さて、現地からのメルマガであれこれなんの脈絡もなくインドの話題をお伝えして参りましたが、とにかくインドは着実に変わりつつあり、またその一方では相変わらずという、まさしく混沌の国なのであります。
そんなインドで今回2週間の単独行動をするにあたり、私がまずしたことはといいますと、携帯電話を買うことでした。
携帯電話はインドでもすでに一般的な道具になっておりまして、特に特権的なものではありません。
それなら私も欲しいじゃないか、日本でも1万円も出せばまあまあのものが買えるのだから、何事にも物価の安いインドでは携帯電話も安いだろう。
なにしろタクシードライバーのバルジ(名前です)だって持ってるんだから。
ん? いくらだ? 500ルピーくらいか? ん?
「5000ルピーです」
がびょーん! ご、ごせんるぴい?
私が買った携帯電話は5000ルピー(約13,000円)もしました。
たしかに最新機種で小さくて薄くて軽いのですが、インドで1万円以上もするとは思いませんでした。
でもこれで私も華麗にインドでのケータイ社交界デビューです。
おや? 電話屋のオヤジが何か言ってますね。
「SIMカードを買わなきゃ使えないよ、それ」
オヤジが言うには、インドの携帯電話は本体だけでは使えなくて、SIM(シム)と呼ばれる小さなプラスチックのICカードを入れないと使えないらしいです。
仕方ないなあ・・・じゃあそのシムってのもちょうだいよ、いくら?
「299ルピー」
えっえー! そんなちっちぇーのがそんなすんの? しむぞ、こりゃ・・・
とにかく通話ができなきゃ意味がありません。買うしかないでしょう。
オヤジは携帯電話のバッテリーを外し、本体の所定の位置にSIMを差し込みました。
さあこれで私も華麗にインドでのケータイ社交界デビューです。
おや? オヤジはまだ何か言っていますよ・・・いやな予感・・・
「電話料金払わなきゃ使えないよ、それ」
実はインドの携帯電話はプリペイド式でありまして、初めに料金を払わなければならないのです。
とにかく通話ができなきゃ意味がありません。払うしかないでしょう。
でもいったいいくら払えばいいのでしょうか?
「いろいろあるけどさ、3000ルピー分も買っちゃえば? 使用期限も1年間になるしさ」
どお~! さ、さんぜんるぴい?
冗談じゃありません。私はインドに2週間しかいないのです。
日本にいるときだって1,400円分の無料通話枠を超えないのです。
インドでそんなに使うわけないじゃないですか!
私は下から2番目に安い150ルピー分の通話ができるものを選びました。
使用期限は1ヶ月ですが、帰国前に使い切ってしまえばいいのですから。
じゃあさ、その150ルピーのにするよ、150ルピーのにね。
「OK、324ルピーです」
すみませぇ~ん! すみませぇ~ん、せんせい、質問がありまぁーす!
その値段って観光客用のぼったくりのものなんですか?
じゃあ私はとりあえず「高い!70ルピーだ!」って言い返せばいいんですか?
私の質問に対しての先生の答えはこういうものでした。
通話料金の他に、プロセッシング料(情報処理料金?)と8%の税金がかかり、つまりこの場合は通話料150ルピーにプロセッシング料150ルピー、それに税金の24ルピーがかかるというのです。
ふ~ん・・・それがルールなら仕方ありません。値切るわけにもいかないでしょう。
結局私がその店で支払った金額は5623ルピー、日本円にして1万4千円もの大金になってしまいました。
あ~あ、これだけ払って150ルピー分の通話しかできないのか・・・
大事に使わなきゃ・・・
こうして私もようやくインドでのケータイ社交界デビューができました。
ホテルに着くとさっそく日本に電話をしてみました。
実は携帯電話を持つメリットのひとつに国際電話が安いことがあるのです。
日本までかけても1分間16.99ルピー、約43円で済みます。
街の電話屋からかけると、たしか40ルピーはするはずです。(今回はすべて携帯電話からかけたので、現在の料金は分かりません)
私の大枚はたいて買った携帯電話は、ちゃんと日本の電話につながりました。
私は無事に到着したことのほか、この携帯電話の番号を教え、ついでになんだかくだらないことまであれこれと話してしまい、気が付くとすでに貴重な150ルピー分の通話料の半分以上を使ってしまいました。
考えてみたら日本との通話では、150ルピー分の通話料を使い果たすのに10分とかからないのです。いえ、9分もかからないのです。
あららぁー、これじゃ2日ももたないね・・・
まあいいか、使用期限は1ヶ月あるんだから、なくなったらちょこちょこと150ルピーずつ買い足して行けば・・・
翌日私は電話屋へ行き150ルピー分の電話料金を上乗せしたいことを告げました。
すると電話屋のオヤジは・・・
「324ルピーだ」
と言うのです。
なんでもプロセッシング料は通話料とセットになっていて、最低の電話料金である75ルピーから一律で150ルピーだということなのです。
つまり一遍にたくさん支払えば支払うほど割安になるというわけなのです。
私はてっきり使用期限内なら通話料の上乗せができると思っていたので、その説明に目が点になってしまいました。
そ、それじゃあ私は倍以上もの料金で通話していたことになるのか・・・
そのことですっかり頭が混乱した私は昨日の元を取り戻そうと、料金プランの中で一番高い3240ルピーのものを購入してしまいました。
やった! 2700ルピー分も使えるぞ! 使用期限も1年間だ!
(注:このプランのプロセッシング料は300ルピーでした)
このような紆余曲折を経て、私はついにインド携帯電話社交界へとデビューを果たしたのであります。
しかしこの段階で電話のために支払った金額はすでに8863ルピー、邦貨で約2万2千円以上にも達し、その金額はその後冷静を取り戻した私をむなしさの世界へと導いていったのでありました。
【余談】
インド携帯電話社会を支えているのは中古品の再利用です。
日本の若者のように次から次へ新しい機種に変える人もいる一方で、その中古品を買う人、さらにそのまた中古品を買う人と、インドでは携帯電話の持ち主は経済的上位者から下位者へと流れ移り、それはあたかも輪廻転生を繰り返す様にも見えるわけであります。
タクシードライバー「バルジ」の携帯電話もそんな中古品のひとつであり、しかしそんな800ルピーの代物でも「話せる機能はお前の5000ルピーのと同じだ」と、まさに私の心にぐさりっ!と刺さる教訓的なことを言い放っていたのでありました。反省・・・
ちなみに私が携帯電話を買った店の親父も「2週間後の帰国前に持ってくれば、4000ルピーで引き取る」と言っておりました。
それだけ携帯電話の中古品需要は高いのでありましょう。
しかし私は「どうせインド人のことだから、なんだかんだと理由をつけて買い叩くに違いない」と決め付け、次回渡印のために日本に持ち帰りました。
(下に画像があります)
***** これがインドの携帯電話だ *****
(2004年4月時点での最新機種)
メタリックレッドの粋なボディー、そして缶ビールの中にも隠せるサイズ
プリペイドカードの裏をスクラッチして出てきた数字を 自分の携帯からダイヤル400に通知すればチャージ完了
これで準備OK!
あとは話し相手を探すだけ!