウには各種プリクラの撮影パターン見本とともに、もっと大きな写真が飾ってありました。私はその写真が目に入って思わず足を止めてしまったのです。
そこに飾ってあったのは豪華スターが競演した大ヒット映画「カビ・クシ・カビ・ガン(時に喜び時に悲しみ)」の写真でした。
私もその映画が大好きなのです。
もしかしたら映画のブロマイドでも売ってるんだろうか?
売ってるんだったらぜひとも欲しいと思った私は、なおもしげしげとその写真を見つめました。
その写真は競演スター(映画の中では家族の設定)が二列に並んで写っているというものでした。
前列は女優勢です。中央には母親役のジャイヤ・バッチャンがいます。
そしてその両脇には嫁役のカージョルとカリーナ・カプールがいます。
後列は男優勢で、中央にはこの映画の厳格な父親役の国民的大スター、アミターブ・バッチャンがいます。さすがにすごい存在感です。
そしてその右手にはやはりインドを代表する大スターのシャールク・カーンが写っています。
かたや左手には、その長い手足を存分に生かした迫力あるダンスで女性を魅了するリティック・ロンシャンが写っていま・・・いま・・・いま・・・
いましぇーん! リティック、いましぇーん!
本来リティックがいるべき場所には、なんと見知らぬインド人が写っているではありませんか。
な、なんだ、このインド人は!
私の大好きなカビクシファミリーに成りすましやがって!
私だって昔欽ドン賞をもらったことはあるけど、それだけじゃ欽ちゃんファミリーには入れないんだぞ! ましてカビクシをや!
呆然と写真を見つめる私に、うまいタイミングで店員のあんちゃんが声をかけて来ました。
「どう? カビクシの写真、撮らない?」
どうやらその写真は合成のものらしいのです。(そりゃそうだ)
その店はプリクラを置いているだけではなく、その場で顔写真を撮り、その写真でこういった合成写真を作ったり、顔写真入りのTシャツを作ったりする店だったわけですね、つまりは。
それならぜひ私もカビクシファミリーに成りすましたいじゃないですか。
日本のカビクシファンのためにも!
日本のカビクシファンからは「やめろ!」の大合唱が聞こえて来そうな気も致しましたが、そこはせっかくのお誘いでしたので撮らせて頂きました。
そして店員のあんちゃんの「10分で出来上がるから、その頃また来てよ」の言葉をついつい真に受けてしまい、それでも少し多めに時間をつぶして30分後に戻った私は、その場でさらに30分待たされました。
でもそれはそのインド人が悪いんではないのです。
オシャレなショッピングモールだったので、ついついインド人の言葉を信じてしまった私が悪いんです。
くどいようですが、みなさんもよぉーく覚えておいて下さい。
「インドの5分は日本の30分!インドの10分は日本の1時間!」
ってことを・・・
ちなみに、これが私のカビクシファミリー成りすまし写真であります。他の人よりちょっと丸顔で彫が浅くその分額が広いのが私です。
あっ、ちょっと、そんなに怒らないで下さい!
私も無精ひげのままではまずいとは思ったのです!
えっ? そんな問題じゃない・・・って?
すんましぇ~ん!